オベぐだ子ワンライ
きっかけは、お泊まりで「寒くて眠れない」とオベロンが言ったこと。
まだ片手でギリギリ数えられるくらいの歳の冬の日に、立香はオベロンの布団に潜り込み手を繋いで眠ったのだ。
コンコンコンと窓から聞こえるノックが合図。
夕飯を食べ、お風呂に入り、あとは眠るだけという時間になったら窓を叩く。そうしたら、向かい合った窓を開けてヒョイっと部屋を渡りどちらかのベッドに一緒に眠りにつく。
そんなことを、もう10年も続けてた。
今日は立香のベッドで眠る日だったからオベロンが来たら電気を消して、「寒いね」と言いながら布団に一緒に潜り込んだ。
「おやすみ立香」
「おやすみオベロン」
向かい合って手を繋ぎ、足を絡めて瞼を閉じる。
オベロンの手足は立香の手足よりもずっと冷たい。だが、繋いだ手から、足先から、立香の体温がオベロンに少しずつ移っていく……立香は、その感覚が好きだった。
自分の熱が、オベロンを温めてられているということがたまらなく嬉しい。
(でも、そろそろやめなくちゃ)
パパとママとも眠らなくなり、入れ替わる様にオベロンと一緒に眠りにつく様になった。余程のことがない限り、欠かさずオベロンと同じベッドで体温を分け合いながら夜を明かしてきたけれど……もう、自分達は無邪気な子供では無いのだ。
来年の春に、自分達は高校生になる。そうしたら、流石に年頃の男女が1つのベッドで身を寄せながら眠るのはおかしい。
(私とオベロンは、ただの幼馴染だもん)
恋人でも、なんでもない。ただ、幼い頃から成長を共にしてきたとても大事な友人。少しチクリ、と胸が痛んだ気がしたが気付かないフリをする。
オベロンと眠るのは心地よくて安心するし、いざ1人で眠るとなったらきっと寂しいけれど……それでも、いつかはおしまいにしなくてはいけない。
けれど、空気が冷たい冬の間までは……と言い訳をして、立香はもう少しだけと自分と同じくらい温かくなったオベロンの手を握り直して夢の世界へ微睡んだ。