ヨゾラカルデアのオベロン

「マスター、結婚する?」
「しないよ。オベロン」

 挨拶の様に求婚の言葉を口にするオベロンと、これまた挨拶を返すようににこやかに断る立香。
 この光景は、もはやこのカルデアでは日常茶飯事の後継となっていた。

「僕がこのカルデアに来てから、もう一年だし…そろそろ受け入れてくれてもいいと思うのだけど…」

 第二再臨の、冬の王子の出で立ちで愉快で騒がしい妖精王の役柄そのままの様子でオベロンは、本気で「何故この僕を受け入れてくれないんだい?」と本気で思っているような顔で首を傾げた。
 けれども、立香もそんなオベロンの対応には慣れたもので「あはは」と笑いながら。

「いつも言っているけれど、私器用な人間じゃないからさ。汎人類史を取り戻し終わるまで、恋に心を傾ける余裕なんてないんだよ」

 「だからごめんね」と求婚を断るにしては軽い調子で謝罪の言葉を口にする。
 そんな彼女の様子に、オベロンは「今回も振られてしまったなぁ…」と仕方ないような様子で肩を竦めた。

「でも、僕は何度でも求婚するとも」

 令呪の刻まれた右手を掬い上げ、その手の甲に口付ける。

「僕は諦めが悪いんだ。覚悟しておくといい」

 にっこりとそう言って笑いかけるオベロンに、立香は困った様に笑い返すことしかできなかった。
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