君が手の届かない所に行ってしまうのが、こんなにも恐ろしい
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勢いよく教室を飛び出して医務室に走っていったきり丸の後を、私とは組の生徒達も追いかけた。
そして見たのは、やす菜に抱きついて大声で泣くきり丸と、そのきり丸を優しく抱き締めて頭を撫でるやす菜の姿。
私達に気付いた、保健委員長の善法寺伊作はこっちに来ると「二人っきりにしてあげましょうか」とやす菜ときり丸を示して小さな声で言った。
それに私は頷き、そっと医務室の障子戸を閉めた。
「やす菜さん、無事に目が覚めてよかったね」
「うん。よかったね」
「これで、きり丸も元気になるね」
「うん」
は組の生徒達も、やす菜が目覚めたことを心から喜んでいるようで、目に涙を浮かべている者もいた。
「さ、しばらく二人っきりにしてあげて、私達はまた後でやす菜のお見舞いに来ような」
「「「「「はーい」」」」」
は組のみんなを引き連れ、私は一旦その場を離れることにした。
目を覚ましたやす菜の顔を近くで見たかったが、今は我慢することにした。
(よかったな、きり丸)
医務室にチラッと目を向けて、ちょっとだけ、微笑んだ。
しばらくして医務室の前に再び来ると、きり丸の泣き声が止んでいたので、そっと戸を開けて見ると泣き疲れたのかやす菜の膝に頭を乗せて眠っていた。
手はやす菜の着物をギュッと掴んでおり、やす菜はそんなきり丸を慈しむような、でもどこか悲しげな眼差しで見詰め、優しく頭を撫でていた。
「やす菜」
中に入り、名前を呼ぶとやす菜はこちらを向き、私の姿を認めると、ふわり。と微笑んだ。
「土井先生」
「きり丸、寝ちゃったな」
「…はい」
すう、すう、と規則正しく寝息を立てているきり丸の目は腫れていて少し痛々しかった。
風邪を引かないように、と掛け蒲団を医務室の押し入れの中から引っ張り出して掛けてやり、そのまま私はやす菜の横に腰を降ろした。
「…きり丸がこんなに泣くところを見たのは初めてです」
ぽつり。とやす菜が呟く。
「それだけ、君のことを心配していたんだよ。…ずっと元気が無かった。不安で、仕方なかったんだろう」
「…たくさん、心配かけちゃって…なんだかすごく申し訳ない気持ちです」
「心配していたのはきり丸だけじゃない。一年は組の生徒達も、私も、すごく、心配していた」
やす菜の顔に手を伸ばし、そっと頬に触れた。そして後頭部に手を移動し、そのままやす菜の頭を抱えるようにして肩に押しつけた。
「……無事、意識が戻ってよかった」
心からの、安堵の溜息を吐く。
「…戦に巻き込まれ、逃げ遅れて炎の中に取り残されたと聞いたときは、どうしようかと思った。」
「…はい」
「心臓が止まってしまうかと思った。」
「…ごめんなさい」
炎の中に残されたやす菜を助けに行こうとするきり丸を止めながらも、私自身が炎の中に飛び込んで行きそうだった。
「ただでさえ、一年は組の生徒達にハラハラさせられっぱなしなんだ。あんな思いは二度とごめんだぞ」
「…私だって…もう、あんな目に遭いたくありません」
…やす菜自身、とても恐かったのだろう。体が震えていた。
「やす菜」
「…はい」
「泣いてもいいんだぞ?」
「嫌ですよ」
ハッキリ『嫌』と言われ、ちょっぴりショックを受けたがそんなことは態度に微塵も出さない。
「…絶対、泣きません」
「どうして。泣きたいときは思いっきり泣いた方がいい」
「…今回、たくさんの人に心配を掛けてしまいました…だから、これ以上心配かけたくないんです。それに…きり丸には…私が泣いて、不安な思いをさせたくないんです」
「今更だよ。それに私にしてみれば泣くのを我慢しているのを見る方が心配だ。それとも…私は素直に泣き付けないほど頼りないのかい?」
「まさか!」
やす菜はバッと顔を上げ、私を見る。
「土井先生のことは頼りにしてますよ!!頼り過ぎちゃっているんじゃないかってくらい、ものすごく。」
「そうかな?…私はもっと頼って欲しいけどなぁ」
やす菜の頭の天辺に手を置くと、髪を梳くように撫でた。
「安心して、弱い部分も見せれるくらいに…きり丸と、やす菜は、もう私の家族じゃないか」
その私の言葉に、やす菜は大きく目を見開き、そして俯いた。
「…誰にも、言わないでくださいね?」
「絶対に言わない。約束する」
「…絶対、ぜっっっったい、ですよ?」
「わかってるよ」
「特に…きり丸には、内緒ですよ?」
「うん。二人だけの秘密だ」
再び、やす菜の頭を肩につける。
「だから、安心して泣けばいい」
「っ…」
やす菜が私の服を握る。さっきのきり丸と違い、嗚咽を漏らさぬように声を殺して泣いた。
「………」
泣いているやす菜を落ち着かせるように頭を撫でる。…撫でていない方の手を見ると、微かに震えていた。
君が手の届かない所に行ってしまうのが、こんなにも恐ろしい
その震えを誤魔化すように、やす菜の体を強く抱き締めた。
この感情は親愛?それとも…
そして見たのは、やす菜に抱きついて大声で泣くきり丸と、そのきり丸を優しく抱き締めて頭を撫でるやす菜の姿。
私達に気付いた、保健委員長の善法寺伊作はこっちに来ると「二人っきりにしてあげましょうか」とやす菜ときり丸を示して小さな声で言った。
それに私は頷き、そっと医務室の障子戸を閉めた。
「やす菜さん、無事に目が覚めてよかったね」
「うん。よかったね」
「これで、きり丸も元気になるね」
「うん」
は組の生徒達も、やす菜が目覚めたことを心から喜んでいるようで、目に涙を浮かべている者もいた。
「さ、しばらく二人っきりにしてあげて、私達はまた後でやす菜のお見舞いに来ような」
「「「「「はーい」」」」」
は組のみんなを引き連れ、私は一旦その場を離れることにした。
目を覚ましたやす菜の顔を近くで見たかったが、今は我慢することにした。
(よかったな、きり丸)
医務室にチラッと目を向けて、ちょっとだけ、微笑んだ。
しばらくして医務室の前に再び来ると、きり丸の泣き声が止んでいたので、そっと戸を開けて見ると泣き疲れたのかやす菜の膝に頭を乗せて眠っていた。
手はやす菜の着物をギュッと掴んでおり、やす菜はそんなきり丸を慈しむような、でもどこか悲しげな眼差しで見詰め、優しく頭を撫でていた。
「やす菜」
中に入り、名前を呼ぶとやす菜はこちらを向き、私の姿を認めると、ふわり。と微笑んだ。
「土井先生」
「きり丸、寝ちゃったな」
「…はい」
すう、すう、と規則正しく寝息を立てているきり丸の目は腫れていて少し痛々しかった。
風邪を引かないように、と掛け蒲団を医務室の押し入れの中から引っ張り出して掛けてやり、そのまま私はやす菜の横に腰を降ろした。
「…きり丸がこんなに泣くところを見たのは初めてです」
ぽつり。とやす菜が呟く。
「それだけ、君のことを心配していたんだよ。…ずっと元気が無かった。不安で、仕方なかったんだろう」
「…たくさん、心配かけちゃって…なんだかすごく申し訳ない気持ちです」
「心配していたのはきり丸だけじゃない。一年は組の生徒達も、私も、すごく、心配していた」
やす菜の顔に手を伸ばし、そっと頬に触れた。そして後頭部に手を移動し、そのままやす菜の頭を抱えるようにして肩に押しつけた。
「……無事、意識が戻ってよかった」
心からの、安堵の溜息を吐く。
「…戦に巻き込まれ、逃げ遅れて炎の中に取り残されたと聞いたときは、どうしようかと思った。」
「…はい」
「心臓が止まってしまうかと思った。」
「…ごめんなさい」
炎の中に残されたやす菜を助けに行こうとするきり丸を止めながらも、私自身が炎の中に飛び込んで行きそうだった。
「ただでさえ、一年は組の生徒達にハラハラさせられっぱなしなんだ。あんな思いは二度とごめんだぞ」
「…私だって…もう、あんな目に遭いたくありません」
…やす菜自身、とても恐かったのだろう。体が震えていた。
「やす菜」
「…はい」
「泣いてもいいんだぞ?」
「嫌ですよ」
ハッキリ『嫌』と言われ、ちょっぴりショックを受けたがそんなことは態度に微塵も出さない。
「…絶対、泣きません」
「どうして。泣きたいときは思いっきり泣いた方がいい」
「…今回、たくさんの人に心配を掛けてしまいました…だから、これ以上心配かけたくないんです。それに…きり丸には…私が泣いて、不安な思いをさせたくないんです」
「今更だよ。それに私にしてみれば泣くのを我慢しているのを見る方が心配だ。それとも…私は素直に泣き付けないほど頼りないのかい?」
「まさか!」
やす菜はバッと顔を上げ、私を見る。
「土井先生のことは頼りにしてますよ!!頼り過ぎちゃっているんじゃないかってくらい、ものすごく。」
「そうかな?…私はもっと頼って欲しいけどなぁ」
やす菜の頭の天辺に手を置くと、髪を梳くように撫でた。
「安心して、弱い部分も見せれるくらいに…きり丸と、やす菜は、もう私の家族じゃないか」
その私の言葉に、やす菜は大きく目を見開き、そして俯いた。
「…誰にも、言わないでくださいね?」
「絶対に言わない。約束する」
「…絶対、ぜっっっったい、ですよ?」
「わかってるよ」
「特に…きり丸には、内緒ですよ?」
「うん。二人だけの秘密だ」
再び、やす菜の頭を肩につける。
「だから、安心して泣けばいい」
「っ…」
やす菜が私の服を握る。さっきのきり丸と違い、嗚咽を漏らさぬように声を殺して泣いた。
「………」
泣いているやす菜を落ち着かせるように頭を撫でる。…撫でていない方の手を見ると、微かに震えていた。
君が手の届かない所に行ってしまうのが、こんなにも恐ろしい
その震えを誤魔化すように、やす菜の体を強く抱き締めた。
この感情は親愛?それとも…