クリスマスにココアとモルトワインを飲むオベぐだ♀
カルデアに来て、何度目かのクリスマスを迎えた。
今年のサンタはマルタさんで、彼女がメインとなってカルデアでクリスマスパーティーを開くことになって……
サンタマルタさんとカルデアキッチンメンバーによるクリスマスパーティーの為の食材集めの為にルーンで不思議空間となった食糧庫でエネミーとなった食材と戦闘を繰り返しながらパーティーのメニューに必要な食材を集めて料理を作っていった。
毎年クリスマスもお祭り騒ぎで賑やかだけれど、今年のクリスマスも色々あったけれどとても楽しい。
パーティーではみんな笑顔で、料理を楽しみ、お酒を楽しみ、会話を楽しんでいる。
戦いはまだまだ続くけれどその中でこうして皆で笑って楽しく過ごせる時間を共有できることはとても喜ばしいことだった。
「オベロン」
そんな、賑やかなパーティー会場で今は人の輪から外れて壁際の休憩スペースにいたオベロンに声を掛けた。
第一再臨の妖精王の姿のオベロンは私の呼ぶ声に顔をこちらに向けて「やあ、マスター」と柔らかく微笑んで答える。
「楽しんでいる?」
「ああ、もちろん!とても賑やかで楽しいね!心が弾んでしまうよ!」
色んな人がいる中での明るく愉快な妖精王らしい答えである。そんな答えを聞きながら、オベロン内心どう思っているかは敢えて突っ込まず、「楽しんでくれてるならよかった」と笑う。
「サンタマルタさんの美味しい料理でお腹いっぱいかもしれないけど、ココアはいかが?」
「ココア?」
「うん。これは私が淹れたものなんだけど…」
両手に持ったマグカップの内、一つを顔の高さまで持ち上げて「よかったら飲まない?」と尋ねる。
「マスターが淹れてくれたココアなんて嬉しいなぁ。勿論頂くとも!」
ちらりとマグカップを見た後すぐにまた笑ってオベロンは、立香が両手に持っていたカップの内一つを受け取り、「いただきます」と言って口を付ける。
「うん!美味しい!」
「そう?オベロンの口に合ったならよかった」
「これはちゃんと純ココアで練って作ったものかい?」
「そうだよ。よくわかったね」
オベロンがココアを飲んでとりあえず『美味しい』の言葉が聞けたことに安心した。
母方の祖父母の家の近所に住んでいた、優しいお姉さんが作り方を教えてくれた特製ココア。
「カルデアに来る前は毎年冬になると作って飲んでたお気に入りのココアなんだ」
純ココアをティースプーン山盛り2杯に、お砂糖は山盛り1杯
あとないしょのバターをちょびっとと、隠し味にお塩をパラリ……
それを小さなお鍋に入れて超弱火で焦がさないように丁寧に練って練って……
そこに小さいマグカップ1杯の牛乳をちょっとずつ入れて混ぜて……
(そして最後にマーマレードをほんの少し…)
これは、私と同じ年頃の妹さんが好きなのだと言っていた、オレンジの香りがするココア。初めて飲んだ時はあまりの美味しさに感動したものだ。
教えてもらってから、自分の冬の定番のお楽しみだったのに…カルデアに来てからは作っていなかった。
(カルデアに来てから季節の移り変わりとかなかったもんなぁ……)
夏に、ハロウィンに、クリスマス…確かに季節のイベントはあったけれど、カルデアに来る前のように学校に行くときの空気の温度や学校に行くまでの道の途中に割いている花や街路樹の色付き……そんな、些細な日常の中で感じていた季節の移り変わりというものはここにはなかった。
学校の部活が終わって、帰り道の空が星が見えるくらい暗くなって……吐く息が真っ白になる頃になると『ああ~美味しいココアが飲みたいな~』と思っていた日々が、とても昔の事の様に感じる。
「……そんな特別なココアを、僕なんかにも振舞って貰えて光栄だな」
マグカップに入ったココアを見ながら、ここに来る前の思い出に浸っていたがオベロンの言葉に現実に引き戻される。
「今年のサンタのマルタさんが、私やカルデアの皆の為に料理を振舞ってくれたから……だから、私も何か振舞いたいと思ったんだ」
そうして思い付いたのがこのココアだった。自分一人で飲んでいたよりもたくさんのココアを作ったから味が変になっていないか不安だったけれど……
「先に飲んでもらったキッチンのみんなにも美味しいって喜んで貰えたんだよ」
マスターになる前の冬の定番だった、大好きなココア。
それを、カルデアに来てから出会った人達に振舞い、美味しいと言って貰えて嬉しかった。
……そして何より……久しぶりに思い出したココアの作り方を、まだ忘れていなかったことにほっとした。
カルデアに来る前の、何気ない日常の中で自分が好きだったもの…それを、まだ自分は取りこぼしてはいなかったのだ……
「じゃあ、私そろそろ戻るね」
他にも、ココアを振舞っていない人がいるから……とその場を後にしようとしたら「マスター」と声を掛けられた。
呼び止められたため、再びオベロンの方を振り向くといつの間にか先程よりも近くにオベロンがいて…思いのほか顔が近くてびっくりした。
「何?オベロン」
「……君は、ヤドリギの下に立つ意味をきちんと理解しているかい?」
「ヤドリギ?」
呼び止めて突然何を言い出すのかと思い、壁に飾られたヤドリギを見る。
休憩スペースは、賑やかな雰囲気があまり得意ではない人も静かに過ごせるようにとスカディが特別な術式を掛けた装飾を施してくれた。このヤドリギもその一つだった。
「もちろん。知ってるよ」
きちんとヤドリギの意味を教えてもらった私は、オベロンに胸を張って答える。
「ヤドリギの下で友達と話すともっと仲良くなって、喧嘩もしなくなるんでしょう?」
今年のサンタはマルタさんで、彼女がメインとなってカルデアでクリスマスパーティーを開くことになって……
サンタマルタさんとカルデアキッチンメンバーによるクリスマスパーティーの為の食材集めの為にルーンで不思議空間となった食糧庫でエネミーとなった食材と戦闘を繰り返しながらパーティーのメニューに必要な食材を集めて料理を作っていった。
毎年クリスマスもお祭り騒ぎで賑やかだけれど、今年のクリスマスも色々あったけれどとても楽しい。
パーティーではみんな笑顔で、料理を楽しみ、お酒を楽しみ、会話を楽しんでいる。
戦いはまだまだ続くけれどその中でこうして皆で笑って楽しく過ごせる時間を共有できることはとても喜ばしいことだった。
「オベロン」
そんな、賑やかなパーティー会場で今は人の輪から外れて壁際の休憩スペースにいたオベロンに声を掛けた。
第一再臨の妖精王の姿のオベロンは私の呼ぶ声に顔をこちらに向けて「やあ、マスター」と柔らかく微笑んで答える。
「楽しんでいる?」
「ああ、もちろん!とても賑やかで楽しいね!心が弾んでしまうよ!」
色んな人がいる中での明るく愉快な妖精王らしい答えである。そんな答えを聞きながら、オベロン内心どう思っているかは敢えて突っ込まず、「楽しんでくれてるならよかった」と笑う。
「サンタマルタさんの美味しい料理でお腹いっぱいかもしれないけど、ココアはいかが?」
「ココア?」
「うん。これは私が淹れたものなんだけど…」
両手に持ったマグカップの内、一つを顔の高さまで持ち上げて「よかったら飲まない?」と尋ねる。
「マスターが淹れてくれたココアなんて嬉しいなぁ。勿論頂くとも!」
ちらりとマグカップを見た後すぐにまた笑ってオベロンは、立香が両手に持っていたカップの内一つを受け取り、「いただきます」と言って口を付ける。
「うん!美味しい!」
「そう?オベロンの口に合ったならよかった」
「これはちゃんと純ココアで練って作ったものかい?」
「そうだよ。よくわかったね」
オベロンがココアを飲んでとりあえず『美味しい』の言葉が聞けたことに安心した。
母方の祖父母の家の近所に住んでいた、優しいお姉さんが作り方を教えてくれた特製ココア。
「カルデアに来る前は毎年冬になると作って飲んでたお気に入りのココアなんだ」
純ココアをティースプーン山盛り2杯に、お砂糖は山盛り1杯
あとないしょのバターをちょびっとと、隠し味にお塩をパラリ……
それを小さなお鍋に入れて超弱火で焦がさないように丁寧に練って練って……
そこに小さいマグカップ1杯の牛乳をちょっとずつ入れて混ぜて……
(そして最後にマーマレードをほんの少し…)
これは、私と同じ年頃の妹さんが好きなのだと言っていた、オレンジの香りがするココア。初めて飲んだ時はあまりの美味しさに感動したものだ。
教えてもらってから、自分の冬の定番のお楽しみだったのに…カルデアに来てからは作っていなかった。
(カルデアに来てから季節の移り変わりとかなかったもんなぁ……)
夏に、ハロウィンに、クリスマス…確かに季節のイベントはあったけれど、カルデアに来る前のように学校に行くときの空気の温度や学校に行くまでの道の途中に割いている花や街路樹の色付き……そんな、些細な日常の中で感じていた季節の移り変わりというものはここにはなかった。
学校の部活が終わって、帰り道の空が星が見えるくらい暗くなって……吐く息が真っ白になる頃になると『ああ~美味しいココアが飲みたいな~』と思っていた日々が、とても昔の事の様に感じる。
「……そんな特別なココアを、僕なんかにも振舞って貰えて光栄だな」
マグカップに入ったココアを見ながら、ここに来る前の思い出に浸っていたがオベロンの言葉に現実に引き戻される。
「今年のサンタのマルタさんが、私やカルデアの皆の為に料理を振舞ってくれたから……だから、私も何か振舞いたいと思ったんだ」
そうして思い付いたのがこのココアだった。自分一人で飲んでいたよりもたくさんのココアを作ったから味が変になっていないか不安だったけれど……
「先に飲んでもらったキッチンのみんなにも美味しいって喜んで貰えたんだよ」
マスターになる前の冬の定番だった、大好きなココア。
それを、カルデアに来てから出会った人達に振舞い、美味しいと言って貰えて嬉しかった。
……そして何より……久しぶりに思い出したココアの作り方を、まだ忘れていなかったことにほっとした。
カルデアに来る前の、何気ない日常の中で自分が好きだったもの…それを、まだ自分は取りこぼしてはいなかったのだ……
「じゃあ、私そろそろ戻るね」
他にも、ココアを振舞っていない人がいるから……とその場を後にしようとしたら「マスター」と声を掛けられた。
呼び止められたため、再びオベロンの方を振り向くといつの間にか先程よりも近くにオベロンがいて…思いのほか顔が近くてびっくりした。
「何?オベロン」
「……君は、ヤドリギの下に立つ意味をきちんと理解しているかい?」
「ヤドリギ?」
呼び止めて突然何を言い出すのかと思い、壁に飾られたヤドリギを見る。
休憩スペースは、賑やかな雰囲気があまり得意ではない人も静かに過ごせるようにとスカディが特別な術式を掛けた装飾を施してくれた。このヤドリギもその一つだった。
「もちろん。知ってるよ」
きちんとヤドリギの意味を教えてもらった私は、オベロンに胸を張って答える。
「ヤドリギの下で友達と話すともっと仲良くなって、喧嘩もしなくなるんでしょう?」