オベぐだ♀短編
「ごめんね。オベロン。私、君に恋をしてしまったみたい」
まるで、「ごめんね。君の分のおやつも食べちゃった」というような様子で告白された。
マスターのマイルームのベッドに腰かけながら魔導書を捲っていたオベロン・ヴォーティガーンは「はぁ?」と言いながら右隣に座るマスターを見る。
立香は手元のタブレットに目線を落としたまま「あとどの素材が不足していたかな」なんて、先ほどの告白は聞き間違いじゃないかと錯覚してしまいそうな態度だった。
「…俺の聞き間違いかな?今、告白されたような気がしたんだけど」
「うん『君に恋をした』とは言ったね」
「………曲がりなりにも愛の告白だろう?なのに何でもないことの様に君は振舞うんだな。君にとって俺への告白はそんな程度のものだったのかい?」
「まあ、虫に告白するなんて人類最後のマスター様にとっては大したことないんだろうね」と皮肉気にそう吐き捨てると、立香はタブレットから顔を上げてオベロンを見る。
「……私の、この君への恋心は迷惑かなって思ったから…軽く飴を差し出すような気持で、世間話の延長みたいな感じで言ってみたんだけど…きちんと差し出したら、君は受け取ってくれる?」
明星の様な瞳が、夜の帳が落ちる頃の空の様な瞳を射抜く。
真っ直ぐ向けられる瞳も、素直な言葉にも、オベロンには何とも言えない気持ちになる。
「……受け取るかどうかは俺の気分次第かな」
こちらは捻くれた厄介な性質を持った男なので、素直に「嬉しい」なんて言えないのだ。
けれど、そんなオベロンの言葉にも「そっか」と対して気にした様子もなく、立香はオベロンの両手を取って握った。
「好きです。オベロン・ヴォーティガーンさん。妖精國でたくさん助けてもらって、最後は敵として立ちはだかった君だけど…気付けば、そんな君に惹かれていました」
ゆっくりと、彼女の唇から紡がれる愛の告白を、オベロンは静かに聴いていた。
立香は、オベロンの両手を包み込んでいた右手を離して、顔の方に差し出し「触ってもいい?」と許しを請う。
オベロンは、返答の代わりに解放された左手で彼女の右手にそっと触れて自分の頬に当てた。それに、立香は嬉しそうに目を細めて、彼の頬を指先で撫でた。
「君は、自分の成り立ちは呪いから生まれたものだというけれど…それでも、君を、私は美しいと思ったの」
「気を悪くしたらごめんね」と言いながら、眉尻を下げて立香は笑う。
「君は、君の輝ける星を探していて、私みたいな小娘なんて眼中にないだろうけど…それでも、どうかこの恋心を持つことは許して欲しい」
そうして「聞いてくれてありがとう」と言って、頬に添えた手を離そうとしたがその上から重ねられていたオベロンの手が、立香の手が離れることを許さなかった。
「…オベロン?」
自分の手を頬に当てたまま、じっと見詰めてくるオベロンに首を傾げる。
すると、オベロンが「立香」と名前を呼び自分の頬に当てていた手に唇を寄せた。
ふ…と自分の手にかかる吐息に、立香はぴくっと肩が跳ねてしまった。
「キスをしてもいいかい?」
そう言われて、立香は驚いた。
この告白はただ自分の片想いの申告のつもりだったのに、オベロンからこんな言葉が返ってくるなんて…と…
「……いいよ」
少し考えて、彼が何を思ったのか知らないが自分にキスをしてくれるならそれは嬉しいと思ってしまった。オベロンが立香に同じ好きを返してくれないことは予想していたので、手にキスの一つでも貰えるならそれはいい思い出になると思ったのだ。
立香からの許しを得て、オベロンはそのまま立香の掌にキスをした。
ちゅ…っとわざと大きく音を立てて吸いつくようにキスをすると、次は手を握りなおして指先に、そして、手の甲に…
その様子を見て、わぁ、なんだかいっぱいキスしてもらったなぁ~と見ていたら今度は手から立香の顔に手が伸びた。
異形の指先で、彼女を傷付けないようにそっと指先でこめかみから耳に髪の毛を掛けるように滑らせる。その感覚がくすぐったくて思わず喉を震わせて笑ってしまったが、すぐにオベロンの顔が近づいてきてギョッとした。
「え、あ…オベロン…!?」
びっくりしている立香をよそに、オベロンは彼女のこめかみ、耳、そして額から瞼へと唇を落としていく。
そして頬にもチュッと吸い付かれていよいよ唇に重なりそうになった時に慌ててオベロンの顔を手で押さえてキスを遮った。
「ちょっと、待って!?」
立香に待ったを掛けられて、オベロンは不機嫌そうに眉を寄せた。
「何?邪魔なんだけど」
自分の顔を抑えた手を取り、再びオベロンは顔を寄せようとしたが立香は体を少し後退させたので唇は重ならなかった。
「どこまでキスするつもりなの!?」
確かにキスしてもいいとは言ったけれど少し大盤振る舞いしすぎではないだろうか?
手にキスしてもらえるだけだと思っていたのに…と「何を言ってるんだ」とオベロンは言った。
「キスする場所も、回数も、俺は言った覚え無いんだけど?」
確かに、「キスしてもいいか」と言われただけでどこにするかは言われていない。
「でも…!」と顔を赤くしながら口を開いた所で「立香」と名前を呼ばれて遮られる。
「君に差し出された恋心を、有難く受け取るよ」
にっこりと、オベロン・ヴォーティガーンはそれはそれは綺麗に笑って見せた。
「だから、君の全部も、俺にくれないか」
そう言って唇を重ねながら、オベロンは立香をベッドへと押し倒した。
まるで、「ごめんね。君の分のおやつも食べちゃった」というような様子で告白された。
マスターのマイルームのベッドに腰かけながら魔導書を捲っていたオベロン・ヴォーティガーンは「はぁ?」と言いながら右隣に座るマスターを見る。
立香は手元のタブレットに目線を落としたまま「あとどの素材が不足していたかな」なんて、先ほどの告白は聞き間違いじゃないかと錯覚してしまいそうな態度だった。
「…俺の聞き間違いかな?今、告白されたような気がしたんだけど」
「うん『君に恋をした』とは言ったね」
「………曲がりなりにも愛の告白だろう?なのに何でもないことの様に君は振舞うんだな。君にとって俺への告白はそんな程度のものだったのかい?」
「まあ、虫に告白するなんて人類最後のマスター様にとっては大したことないんだろうね」と皮肉気にそう吐き捨てると、立香はタブレットから顔を上げてオベロンを見る。
「……私の、この君への恋心は迷惑かなって思ったから…軽く飴を差し出すような気持で、世間話の延長みたいな感じで言ってみたんだけど…きちんと差し出したら、君は受け取ってくれる?」
明星の様な瞳が、夜の帳が落ちる頃の空の様な瞳を射抜く。
真っ直ぐ向けられる瞳も、素直な言葉にも、オベロンには何とも言えない気持ちになる。
「……受け取るかどうかは俺の気分次第かな」
こちらは捻くれた厄介な性質を持った男なので、素直に「嬉しい」なんて言えないのだ。
けれど、そんなオベロンの言葉にも「そっか」と対して気にした様子もなく、立香はオベロンの両手を取って握った。
「好きです。オベロン・ヴォーティガーンさん。妖精國でたくさん助けてもらって、最後は敵として立ちはだかった君だけど…気付けば、そんな君に惹かれていました」
ゆっくりと、彼女の唇から紡がれる愛の告白を、オベロンは静かに聴いていた。
立香は、オベロンの両手を包み込んでいた右手を離して、顔の方に差し出し「触ってもいい?」と許しを請う。
オベロンは、返答の代わりに解放された左手で彼女の右手にそっと触れて自分の頬に当てた。それに、立香は嬉しそうに目を細めて、彼の頬を指先で撫でた。
「君は、自分の成り立ちは呪いから生まれたものだというけれど…それでも、君を、私は美しいと思ったの」
「気を悪くしたらごめんね」と言いながら、眉尻を下げて立香は笑う。
「君は、君の輝ける星を探していて、私みたいな小娘なんて眼中にないだろうけど…それでも、どうかこの恋心を持つことは許して欲しい」
そうして「聞いてくれてありがとう」と言って、頬に添えた手を離そうとしたがその上から重ねられていたオベロンの手が、立香の手が離れることを許さなかった。
「…オベロン?」
自分の手を頬に当てたまま、じっと見詰めてくるオベロンに首を傾げる。
すると、オベロンが「立香」と名前を呼び自分の頬に当てていた手に唇を寄せた。
ふ…と自分の手にかかる吐息に、立香はぴくっと肩が跳ねてしまった。
「キスをしてもいいかい?」
そう言われて、立香は驚いた。
この告白はただ自分の片想いの申告のつもりだったのに、オベロンからこんな言葉が返ってくるなんて…と…
「……いいよ」
少し考えて、彼が何を思ったのか知らないが自分にキスをしてくれるならそれは嬉しいと思ってしまった。オベロンが立香に同じ好きを返してくれないことは予想していたので、手にキスの一つでも貰えるならそれはいい思い出になると思ったのだ。
立香からの許しを得て、オベロンはそのまま立香の掌にキスをした。
ちゅ…っとわざと大きく音を立てて吸いつくようにキスをすると、次は手を握りなおして指先に、そして、手の甲に…
その様子を見て、わぁ、なんだかいっぱいキスしてもらったなぁ~と見ていたら今度は手から立香の顔に手が伸びた。
異形の指先で、彼女を傷付けないようにそっと指先でこめかみから耳に髪の毛を掛けるように滑らせる。その感覚がくすぐったくて思わず喉を震わせて笑ってしまったが、すぐにオベロンの顔が近づいてきてギョッとした。
「え、あ…オベロン…!?」
びっくりしている立香をよそに、オベロンは彼女のこめかみ、耳、そして額から瞼へと唇を落としていく。
そして頬にもチュッと吸い付かれていよいよ唇に重なりそうになった時に慌ててオベロンの顔を手で押さえてキスを遮った。
「ちょっと、待って!?」
立香に待ったを掛けられて、オベロンは不機嫌そうに眉を寄せた。
「何?邪魔なんだけど」
自分の顔を抑えた手を取り、再びオベロンは顔を寄せようとしたが立香は体を少し後退させたので唇は重ならなかった。
「どこまでキスするつもりなの!?」
確かにキスしてもいいとは言ったけれど少し大盤振る舞いしすぎではないだろうか?
手にキスしてもらえるだけだと思っていたのに…と「何を言ってるんだ」とオベロンは言った。
「キスする場所も、回数も、俺は言った覚え無いんだけど?」
確かに、「キスしてもいいか」と言われただけでどこにするかは言われていない。
「でも…!」と顔を赤くしながら口を開いた所で「立香」と名前を呼ばれて遮られる。
「君に差し出された恋心を、有難く受け取るよ」
にっこりと、オベロン・ヴォーティガーンはそれはそれは綺麗に笑って見せた。
「だから、君の全部も、俺にくれないか」
そう言って唇を重ねながら、オベロンは立香をベッドへと押し倒した。