君の居ない学園生活なんて、もう考えられないもの
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「ゆっくり。そう、ゆっくりでいいから、足を動かしてみて」
医務室から程近い廊下。
そこで、僕とやす菜は二人でいた。
やす菜の足が大分良くなってきたので、リハビリをしているのだ。
互いに向き合い、僕の掌に重ねるように、やす菜が手を乗せていた。
僕を支えに、やす菜がゆっくりと足を前に出す。
しばらく歩いていなかったため、少々ふらついているが、やす菜は自分の足で廊下を歩く。
右足、左足、と交互に足を出す。
目標の曲り角に着いたところで、お疲れ様。と笑い掛けた。
「…歩くことが難しく感じるなんて、思ってもみなかったわ…」
ふぅ…とやす菜が息を吐く。
「そうだね。普段、僕達は当たり前のように歩いているから、歩くことが結構大変だなんて気が付かないよね。じゃ、医務室まで戻ろう。」
そしたら、ちょっと、休憩しようか。と僕が言うと、やす菜は笑って頷いた。
「やす菜は、足が治ったらまず何をしたい?」
医務室に戻り、お茶を入れながら僕は尋ねた。
「そうだなぁ…とりあえず、たくさん歩きたい。」
「今まで歩けなかった分まで。」と笑って言うやす菜に、僕も「そっか。」と笑った。
「あとは…『風流庵』のおばさん達に、挨拶に行きたい。…きり丸が、私は生きてるって言っておいてくれたみたいだけど、やっぱり自分で『私は元気です』って伝えたい」
「僕もそれがいいと思う。やす菜本人が元気な姿を見せた方が、お店の人達も安心すると思うよ」
「うん。」
お茶の入った湯呑みを、やす菜に渡す。
ちなみに湯呑みには“##NAME2##”と名前が入っている。
保健委員全員でプレゼントした時、やす菜はとても喜んでくれた。
「ありがとう」
「熱いよ」
ふぅ、ふぅ、と息を吹き掛け、お茶を少し冷まして飲む。
「あとは…仕事を探さなきゃ…」
ポツリ、と、やす菜が呟く。
「…内職だけじゃ、生活費やきり丸の学費を稼げないもの…いつまでも、きり丸の負担になりたくないし…土井先生にも、迷惑掛けちゃう…」
やす菜は少し俯いた。
やす菜ときり丸は姉弟でアルバイトをしながら生活してきたが、今やす菜は怪我をして働けないため、きり丸はアルバイトの量を増やしたらしい。
「忍術学園でお世話になった分の薬代や食事代も払いたいし」
「それは気にしなくていいと思うよ?」
「ううん。払うわ。だって、薬って高価じゃない。
…街で、いい仕事が見つかるといいけど…」
最後の言葉を聞いて、僕は一瞬動きを止めた。
…やす菜は忍術学園の生徒の親族というだけで、やす菜自身がこの学園の生徒というわけではない。
だから、怪我が治ったら忍術学園を出ていく。…それは、ちょっと考えれば、わかるはずなのに…
(なんだろ…なんだかすごく…)
「でも、寂しいな…」
僕の今思った言葉を、やす菜が口に出した。
「忍術学園の人達は皆優しくて、楽しかったから…街に降りたらもう、今みたいに会えなくなると思うと、寂しい…」
手元の、名前入りの湯呑みを見つめながら、やす菜はそう言った。
「なら、ここで働けばいいじゃないか」
「え?」
考える前に、言葉にしていた。
「学園長先生にお願いして、ここで働かせてもらおうよ。」
うん。そうだ、それがいい。
「私も、それができれば嬉しいけど…でも…大丈夫、かな?」
「大丈夫。きっと雇ってくれるよ。僕も一緒に頼んであげるから。」
「…いいの?伊作君」
「いいんだよ。だって…」
君の居ない学園生活なんて、もう考えられないもの
(君が居ることが、)
(もう僕にとっては当り前なんだ)
医務室から程近い廊下。
そこで、僕とやす菜は二人でいた。
やす菜の足が大分良くなってきたので、リハビリをしているのだ。
互いに向き合い、僕の掌に重ねるように、やす菜が手を乗せていた。
僕を支えに、やす菜がゆっくりと足を前に出す。
しばらく歩いていなかったため、少々ふらついているが、やす菜は自分の足で廊下を歩く。
右足、左足、と交互に足を出す。
目標の曲り角に着いたところで、お疲れ様。と笑い掛けた。
「…歩くことが難しく感じるなんて、思ってもみなかったわ…」
ふぅ…とやす菜が息を吐く。
「そうだね。普段、僕達は当たり前のように歩いているから、歩くことが結構大変だなんて気が付かないよね。じゃ、医務室まで戻ろう。」
そしたら、ちょっと、休憩しようか。と僕が言うと、やす菜は笑って頷いた。
「やす菜は、足が治ったらまず何をしたい?」
医務室に戻り、お茶を入れながら僕は尋ねた。
「そうだなぁ…とりあえず、たくさん歩きたい。」
「今まで歩けなかった分まで。」と笑って言うやす菜に、僕も「そっか。」と笑った。
「あとは…『風流庵』のおばさん達に、挨拶に行きたい。…きり丸が、私は生きてるって言っておいてくれたみたいだけど、やっぱり自分で『私は元気です』って伝えたい」
「僕もそれがいいと思う。やす菜本人が元気な姿を見せた方が、お店の人達も安心すると思うよ」
「うん。」
お茶の入った湯呑みを、やす菜に渡す。
ちなみに湯呑みには“##NAME2##”と名前が入っている。
保健委員全員でプレゼントした時、やす菜はとても喜んでくれた。
「ありがとう」
「熱いよ」
ふぅ、ふぅ、と息を吹き掛け、お茶を少し冷まして飲む。
「あとは…仕事を探さなきゃ…」
ポツリ、と、やす菜が呟く。
「…内職だけじゃ、生活費やきり丸の学費を稼げないもの…いつまでも、きり丸の負担になりたくないし…土井先生にも、迷惑掛けちゃう…」
やす菜は少し俯いた。
やす菜ときり丸は姉弟でアルバイトをしながら生活してきたが、今やす菜は怪我をして働けないため、きり丸はアルバイトの量を増やしたらしい。
「忍術学園でお世話になった分の薬代や食事代も払いたいし」
「それは気にしなくていいと思うよ?」
「ううん。払うわ。だって、薬って高価じゃない。
…街で、いい仕事が見つかるといいけど…」
最後の言葉を聞いて、僕は一瞬動きを止めた。
…やす菜は忍術学園の生徒の親族というだけで、やす菜自身がこの学園の生徒というわけではない。
だから、怪我が治ったら忍術学園を出ていく。…それは、ちょっと考えれば、わかるはずなのに…
(なんだろ…なんだかすごく…)
「でも、寂しいな…」
僕の今思った言葉を、やす菜が口に出した。
「忍術学園の人達は皆優しくて、楽しかったから…街に降りたらもう、今みたいに会えなくなると思うと、寂しい…」
手元の、名前入りの湯呑みを見つめながら、やす菜はそう言った。
「なら、ここで働けばいいじゃないか」
「え?」
考える前に、言葉にしていた。
「学園長先生にお願いして、ここで働かせてもらおうよ。」
うん。そうだ、それがいい。
「私も、それができれば嬉しいけど…でも…大丈夫、かな?」
「大丈夫。きっと雇ってくれるよ。僕も一緒に頼んであげるから。」
「…いいの?伊作君」
「いいんだよ。だって…」
君の居ない学園生活なんて、もう考えられないもの
(君が居ることが、)
(もう僕にとっては当り前なんだ)