恋に落ちる音ってやつですか!?
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「あ~、やっと終わった~」
学園にある全ての厠の落とし紙の補充が終わり、医務室に戻る。
それほど大変な仕事ではないのだが、自分(保健委員)の場合落とし穴に落ちるなど、様々な不運に見舞われるため、余計に時間が掛かるのだ。
ちなみに今日は三回落とし穴に落ちた。
「ただいまー」
扉を開け、中に入る。だが入った瞬間、異変に気が付いた。
「…やす菜?」
自分が落とし紙の補充に行くときは確かに居たはずのやす菜がない…蒲団が物抜けの殻だった。
「…やす菜!!」
…やす菜の足は、歩けるところまで回復していない。…一人で出歩けるはずがない!
僕はやす菜を探すために再び医務室を出た。すると…
「いっけいっけどんどーん!」
同級生の小平太が、目の前を通り過ぎた。
その肩には、何か担がれていた。
走り去る小平太を目で追い、それを見ると、丸められた掛け蒲団で、そこから見慣れた栗色の髪が小平太が走る度にサラサラとなびいていた。
「……………………」
しばらくの間考えを整理し、そして…
「…………小平太ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
僕は小平太を追い掛けた。
簀巻きにされたやす菜を担いで走る小平太を、僕は今までにないくらいの速さで追い掛ける。
走れば必ずと言っていいほど転ぶ僕が、ここまで転ばすに走れるなんて、何て言うかもう…奇跡なんじゃないかな!(やけくそ)
だがさすが体育委員長と言うべきか…小平太はどんどん先を行く。
「くそっ…」と思わず舌打ちをした。そんなとき…
「…!!長次!留!」
小平太と僕の進行方向に、長次と留三郎の姿を見付けた。
「小平太を捕まえてくれ!!」
そう叫ぶと、留は「はぁ!?」と怪訝そうな顔をしたが、長次は懐から縄標を取り出すと頭上で振り回して小平太に投げつけた。
「うおっ!?」
縄標は小平太の足に巻き付き、小平太は足を取られて転んだ。
その拍子に担いでいた蒲団は投げ出され、高く宙に舞う。
そして蒲団の中からやす菜が姿を現した。
「ひ、人!?」
留は驚きながらも走り、落ちて来たやす菜の体を受け止めた。
「やす菜!!」
長次と共に留とやす菜の元に駆け寄る。
やす菜の顔を覗き込むと、完全に目を回し、ぐったりしていた。
「やす菜…?大丈夫かい?」
肩に手を置き、そう問い掛けると焦点の合わない目で僕を見た。
「いさ…く…くん…?」
「そうだよ。わかる?」
「…伊作君の、顔が…八個…グルグル回って…る…」
「ちょぉっ…!!やす菜ー!!しっかりしてー!!」
とんでもないことを言うやす菜に、僕はペチペチと軽く頬を叩きながら声を掛ける。
そんな僕らの様子を留と長次は見守っていた。
「…伊作…この娘は…」
「今医務室で療養中の、きり丸のお姉さん。」
控えめに尋ねてくる長次に、やす菜から視線を外さずに答える。
「留には前話しただろ?」
「ああ…」
そんな遣り取りをしていると、元凶である小平太がむくりと起き上がった。
「いてて…」
「…こ~へ~い~た~!!」
一時やす菜を留と長次に任せ、ズカズカと小平太の元に歩み寄る。
「ダメじゃないか!!まだまだ安静が必要な怪我人を連れ回しちゃ!!」
「あはは、悪い悪い」
「まったく反省してないよね、その態度!」
ガミガミと小平太を正座させて叱りつける。すると、「伊作君…」と後ろから声を掛けられた。
振り向くと、やす菜が留に横抱きされてこちらに来ていた。
「あまり、七松君を叱らないであげて…七松君は私が『早く足を治して外に出たい』って言ったのを聞いてくれただけだから」
「…やす菜がそう言うなら…」
まだまだ言いたいことはあったが、僕は小平太を叱りつけるのをやめることにした。
「七松君」
今度は小平太が声を掛けられ、(さすがに長い説教で堪えていたらしい)俯いていた顔を上げ、やす菜を見上げた。
「最初はすごく驚いたけど、久し振りにお日様の下に出られてすっごく嬉しかったわ。ありがとう」
そう言って、やす菜はにっこりと微笑んだ。
「…………」
ゴトリ
「ん?何の音だ?」
「さぁ…」
「やす菜!!」
不思議な音に首を傾げていると、ガバッと小平太が立ち上がり、やす菜に詰め寄った。
それに彼女を抱き抱えていた留が「うおっ!?」と仰け反る。
「お前が望むなら、いつだって私が外に連れてってやるぞ!!」
「怪我が完治するまで僕が許さないからね、それ」
「だからまた裏々山まで一緒に行こうな!!」
「そんなとこまで連れてったのか!?」
所々に入れた僕らのツッコミが聞こえないらしく、小平太はウキウキとやす菜に話しかけている。
「……恋」
「え、何?」
ボソリと長次が呟いた。
しばらくしてハッと気付く。
(まさか、さっきの音って…)
恋に落ちる音ってやつですか!?
***************************
前回の話が長くなりそうだったので分けて書きました。
初めは長次と食満を出す気はなかったのに…おかしいなぁ…ま、いいか^^←
学園にある全ての厠の落とし紙の補充が終わり、医務室に戻る。
それほど大変な仕事ではないのだが、自分(保健委員)の場合落とし穴に落ちるなど、様々な不運に見舞われるため、余計に時間が掛かるのだ。
ちなみに今日は三回落とし穴に落ちた。
「ただいまー」
扉を開け、中に入る。だが入った瞬間、異変に気が付いた。
「…やす菜?」
自分が落とし紙の補充に行くときは確かに居たはずのやす菜がない…蒲団が物抜けの殻だった。
「…やす菜!!」
…やす菜の足は、歩けるところまで回復していない。…一人で出歩けるはずがない!
僕はやす菜を探すために再び医務室を出た。すると…
「いっけいっけどんどーん!」
同級生の小平太が、目の前を通り過ぎた。
その肩には、何か担がれていた。
走り去る小平太を目で追い、それを見ると、丸められた掛け蒲団で、そこから見慣れた栗色の髪が小平太が走る度にサラサラとなびいていた。
「……………………」
しばらくの間考えを整理し、そして…
「…………小平太ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
僕は小平太を追い掛けた。
簀巻きにされたやす菜を担いで走る小平太を、僕は今までにないくらいの速さで追い掛ける。
走れば必ずと言っていいほど転ぶ僕が、ここまで転ばすに走れるなんて、何て言うかもう…奇跡なんじゃないかな!(やけくそ)
だがさすが体育委員長と言うべきか…小平太はどんどん先を行く。
「くそっ…」と思わず舌打ちをした。そんなとき…
「…!!長次!留!」
小平太と僕の進行方向に、長次と留三郎の姿を見付けた。
「小平太を捕まえてくれ!!」
そう叫ぶと、留は「はぁ!?」と怪訝そうな顔をしたが、長次は懐から縄標を取り出すと頭上で振り回して小平太に投げつけた。
「うおっ!?」
縄標は小平太の足に巻き付き、小平太は足を取られて転んだ。
その拍子に担いでいた蒲団は投げ出され、高く宙に舞う。
そして蒲団の中からやす菜が姿を現した。
「ひ、人!?」
留は驚きながらも走り、落ちて来たやす菜の体を受け止めた。
「やす菜!!」
長次と共に留とやす菜の元に駆け寄る。
やす菜の顔を覗き込むと、完全に目を回し、ぐったりしていた。
「やす菜…?大丈夫かい?」
肩に手を置き、そう問い掛けると焦点の合わない目で僕を見た。
「いさ…く…くん…?」
「そうだよ。わかる?」
「…伊作君の、顔が…八個…グルグル回って…る…」
「ちょぉっ…!!やす菜ー!!しっかりしてー!!」
とんでもないことを言うやす菜に、僕はペチペチと軽く頬を叩きながら声を掛ける。
そんな僕らの様子を留と長次は見守っていた。
「…伊作…この娘は…」
「今医務室で療養中の、きり丸のお姉さん。」
控えめに尋ねてくる長次に、やす菜から視線を外さずに答える。
「留には前話しただろ?」
「ああ…」
そんな遣り取りをしていると、元凶である小平太がむくりと起き上がった。
「いてて…」
「…こ~へ~い~た~!!」
一時やす菜を留と長次に任せ、ズカズカと小平太の元に歩み寄る。
「ダメじゃないか!!まだまだ安静が必要な怪我人を連れ回しちゃ!!」
「あはは、悪い悪い」
「まったく反省してないよね、その態度!」
ガミガミと小平太を正座させて叱りつける。すると、「伊作君…」と後ろから声を掛けられた。
振り向くと、やす菜が留に横抱きされてこちらに来ていた。
「あまり、七松君を叱らないであげて…七松君は私が『早く足を治して外に出たい』って言ったのを聞いてくれただけだから」
「…やす菜がそう言うなら…」
まだまだ言いたいことはあったが、僕は小平太を叱りつけるのをやめることにした。
「七松君」
今度は小平太が声を掛けられ、(さすがに長い説教で堪えていたらしい)俯いていた顔を上げ、やす菜を見上げた。
「最初はすごく驚いたけど、久し振りにお日様の下に出られてすっごく嬉しかったわ。ありがとう」
そう言って、やす菜はにっこりと微笑んだ。
「…………」
ゴトリ
「ん?何の音だ?」
「さぁ…」
「やす菜!!」
不思議な音に首を傾げていると、ガバッと小平太が立ち上がり、やす菜に詰め寄った。
それに彼女を抱き抱えていた留が「うおっ!?」と仰け反る。
「お前が望むなら、いつだって私が外に連れてってやるぞ!!」
「怪我が完治するまで僕が許さないからね、それ」
「だからまた裏々山まで一緒に行こうな!!」
「そんなとこまで連れてったのか!?」
所々に入れた僕らのツッコミが聞こえないらしく、小平太はウキウキとやす菜に話しかけている。
「……恋」
「え、何?」
ボソリと長次が呟いた。
しばらくしてハッと気付く。
(まさか、さっきの音って…)
恋に落ちる音ってやつですか!?
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前回の話が長くなりそうだったので分けて書きました。
初めは長次と食満を出す気はなかったのに…おかしいなぁ…ま、いいか^^←