ハッピーエンドルート
海に落ちた君を見て、空からお星様が降ってきたのかと思った。
陸の人間たちがパーティーをしていた船の上から、落ちてきた男の子が溺れていたのを助け、それがきっかけで私達は友達になった。
星の光を溶かしたみたいな、ツヤツヤのプラチナブロンドと冬の冴えた空の様な瞳の男の子、オベロン。
人間と人魚で種族は違う私達だけど、毎日の様に浜辺で会ってお話をしていた。その時間が、私はとても楽しみだった。
「オベロン!」
いつも会う浜辺の波打ち際で尾びれは海に入った状態で座って待っていると、オベロンがこちらに歩いてくるのが見えた。
彼の姿を見つけただけで、私はとても嬉しくてこっちこっちー!と大きく手を振ると、オベロンも私に気が付いて少し顔に笑顔を浮かべながら少し速足に来てくれた。
「オベロン!今日も君の話を聞かせて!私の方はね、こんなことがあって…」
陸で生活してるオベロンと、海で生活している私とでは日常生活だけでも違うことが多くて、世間話をしているだけでも新鮮で楽しかった。
そんな風に大好きなオベロンとたくさん会ってお喋りをしていたら、ある日オベロンが酷く不機嫌そうな様子でいつもお喋りをしている浜辺にやって来た。
どうしたのか尋ねたら、あと一年とちょっとでオベロンは社交界に大人の一員として仲間入りするらしい。その時に開かれる舞踏会のパートナーの申し込みが多すぎてうんざりしているというのだ。
「舞踏会かぁ…!」
陸の舞踏会は見たことないけれど、話には聞いたことがある。
大きなお城の中で、皆綺麗な衣装を着て、美味しいものを食べながら美しい音楽の中で踊るのだろう。
「いいなぁ!憧れちゃう!」
舞踏会を想像しながら、楽しそうだな~と思っていたら、オベロンがマジマジと私を見つめて口を開く。
「君の尾びれが、人間の足だったのなら一緒にダンスを踊れたのにな」
その言葉に私は衝撃を受けた。
(私が人間の足だったらオベロンとダンスが踊れるんだ!!)
それができたらどんなに素敵だろう!!
それに、たくさん来るパートナーの申し込みの中から誰か1人を選ばなければいけないというオベロンの悩みも解決できる!!困っている大好きな友達を助けることができるのだ!!
そうして、私は自分の尾びれが人間の足になる方法を探すことにした。
*
「ね!お願い!キルケー!」
パンっと両手を合わせて、私は知り合いの大魔女のキルケーと、偶然キルケーに会いに来ていた医神のアスクレピオスに人間の足になるための協力をお願いをしていた。
しかし、キルケーは渋い顔だ。
「やめておきなよピグレット。たかだか人間の為にその美しい尾びれを足に変えてしまうなんて…メリットが薄すぎやしないかい?」
「……でも……大好きなお友達が困っているし、私が人間の足だったら、ダンスが踊れたのにって言ってくれたの……」
「私、オベロンとダンスを踊りたい…」そう、しょんぼりしながら言えば、キルケーは「うーん…」と唸って眉間に皺を寄せた。
「キルケーはすごい魔女だから、私を人間にすることくらいできるでしょう?」
「そりゃできなくはないけれど……」
「でもなぁ…」と未だにキルケーの反応は芳しくない。そして、ずっと黙っていたアスクレピオスに話を振る。
「アスクレピオス。君からも言ってやってくれよ。人間のお友達の為だけにわざわざ体を作り替える必要は無いって」
キルケーにそう言われ、私達の話をずっと聞いていたアスクレピオスが口を開く。
「……体を作り変える薬は、負担が大きい。そう軽率に処方することはできない」
じ…とアスクレピオスは私の目を見つめる。
「リツカ。どうしても、そのオベロンという者の為に人間の足が欲しいのか?」
「………うん!」
私は大きく頷く。
「ただ、ダンスを踊りたいなんて…キルケーやアスクレピオス達からしたらくだらない理由なのもわかってる。でも…私にとっては、大切なことなの…!」
オベロンも『もしも私に足があった』という仮定の話をしただけで、本気で言っていたのではなかったのかもしれない。
けれど、オベロンが「一緒にダンスを踊れたら」と言ってくれたことが、私はとても嬉しかった。私も、オベロンとダンスを踊りたいと思った。
「だから、お願い…!2人とも力を貸してください…!」
深々と、頭を下げる。すると、アスクレピオスがふーっと息を吐く。
「………わかった。薬を調合して処方してやろう。キルケー。手伝え」
「は!?ちょっと!!」
「お前もよく知ってるだろ。リツカがこうと決めたら絶対に諦めないことを……僕達が断って、他のどこの馬の骨ともわからない輩に妙なものを掴まされたりするよりは、僕達で作った方が安心だ」
薬を作って貰えることになり、私は「やったー!!」と飛び上がるほど喜んだ。
「ただし、対価は身体で払ってもらうぞ。リツカ。材料集めにはお前も参加しろ。その期間中、僕やキルケーの手伝いもすること。いいな?」
「もちろん!!本当にありがとう!!2人とも!!」
こうして、私は人間の足を手に入れるために、薬の材料集めの旅に出ることになった。
タイムリミットが一年ちょっとしかないため、急いで出発しなければならない。
『オベロンへ
人間の足を手に入れるために暫くの間旅に出ます。
ちゃんと1年以内に帰ってくるので待っててね!
リツカ』
「これでよし…っと!」
オベロンと会う時間に、しばらく来られないため私はいつもの浜辺に手紙を残した。
きっと、急に来なくなったらオベロンは心配しちゃうだろうから…。
「……いってきます」
誰もいない浜辺でそう呟いて、私はキルケーとアスクレピオス達が待っている船へと向かった。私が乗れるようにきちんと海からも出入りできる作りの船をトリトンが出してくれたらしい。
そして、私は旅に出た。
………残した手紙が波に攫われてしまうことになるとも知らずに………
陸の人間たちがパーティーをしていた船の上から、落ちてきた男の子が溺れていたのを助け、それがきっかけで私達は友達になった。
星の光を溶かしたみたいな、ツヤツヤのプラチナブロンドと冬の冴えた空の様な瞳の男の子、オベロン。
人間と人魚で種族は違う私達だけど、毎日の様に浜辺で会ってお話をしていた。その時間が、私はとても楽しみだった。
「オベロン!」
いつも会う浜辺の波打ち際で尾びれは海に入った状態で座って待っていると、オベロンがこちらに歩いてくるのが見えた。
彼の姿を見つけただけで、私はとても嬉しくてこっちこっちー!と大きく手を振ると、オベロンも私に気が付いて少し顔に笑顔を浮かべながら少し速足に来てくれた。
「オベロン!今日も君の話を聞かせて!私の方はね、こんなことがあって…」
陸で生活してるオベロンと、海で生活している私とでは日常生活だけでも違うことが多くて、世間話をしているだけでも新鮮で楽しかった。
そんな風に大好きなオベロンとたくさん会ってお喋りをしていたら、ある日オベロンが酷く不機嫌そうな様子でいつもお喋りをしている浜辺にやって来た。
どうしたのか尋ねたら、あと一年とちょっとでオベロンは社交界に大人の一員として仲間入りするらしい。その時に開かれる舞踏会のパートナーの申し込みが多すぎてうんざりしているというのだ。
「舞踏会かぁ…!」
陸の舞踏会は見たことないけれど、話には聞いたことがある。
大きなお城の中で、皆綺麗な衣装を着て、美味しいものを食べながら美しい音楽の中で踊るのだろう。
「いいなぁ!憧れちゃう!」
舞踏会を想像しながら、楽しそうだな~と思っていたら、オベロンがマジマジと私を見つめて口を開く。
「君の尾びれが、人間の足だったのなら一緒にダンスを踊れたのにな」
その言葉に私は衝撃を受けた。
(私が人間の足だったらオベロンとダンスが踊れるんだ!!)
それができたらどんなに素敵だろう!!
それに、たくさん来るパートナーの申し込みの中から誰か1人を選ばなければいけないというオベロンの悩みも解決できる!!困っている大好きな友達を助けることができるのだ!!
そうして、私は自分の尾びれが人間の足になる方法を探すことにした。
*
「ね!お願い!キルケー!」
パンっと両手を合わせて、私は知り合いの大魔女のキルケーと、偶然キルケーに会いに来ていた医神のアスクレピオスに人間の足になるための協力をお願いをしていた。
しかし、キルケーは渋い顔だ。
「やめておきなよピグレット。たかだか人間の為にその美しい尾びれを足に変えてしまうなんて…メリットが薄すぎやしないかい?」
「……でも……大好きなお友達が困っているし、私が人間の足だったら、ダンスが踊れたのにって言ってくれたの……」
「私、オベロンとダンスを踊りたい…」そう、しょんぼりしながら言えば、キルケーは「うーん…」と唸って眉間に皺を寄せた。
「キルケーはすごい魔女だから、私を人間にすることくらいできるでしょう?」
「そりゃできなくはないけれど……」
「でもなぁ…」と未だにキルケーの反応は芳しくない。そして、ずっと黙っていたアスクレピオスに話を振る。
「アスクレピオス。君からも言ってやってくれよ。人間のお友達の為だけにわざわざ体を作り替える必要は無いって」
キルケーにそう言われ、私達の話をずっと聞いていたアスクレピオスが口を開く。
「……体を作り変える薬は、負担が大きい。そう軽率に処方することはできない」
じ…とアスクレピオスは私の目を見つめる。
「リツカ。どうしても、そのオベロンという者の為に人間の足が欲しいのか?」
「………うん!」
私は大きく頷く。
「ただ、ダンスを踊りたいなんて…キルケーやアスクレピオス達からしたらくだらない理由なのもわかってる。でも…私にとっては、大切なことなの…!」
オベロンも『もしも私に足があった』という仮定の話をしただけで、本気で言っていたのではなかったのかもしれない。
けれど、オベロンが「一緒にダンスを踊れたら」と言ってくれたことが、私はとても嬉しかった。私も、オベロンとダンスを踊りたいと思った。
「だから、お願い…!2人とも力を貸してください…!」
深々と、頭を下げる。すると、アスクレピオスがふーっと息を吐く。
「………わかった。薬を調合して処方してやろう。キルケー。手伝え」
「は!?ちょっと!!」
「お前もよく知ってるだろ。リツカがこうと決めたら絶対に諦めないことを……僕達が断って、他のどこの馬の骨ともわからない輩に妙なものを掴まされたりするよりは、僕達で作った方が安心だ」
薬を作って貰えることになり、私は「やったー!!」と飛び上がるほど喜んだ。
「ただし、対価は身体で払ってもらうぞ。リツカ。材料集めにはお前も参加しろ。その期間中、僕やキルケーの手伝いもすること。いいな?」
「もちろん!!本当にありがとう!!2人とも!!」
こうして、私は人間の足を手に入れるために、薬の材料集めの旅に出ることになった。
タイムリミットが一年ちょっとしかないため、急いで出発しなければならない。
『オベロンへ
人間の足を手に入れるために暫くの間旅に出ます。
ちゃんと1年以内に帰ってくるので待っててね!
リツカ』
「これでよし…っと!」
オベロンと会う時間に、しばらく来られないため私はいつもの浜辺に手紙を残した。
きっと、急に来なくなったらオベロンは心配しちゃうだろうから…。
「……いってきます」
誰もいない浜辺でそう呟いて、私はキルケーとアスクレピオス達が待っている船へと向かった。私が乗れるようにきちんと海からも出入りできる作りの船をトリトンが出してくれたらしい。
そして、私は旅に出た。
………残した手紙が波に攫われてしまうことになるとも知らずに………