オベぐだ子ワンライ
流れ星のような女の子だった。
燃えるような夕焼け色の髪に、煌めく明星の瞳のきみ。
世界を救う、自分達の歴史を取り戻すというとても大きな願いを背負って命を燃やして駆けた、人類最後のマスター。すべてが終わった今、彼女は俺の腕の中でゆっくりと永い眠りに着こうとしていた。
「オベロン……」
囁くような声で、俺を呼ぶ。
「なんだい?マスター」
呼び掛けに対し、俺は彼女と目線を合わせる。
未だに光を失わない彼女の瞳には、一匹の虫の姿が映ってる。そんな、虫なんかを見て何が嬉しいのか微笑んで「あのね……」と唇を動かした。
「わたし、君に、伝えたいことがあって……」
最期の最後に何を言いたいのか、なんとなく予想が付く。
俺なんかに気を遣って、ずっと言葉に出しはしなかったけれど……きみの瞳は雄弁で、俺の瞳はそういうのを嫌でも読み取ってしまうから……
けれど、死ぬ前に愛の告白だなんてちょっとありきたりで定番すぎるお涙頂戴シーンじゃないだろうか?
どうせ、この場にいるのは俺ときみだけなんだけど。
そんなことを考えながら、彼女の言葉を待つ。
「……わたし、君のこと……本当に大切な友人だと思ってる。だから、どうか、きみの……きみだけだけの『輝ける星』見つかるといいね」
しかし彼女の口から出てきたのは率直な愛の告白などではなかった
「なんだよ、それ」
俺は思わずハッと鼻で嗤ってしまった。
「最期の言葉がそれ?何死ぬ間際まで人に気を遣っているのさ。言えよ、こんな時くらい本心をさ
…………俺のこと、好きなくせに」
俺の言葉に立香は目を丸くして驚いた顔をしたが、すぐにまた微笑んだ。……どうやら、愛の告白は無しらしい
「酷い女だよ。きみは」
弱まる鼓動、抜け落ちていく体温。今、彼女の身体は確かに死に向かっている。
「俺の本音は、あの森で最後に聞き出したくせに……きみの本音は最後まで口にしてくれないんだな」
ぎゅうっと、抱き締める腕に力を込めると「ごめんね……」と言いながらもう対して力のない手で俺の背中を微かに叩く。
「今、まで……ありが……とう……」
最期の息と共に、あくまで自分に寄り添ってくれた友人への感謝の言葉だけを言って彼女は瞼を閉じた。
もう、その瞳が開かれることはないのだろう。
こうして、『人類最後のマスター』の幕は下りた。
その幕引きを最期まで見届けた奈落の虫は、舞台から降りて永い眠りに着いた彼女の唇に優しく口付けを落とした。
燃えるような夕焼け色の髪に、煌めく明星の瞳のきみ。
世界を救う、自分達の歴史を取り戻すというとても大きな願いを背負って命を燃やして駆けた、人類最後のマスター。すべてが終わった今、彼女は俺の腕の中でゆっくりと永い眠りに着こうとしていた。
「オベロン……」
囁くような声で、俺を呼ぶ。
「なんだい?マスター」
呼び掛けに対し、俺は彼女と目線を合わせる。
未だに光を失わない彼女の瞳には、一匹の虫の姿が映ってる。そんな、虫なんかを見て何が嬉しいのか微笑んで「あのね……」と唇を動かした。
「わたし、君に、伝えたいことがあって……」
最期の最後に何を言いたいのか、なんとなく予想が付く。
俺なんかに気を遣って、ずっと言葉に出しはしなかったけれど……きみの瞳は雄弁で、俺の瞳はそういうのを嫌でも読み取ってしまうから……
けれど、死ぬ前に愛の告白だなんてちょっとありきたりで定番すぎるお涙頂戴シーンじゃないだろうか?
どうせ、この場にいるのは俺ときみだけなんだけど。
そんなことを考えながら、彼女の言葉を待つ。
「……わたし、君のこと……本当に大切な友人だと思ってる。だから、どうか、きみの……きみだけだけの『輝ける星』見つかるといいね」
しかし彼女の口から出てきたのは率直な愛の告白などではなかった
「なんだよ、それ」
俺は思わずハッと鼻で嗤ってしまった。
「最期の言葉がそれ?何死ぬ間際まで人に気を遣っているのさ。言えよ、こんな時くらい本心をさ
…………俺のこと、好きなくせに」
俺の言葉に立香は目を丸くして驚いた顔をしたが、すぐにまた微笑んだ。……どうやら、愛の告白は無しらしい
「酷い女だよ。きみは」
弱まる鼓動、抜け落ちていく体温。今、彼女の身体は確かに死に向かっている。
「俺の本音は、あの森で最後に聞き出したくせに……きみの本音は最後まで口にしてくれないんだな」
ぎゅうっと、抱き締める腕に力を込めると「ごめんね……」と言いながらもう対して力のない手で俺の背中を微かに叩く。
「今、まで……ありが……とう……」
最期の息と共に、あくまで自分に寄り添ってくれた友人への感謝の言葉だけを言って彼女は瞼を閉じた。
もう、その瞳が開かれることはないのだろう。
こうして、『人類最後のマスター』の幕は下りた。
その幕引きを最期まで見届けた奈落の虫は、舞台から降りて永い眠りに着いた彼女の唇に優しく口付けを落とした。