チップを体に埋め込む際、担当看護師はこのように説明した。

「ほら、子供が遊ぶブロックがあるでしょ？ひとつひとつは小さい四角いブロックだけど、組み合わせると自動車になったり飛行機になったり…怪獣になったり。それと同じよ。佐治さんの体の中に、ひとつが千分の一ミリの小さな小さなブロックがいっぱい入った箱を入れておくの。佐治さんが病気になった時はね、その病気を治すための形にブロックが組み合わさって、体の中で悪いところをやっつけてくれるのよ」

佐治は、目に見えない小さな虫が、体の中を走り回るのを想像して寒気がした。腹の中で小さな黒い虫が集まってどんどん大きな塊になり、醜い怪獣の姿になって内臓を食いちぎる。血まみれの怪獣は、ついに腹の皮を食い破ってそのおぞましい姿を現す。


モニターからのチャイム音で、佐治はその嫌な妄想から我に返った。


■尿酸値７％上昇
■食事制限ガイド024を参照
■タブレット74Ａ処方追加
■お疲れ様でした

やれやれ…また薬の追加か…。

うんざりしながらリビングのソファに移動して腰を降ろし、テレビモニターのスイッチを入れた。

コマーシャルが流れていたが、そのまま興味なさげにソファの背もたれに体を預ける。

次のＣＭに切り替わった時、佐治は「おっ」と小さく声を発して目を見開いた。

画面では女優の松下慶子が深くスリットの入ったドレスを身に纏って、フラメンコのようなダンスを踊っていた。脚や背中、そして胸元の肌の露出が多い、かなりセクシーな衣装である。

どうやら湿布薬のコマーシャルのようだ。松下慶子はもう５０歳代の女優だが、佐治の世代にはかつての映画スターでありアイドルでもある。

「う～ん…若い頃は細くて綺麗だったけど、ふっくらした今の慶子ちゃんも、これまたなかなか色っぽいのぉ」

ソファから身を乗り出して松下慶子に見入った佐治は、画面が次のＣＭに変わったあとも、股間のものを弄んでいた。