きっとその笑顔に惹かれたんだ
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「席案内するから、中に入って」
立ち上がったおれは彼女の案内で店の中に入る。
「おばさん。この人が前に話した…」
「ああ、やす菜ちゃんを助けてくれた男の子ね」
彼女の名前はやす菜というらしい。
「はい!前に話した通り、お礼がしたいのでよろしくお願いします」
「はいよ」
どうやら彼女――やす菜さんはおれのことを店の人に話したようだ。
お店のおばちゃんが「うちの子が世話になったねぇ~」と言った。
「ここの席にどうぞ」
案内された席に座ると「甘いもの平気ですか?」と聞かれたので「平気です」と答えた。
「よかった!じゃ、ちょっと待っててくださいね」
と言ってやす菜さんは店の奥に入っていった。
「ふ~ん…あの人、やす菜さんっていうのか…」
「感じのいい人だね」
「そうだな」
「……お前ら…」
やす菜さんが奥に入ってすぐに三郎・雷蔵・兵助が俺の隣と向かいに座った。
「で、どうするんだ?告白すんのか?」
ニヤニヤしながら言う三郎に「バカ!」と言い返す。
「そういうんじゃねぇから!!」
「お待たせしましたー」
しばらくして彼女がお盆に何か乗せてやって来た。
「あれ?増えてる?」
いつの間にか席に着いていた三人に首を傾げたが三郎が「こいつの連れです」と言うと一つ頷き、「いらっしゃいませ」とにこやかに言った。
「では、こちらをどうぞ」
彼女はおれの前にあんみつと匙を置いた。
「風流庵の特製あんみつです。こちらの黒蜜をかけてお召し上がりください」
あんみつの横に置かれたとろりとした黒蜜をかけ、一匙すくって口に運んだ。
「…美味い!」
「そうでしょう?風流庵のあんみつは日本一ですから」
そう言って、彼女は嬉しそうに笑う。
「あ、お連れの方も何かお食べになりますか?はい。おしながきをどうぞ」
三人は渡されたおしながきをパラパラと捲る。
「う~ん…どれにするか…」
「雷蔵…また迷いぐせが…」
何を頼むか悩む雷蔵に、やす菜さんはクスクスと笑う。
「どれも美味しいですよ。ゆっくり決めてくださいね」
「おれこの豆腐アイス」
「兵助…また豆腐かよ」
「はい、かしこまりました。おばさーん。豆腐アイス一つお願いしまーす!」
彼女がそう声をかけると、茶店のおばちゃんが「はいよ!」と答えた。
「そういえば名前聞いてもいいですか?」
「竹谷八左ヱ門です」
「竹谷君ね。私はやす菜。あの時は危ない所を助けていただきありがとうございました」
ぺこりと頭を下げるやす菜さんに「どういたしまして。」と言って笑い、軽く手を振る。
「で、お礼は今出したあんみつと…これ」
彼女が懐から券の様なものを差し出す。
「これは?」
「ここの茶店のフリーパス券。一年有効で四名までここのメニューが食べ放題になるの」
「え、もらってもいいんですか!?」
「お礼だもの、貰ってくれなかったら張り合い悪いじゃないですか。友達と一緒に食べに来てくださいね」
「はい!ありがとうございます」
今度、委員会のやつらを誘って食べに来よう。
「やす菜さん注文いいですか?」
「はい。どうぞ」
やす菜さんが二人の注文を取る。
雷蔵は結局決まらなかったようで、「おすすめのものお願いします」と言っていた。
「かしこまりました。そう言えば、お二人は顔がそっくりですけど、双子さんですか?」
「いえ、その…」
「双子じゃないですよ。自分達も初めて会ったとき驚きましたから。こんなに自分とそっくりな人間がいるんだなって」
「……おい」
三郎が適当な事を言った。
「私は鉢屋三郎。こっちが不破雷蔵」
「まあ、本当に見分けが付かないくらいそっくり!世の中に自分と同じ顔の人間が三人いるって言いますけど…本当なんですね」
いえ、そいつはただ変装しているだけです。と言いたかったがタイミングが掴めず言えなかった。
「で、こっちが久々知兵助」
「どうも」
「鉢屋君に、不破君に、久々知君ね。よろしく!」
自己紹介をして挨拶を交わしていると表から「お団子くださーい!」と声がかかる。
「はーい!それじゃ、ちょっと失礼します」
やす菜さんがおばちゃんに三郎と雷蔵の注文を伝え、そのまま表の客の対応をしに行くのと入れ替わりにおばちゃんが兵助の頼んだ豆腐アイスを持ってきた。
「はい。お待ちどう」
「いただきます」
兵助が幸せそうに豆腐アイスを食べる。
「お兄ちゃんさっきからやす菜ちゃんばっかり見てるわね」
「え!?あ、そんなことは…」
「あの娘は器量も気立ても良くって、あたしの若い頃にそっくりなのよ!!」
「へ、へぇ~…」
おばちゃんの言葉に半笑いで答える。
「あの子も中々苦労人でね、小さいときに戦で村を焼かれて家と両親を失っているのよ」
「!!」
「小さな弟の手を引いて、一生懸命仕事を探していた姿が、今も目に浮かぶわ。苦しかった筈なのに、弱音を吐かず、いつも頑張っていたのよ」
しみじみといった風に、おばちゃんは話を続ける。
「今だって、弟がどこかの学校に通ってて、その学費を稼ぐためにここの他にも色々な仕事をしているのよ」
「…………」
「あんないい子、めったに見つからないと思うね!お兄ちゃん頑張り!!」
「いや、そういうわけじゃ…」
「ちなみに、ライバルも多いわよ~やす菜ちゃん目当てにここの店くるお客もいるから」
そう言って、オホホホホと笑いながらおばちゃんは店の奥に戻っていった。
「ふ~ん…すごい境遇を生きてきたんだな」
「ああ…」
じいっとやす菜さんを見つめる。
彼女はそんな辛い思いをしてきたことを感じさせないくらい明るく笑っていた。
しばらくして、やす菜さんは振り返り、おれたちの席に戻ってきた。
「すみませんでした。私、そろそろ仕事に戻るのでゆっくりして「やす菜さん」…はい?」
おれはまっすぐやす菜さんを見て、言った。
「おれ、また来ますから。」
その言葉に雷蔵と兵助が顔を見合わせ、三郎がニヤニヤしているのが視界の端っこで見えた。
やす菜さんは初め目を瞬かせていたがすぐに花のように笑って
「はい。お待ちしてます」
と言った。
きっとその笑顔に惹かれたんだ
「八…本気になっちまったな…」
ぽつりと呟かれた三郎の言葉を拾ったものは誰もいなかった。
立ち上がったおれは彼女の案内で店の中に入る。
「おばさん。この人が前に話した…」
「ああ、やす菜ちゃんを助けてくれた男の子ね」
彼女の名前はやす菜というらしい。
「はい!前に話した通り、お礼がしたいのでよろしくお願いします」
「はいよ」
どうやら彼女――やす菜さんはおれのことを店の人に話したようだ。
お店のおばちゃんが「うちの子が世話になったねぇ~」と言った。
「ここの席にどうぞ」
案内された席に座ると「甘いもの平気ですか?」と聞かれたので「平気です」と答えた。
「よかった!じゃ、ちょっと待っててくださいね」
と言ってやす菜さんは店の奥に入っていった。
「ふ~ん…あの人、やす菜さんっていうのか…」
「感じのいい人だね」
「そうだな」
「……お前ら…」
やす菜さんが奥に入ってすぐに三郎・雷蔵・兵助が俺の隣と向かいに座った。
「で、どうするんだ?告白すんのか?」
ニヤニヤしながら言う三郎に「バカ!」と言い返す。
「そういうんじゃねぇから!!」
「お待たせしましたー」
しばらくして彼女がお盆に何か乗せてやって来た。
「あれ?増えてる?」
いつの間にか席に着いていた三人に首を傾げたが三郎が「こいつの連れです」と言うと一つ頷き、「いらっしゃいませ」とにこやかに言った。
「では、こちらをどうぞ」
彼女はおれの前にあんみつと匙を置いた。
「風流庵の特製あんみつです。こちらの黒蜜をかけてお召し上がりください」
あんみつの横に置かれたとろりとした黒蜜をかけ、一匙すくって口に運んだ。
「…美味い!」
「そうでしょう?風流庵のあんみつは日本一ですから」
そう言って、彼女は嬉しそうに笑う。
「あ、お連れの方も何かお食べになりますか?はい。おしながきをどうぞ」
三人は渡されたおしながきをパラパラと捲る。
「う~ん…どれにするか…」
「雷蔵…また迷いぐせが…」
何を頼むか悩む雷蔵に、やす菜さんはクスクスと笑う。
「どれも美味しいですよ。ゆっくり決めてくださいね」
「おれこの豆腐アイス」
「兵助…また豆腐かよ」
「はい、かしこまりました。おばさーん。豆腐アイス一つお願いしまーす!」
彼女がそう声をかけると、茶店のおばちゃんが「はいよ!」と答えた。
「そういえば名前聞いてもいいですか?」
「竹谷八左ヱ門です」
「竹谷君ね。私はやす菜。あの時は危ない所を助けていただきありがとうございました」
ぺこりと頭を下げるやす菜さんに「どういたしまして。」と言って笑い、軽く手を振る。
「で、お礼は今出したあんみつと…これ」
彼女が懐から券の様なものを差し出す。
「これは?」
「ここの茶店のフリーパス券。一年有効で四名までここのメニューが食べ放題になるの」
「え、もらってもいいんですか!?」
「お礼だもの、貰ってくれなかったら張り合い悪いじゃないですか。友達と一緒に食べに来てくださいね」
「はい!ありがとうございます」
今度、委員会のやつらを誘って食べに来よう。
「やす菜さん注文いいですか?」
「はい。どうぞ」
やす菜さんが二人の注文を取る。
雷蔵は結局決まらなかったようで、「おすすめのものお願いします」と言っていた。
「かしこまりました。そう言えば、お二人は顔がそっくりですけど、双子さんですか?」
「いえ、その…」
「双子じゃないですよ。自分達も初めて会ったとき驚きましたから。こんなに自分とそっくりな人間がいるんだなって」
「……おい」
三郎が適当な事を言った。
「私は鉢屋三郎。こっちが不破雷蔵」
「まあ、本当に見分けが付かないくらいそっくり!世の中に自分と同じ顔の人間が三人いるって言いますけど…本当なんですね」
いえ、そいつはただ変装しているだけです。と言いたかったがタイミングが掴めず言えなかった。
「で、こっちが久々知兵助」
「どうも」
「鉢屋君に、不破君に、久々知君ね。よろしく!」
自己紹介をして挨拶を交わしていると表から「お団子くださーい!」と声がかかる。
「はーい!それじゃ、ちょっと失礼します」
やす菜さんがおばちゃんに三郎と雷蔵の注文を伝え、そのまま表の客の対応をしに行くのと入れ替わりにおばちゃんが兵助の頼んだ豆腐アイスを持ってきた。
「はい。お待ちどう」
「いただきます」
兵助が幸せそうに豆腐アイスを食べる。
「お兄ちゃんさっきからやす菜ちゃんばっかり見てるわね」
「え!?あ、そんなことは…」
「あの娘は器量も気立ても良くって、あたしの若い頃にそっくりなのよ!!」
「へ、へぇ~…」
おばちゃんの言葉に半笑いで答える。
「あの子も中々苦労人でね、小さいときに戦で村を焼かれて家と両親を失っているのよ」
「!!」
「小さな弟の手を引いて、一生懸命仕事を探していた姿が、今も目に浮かぶわ。苦しかった筈なのに、弱音を吐かず、いつも頑張っていたのよ」
しみじみといった風に、おばちゃんは話を続ける。
「今だって、弟がどこかの学校に通ってて、その学費を稼ぐためにここの他にも色々な仕事をしているのよ」
「…………」
「あんないい子、めったに見つからないと思うね!お兄ちゃん頑張り!!」
「いや、そういうわけじゃ…」
「ちなみに、ライバルも多いわよ~やす菜ちゃん目当てにここの店くるお客もいるから」
そう言って、オホホホホと笑いながらおばちゃんは店の奥に戻っていった。
「ふ~ん…すごい境遇を生きてきたんだな」
「ああ…」
じいっとやす菜さんを見つめる。
彼女はそんな辛い思いをしてきたことを感じさせないくらい明るく笑っていた。
しばらくして、やす菜さんは振り返り、おれたちの席に戻ってきた。
「すみませんでした。私、そろそろ仕事に戻るのでゆっくりして「やす菜さん」…はい?」
おれはまっすぐやす菜さんを見て、言った。
「おれ、また来ますから。」
その言葉に雷蔵と兵助が顔を見合わせ、三郎がニヤニヤしているのが視界の端っこで見えた。
やす菜さんは初め目を瞬かせていたがすぐに花のように笑って
「はい。お待ちしてます」
と言った。
きっとその笑顔に惹かれたんだ
「八…本気になっちまったな…」
ぽつりと呟かれた三郎の言葉を拾ったものは誰もいなかった。