【1.サイバーダイブシステム・潜入】

深夜１時。照明を落とした自宅の書斎に、パソコンモニター７台の画面の明かりが灯る。

普段は世界の株式市況が表示され、分単位・秒単位の売買を繰り広げている、アイドリアン響の主戦場である。

しかし今夜、画面に映し出されているのは、インターネットの中の世界を視覚的にバーチャル構築して旅をするための【サイバーダイブシステム】の各制御画面だった。



この【サイバーダイブシステム(略称ＣＤＳ)】、本来はコンピュータスキル(コンピュータの知識や技術)が低い子供や老人でも、簡単にインターネットを利用できるように開発されたシステムである。

ロールプレイングゲームのように、ネット世界が【街】として作られており、ユーザーはそこに「ビークル」と呼ばれる自分専用の乗り物に乗って繰り出して、商店街で買い物をしたり、図書館で調べ物をしたりできる。

コンピュータの知識はなくとも、街には分かりやすい看板を掲げた建物があるため、パソコンのゲームのように自由に街を行き来し、目的のサービスを受けることが可能である。

システムには、国家・官公庁・企業・個人の全てが接続されているため、様々なサービスが提供されている。


今夜、３人の男たちがそれぞれ自宅のパソコンの前に座り、協力してこのサイバー空間に侵入し、ある偵察行為を行おうとしていた。