お嬢さん君のお名前は?
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目の前にいるこの人が、あの時自分の命を救ってくれた命の恩人だということを知り、私は(まだ正座ができないので出来る限り)姿勢を正した。
「伊作君から色々と話を聞いています。
私をあの炎の中から連れ出し、忍術学園まで運んでくださったそうで…」
「何、偶々だよ」
雑渡さんは手を軽く横に振った。
「私はあの日、フクロタケ城に伝わる秘伝の巻物を盗みだす為に侵入していた。
巻物を見つけ、帰る途中で偶然、君を見付けたんだ。」
「そうなんですか」
「うん。それに…君を助けたのは単なる気紛れだよ。善意からじゃない」
「いつもなら、見捨てていた」と雑渡さんは言った。
「たとえ、貴方にとっては気紛れでしたことでも、私にとっては命を救って頂いた大きな出来事です。
あの時、もう諦めていた将来の時間を今、私は生きています。
大事な家族と別れずにすみ、そしてここに運んでもらったことで、たくさんの心優しい人たちと出会うことが出来ました。
私は今、とても幸せです。
――――この時間をくれたのは、紛れもなく貴方です。」
「感謝しても、しきれません」と手を前に着き、頭を下げた。
「だからどんな理由であれ、貴方が私の命の恩人であることには変わりないのですよ。雑渡さん」
そう言って、ニコッと笑って見せると雑渡さんが少しだけ目を見開いた。
「気紛れで命を助けられたと解ったら、怒るか、落胆するかと思ったよ。」
「さっきも言いましたが、私にとって助けられた理由なんて重要じゃないんですよ。大事なのは、今、生きているということです。
…それに、世の中は見ず知らずの人間を損得を考えず、見境無くほいほい助けられるようなお人好しの人ばかりではないでしょう?」
私は人との巡り会いにとても恵まれていて、出会う人は皆優しい人たちだったが、世の中そんな人たちばかりではないというのも解っている。
…非常事態の時などは特に、自分や家族の身を最優先するものだ。
「……やっぱり、君は面白いね。助けてみたのは間違いじゃなかった」
「え?どういうことですか?」
「私は炎の中で、君の叫びを聞いた。」
その言葉に、今度は私が目を見開いた。
「ふざけないでよ…」
「何で、戦なんかするのよ…領地が欲しいから?殿様の矜持のため?
ふざけんじゃないわよ!!そんなくだらない事で軍隊率いてドンパチやられちゃ、迷惑なのよ!!」
「戦をやられて一番被害被るのは誰だと思ってるの!?私達下の人間なのよ!?
そんなことも考えずに、自分勝手に戦を始めて…そんなに領地が欲しいなら、偉い人同士で殴り合いでも何でもして決めなさいよ!!
私達はただ毎日を頑張って生きているだけなのよ!?あんた達の争いごとに、私達を巻き込まないでよ!!」
「…戦なんて…大嫌いよ…!!」
「……あれを聞いたんですか?」
「うん」
…誰もいないであろう炎の中で叫んだことを、聞いている人がいたとは…
「いやぁ、なんと申しますか…もう、死ぬ直前でやけくそになってたので…あそこまで自分の中にあった戦に対しての不満を吐き出したのは初めてなんです。
…それを聞かれていたなんて…少し、恥ずかしいですね」
「それを聞いたから、私は君を助けたんだ。興味が湧いたからね」
「そうなんですか…」
「うん。」
はっきりと頷かれてどんな反応をしていいかわからなかったので、「あはは…」と少し苦笑気味に笑うと「ねぇ」と呼びかけられた。
「君は、戦が嫌い?」
「大っっっっっっっっっ嫌いですね」
雑渡さんの質問に即答する。
「戦が、何かもたらしてくれますか?」
ジ…ッと雑渡さんは私を見詰めている。
私も、雑渡さんを見据えたまま続ける。
「戦で得をするのなんて、ほんの一握りの人だけ…私達庶民からはむしろ、奪ってばかり…
家を焼いて、食糧や家財道具を奪い、人を殺す…ホント、理不尽で迷惑…
私達が、何かをしたわけでもないのに…」
ギュッと両手を握りしめる。
「嫌い…大嫌いよ。戦なんて…
家族と…大切な人たちとただ平穏に過ごしたいというささやか願いでさえ、踏みにじっていくから…」
はぁ…と息を吐く。
「第一…戦なんて無駄なことしている時間があったら、洪水や干害に備えて畑でも耕して農作物を育てなさいよね…どうせ体力有り余っているんだろうから」
「あはは。言うねぇ」
「だってそうでしょう?殿様同士の勝手で殺し合いなんかしているより、最低限自分達が食べる分のお米や野菜を作った方がよっぽど有益じゃないですか」
「確かにねぇ…」
くっくっ…と雑渡さんが喉を鳴らして笑う。
「まぁ、こうやってぐちぐち不満を言っても戦は無くなりませんが…」
「それが今の世の中だからねぇ…」
「…すみません…」
「ん?」
「なんだか、私の愚痴を聞いて貰ってしまって…」
「いや、いいよ。面白かったから」
ポンポンと軽く頭を撫でられた。
「さて、そろそろ帰るかな」
すっと雑渡さんが立ち上がる。
「もうお帰りになるんですか?」
「うん。もともと今日は君の様子を見に来ただけだから」
「大分話し込んじゃったけどね」と言う雑渡さんの言葉に「本当に」と笑った。
「またそのうち来るよ」
「はい、お待ちしてます。今度はお茶とお菓子も用意しますね」
「ははは。それは嬉しいね」
「雑渡さん」
再び、私は雑渡さんに頭を下げる。
「貴方に命を救って頂いたこと、一生忘れません。この恩は返そうと思っても返しきれるとは思いませんが…何かあれば、私に出来る限りのことをやらせて頂きます。
…忍術学園の人たちを裏切るようなこと以外なら何でも言って下さい」
「別に、返して貰うほど恩を売った覚えは無いけど…まぁ、考えとくよ」
「はい」
「あ、そうだ…」
お嬢さん君のお名前は?
それを聞いて数回瞬きをした。
…そういえばまだ名前を言っていなかった…
「やす菜です。」
「やす菜ちゃんか…いい名前だね」
「ありがとうございます」
「では、やす菜ちゃん。また会おう」
あっという間に雑渡さんは夜の闇に消えていった。
「…不思議」
私、今まで誰にもここまで思いっきり戦の愚痴を言ったことは無かったのに…
あの人にはすでに私のやけくそになって吐き出したことを聞かれているからかな?
(初めて顔を合わせた人に、あそこまで愚痴言っちゃったのは少し恥ずかしいけど…なんだかスッキリしたなぁ)
ふふっと思わず笑みが溢れた。
「今度、愚痴を聞いて貰ったお礼に美味しいお茶菓子をごちそうしよう」
「伊作君から色々と話を聞いています。
私をあの炎の中から連れ出し、忍術学園まで運んでくださったそうで…」
「何、偶々だよ」
雑渡さんは手を軽く横に振った。
「私はあの日、フクロタケ城に伝わる秘伝の巻物を盗みだす為に侵入していた。
巻物を見つけ、帰る途中で偶然、君を見付けたんだ。」
「そうなんですか」
「うん。それに…君を助けたのは単なる気紛れだよ。善意からじゃない」
「いつもなら、見捨てていた」と雑渡さんは言った。
「たとえ、貴方にとっては気紛れでしたことでも、私にとっては命を救って頂いた大きな出来事です。
あの時、もう諦めていた将来の時間を今、私は生きています。
大事な家族と別れずにすみ、そしてここに運んでもらったことで、たくさんの心優しい人たちと出会うことが出来ました。
私は今、とても幸せです。
――――この時間をくれたのは、紛れもなく貴方です。」
「感謝しても、しきれません」と手を前に着き、頭を下げた。
「だからどんな理由であれ、貴方が私の命の恩人であることには変わりないのですよ。雑渡さん」
そう言って、ニコッと笑って見せると雑渡さんが少しだけ目を見開いた。
「気紛れで命を助けられたと解ったら、怒るか、落胆するかと思ったよ。」
「さっきも言いましたが、私にとって助けられた理由なんて重要じゃないんですよ。大事なのは、今、生きているということです。
…それに、世の中は見ず知らずの人間を損得を考えず、見境無くほいほい助けられるようなお人好しの人ばかりではないでしょう?」
私は人との巡り会いにとても恵まれていて、出会う人は皆優しい人たちだったが、世の中そんな人たちばかりではないというのも解っている。
…非常事態の時などは特に、自分や家族の身を最優先するものだ。
「……やっぱり、君は面白いね。助けてみたのは間違いじゃなかった」
「え?どういうことですか?」
「私は炎の中で、君の叫びを聞いた。」
その言葉に、今度は私が目を見開いた。
「ふざけないでよ…」
「何で、戦なんかするのよ…領地が欲しいから?殿様の矜持のため?
ふざけんじゃないわよ!!そんなくだらない事で軍隊率いてドンパチやられちゃ、迷惑なのよ!!」
「戦をやられて一番被害被るのは誰だと思ってるの!?私達下の人間なのよ!?
そんなことも考えずに、自分勝手に戦を始めて…そんなに領地が欲しいなら、偉い人同士で殴り合いでも何でもして決めなさいよ!!
私達はただ毎日を頑張って生きているだけなのよ!?あんた達の争いごとに、私達を巻き込まないでよ!!」
「…戦なんて…大嫌いよ…!!」
「……あれを聞いたんですか?」
「うん」
…誰もいないであろう炎の中で叫んだことを、聞いている人がいたとは…
「いやぁ、なんと申しますか…もう、死ぬ直前でやけくそになってたので…あそこまで自分の中にあった戦に対しての不満を吐き出したのは初めてなんです。
…それを聞かれていたなんて…少し、恥ずかしいですね」
「それを聞いたから、私は君を助けたんだ。興味が湧いたからね」
「そうなんですか…」
「うん。」
はっきりと頷かれてどんな反応をしていいかわからなかったので、「あはは…」と少し苦笑気味に笑うと「ねぇ」と呼びかけられた。
「君は、戦が嫌い?」
「大っっっっっっっっっ嫌いですね」
雑渡さんの質問に即答する。
「戦が、何かもたらしてくれますか?」
ジ…ッと雑渡さんは私を見詰めている。
私も、雑渡さんを見据えたまま続ける。
「戦で得をするのなんて、ほんの一握りの人だけ…私達庶民からはむしろ、奪ってばかり…
家を焼いて、食糧や家財道具を奪い、人を殺す…ホント、理不尽で迷惑…
私達が、何かをしたわけでもないのに…」
ギュッと両手を握りしめる。
「嫌い…大嫌いよ。戦なんて…
家族と…大切な人たちとただ平穏に過ごしたいというささやか願いでさえ、踏みにじっていくから…」
はぁ…と息を吐く。
「第一…戦なんて無駄なことしている時間があったら、洪水や干害に備えて畑でも耕して農作物を育てなさいよね…どうせ体力有り余っているんだろうから」
「あはは。言うねぇ」
「だってそうでしょう?殿様同士の勝手で殺し合いなんかしているより、最低限自分達が食べる分のお米や野菜を作った方がよっぽど有益じゃないですか」
「確かにねぇ…」
くっくっ…と雑渡さんが喉を鳴らして笑う。
「まぁ、こうやってぐちぐち不満を言っても戦は無くなりませんが…」
「それが今の世の中だからねぇ…」
「…すみません…」
「ん?」
「なんだか、私の愚痴を聞いて貰ってしまって…」
「いや、いいよ。面白かったから」
ポンポンと軽く頭を撫でられた。
「さて、そろそろ帰るかな」
すっと雑渡さんが立ち上がる。
「もうお帰りになるんですか?」
「うん。もともと今日は君の様子を見に来ただけだから」
「大分話し込んじゃったけどね」と言う雑渡さんの言葉に「本当に」と笑った。
「またそのうち来るよ」
「はい、お待ちしてます。今度はお茶とお菓子も用意しますね」
「ははは。それは嬉しいね」
「雑渡さん」
再び、私は雑渡さんに頭を下げる。
「貴方に命を救って頂いたこと、一生忘れません。この恩は返そうと思っても返しきれるとは思いませんが…何かあれば、私に出来る限りのことをやらせて頂きます。
…忍術学園の人たちを裏切るようなこと以外なら何でも言って下さい」
「別に、返して貰うほど恩を売った覚えは無いけど…まぁ、考えとくよ」
「はい」
「あ、そうだ…」
お嬢さん君のお名前は?
それを聞いて数回瞬きをした。
…そういえばまだ名前を言っていなかった…
「やす菜です。」
「やす菜ちゃんか…いい名前だね」
「ありがとうございます」
「では、やす菜ちゃん。また会おう」
あっという間に雑渡さんは夜の闇に消えていった。
「…不思議」
私、今まで誰にもここまで思いっきり戦の愚痴を言ったことは無かったのに…
あの人にはすでに私のやけくそになって吐き出したことを聞かれているからかな?
(初めて顔を合わせた人に、あそこまで愚痴言っちゃったのは少し恥ずかしいけど…なんだかスッキリしたなぁ)
ふふっと思わず笑みが溢れた。
「今度、愚痴を聞いて貰ったお礼に美味しいお茶菓子をごちそうしよう」
