ハッキング未体験の響は、機体が壁に激突するシーンを想像して肩をすくめた。が、次の瞬間。機体はこれまでのバーチャル商店街ではなく、単純な線と面だけが交錯するばかりの、無機質な空間に滞空していた。

「うわ!?なんだ、ここは？」

「システムの裏側よ。さっきいた空間は、誰にでも分かりやすいように街を構築してあるだけ。ここは人に見せなくていいから、システムがむき出しになってるだけよ」

会話しているうちに機体が猛スピードで滑空し始める。軍曹が操縦しているのだ。

「すげぇ。ファイアウォール、ないやん！」

「ないんじゃないの。防御を抜けるプログラム組んであるから、見えないだけなのよ」

「ありえねぇ！これができたら、マイレージポイントを不正操作して増やせるがな！」

「まだそんなこと言ってるのこのオナニー小僧がッ！」

「軍曹、個人情報のやり取りをしてるゲートの場所、わかりそうか？」

「うん。このプログラム、マジすげぇわ。これなら楽勝。ちょっと、待って、ね、っと！」

「そうそう。けっこうわかってるじゃん軍曹。うん。そう。そのあたりでメディアセンターに接続してるはずよ」

「外部システムと通信してる場所やからな。すぐわかる・・・う、うおッ！」

目の前にブルーに輝く半透明の壁が突然現れた。不正アクセスを防御する、侵入防止プログラムである。

「ファイアウォール！」

「うわぁ・・これヤベぇ」

「解析するわ」

「これが防御壁か・・・」