Gマイレージ①
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【プロローグ】
佐治雄三はしわくちゃの手で採血キットを腕にあてがい、スイッチを押した。
チクリとした痛みは一瞬で治まり、小指の先ほどのメディカルカプセルに血液が充填される。
リビングの一角に設けられたメディアセンターの端末機のポケットにそのカプセルをはめ込み、読み込みボタンをクリックする。
次に、黒い半透明なレンズ状の体内センサーに手首をかざす。ほんの3秒ほどで読み取り完了の青いLEDが点灯した。
昔のように検査の度に病院に通わなくてはならない煩わしさから開放されたのはありがたい。74歳になった今となっては、痛風で痛む足を引きずりながら病院に通うのは耐えられない苦痛だろう。
カラフルなグラフや数字がめまぐるしく映し出されるモニターをぼんやりした目で見つめながら佐治は思いを巡らせた。
会長職から退いてからのこの1年間、自宅に引き篭もりがちになっていた。4年前に妻を亡くし、また子供に恵まれなかった佐治には、訪ねて来る親族も少なく、孤独な日々を送っていた。
ビジネスの最先端を突っ走り、役員となってからも老体に鞭打って全国を飛び回った。引退した後は、もうビジネスのしがらみは断ち切って悠々自適の生活をゆっくり過ごそう、と思っていたのだが…。いざこういう生活が続くと、なにか人生にぽっかりと穴が開いてしまったような居心地の悪さを感じていた。
検査にでも病院に行けば、同年代の人々と交流が持てるだろうか。
しかし…今の時代は病院に行くにも「資格」がいるのだ。重症でない限り、この「メディアセンター」と呼ばれる家庭用端末装置を使っての診断と投薬、そして体内チップに内蔵されたナノマシンによる治療が行われるだけである。
難しいことは佐治にはわからないが、この「ナノマシン」がなんとも気味が悪くて嫌いだった。
佐治雄三はしわくちゃの手で採血キットを腕にあてがい、スイッチを押した。
チクリとした痛みは一瞬で治まり、小指の先ほどのメディカルカプセルに血液が充填される。
リビングの一角に設けられたメディアセンターの端末機のポケットにそのカプセルをはめ込み、読み込みボタンをクリックする。
次に、黒い半透明なレンズ状の体内センサーに手首をかざす。ほんの3秒ほどで読み取り完了の青いLEDが点灯した。
昔のように検査の度に病院に通わなくてはならない煩わしさから開放されたのはありがたい。74歳になった今となっては、痛風で痛む足を引きずりながら病院に通うのは耐えられない苦痛だろう。
カラフルなグラフや数字がめまぐるしく映し出されるモニターをぼんやりした目で見つめながら佐治は思いを巡らせた。
会長職から退いてからのこの1年間、自宅に引き篭もりがちになっていた。4年前に妻を亡くし、また子供に恵まれなかった佐治には、訪ねて来る親族も少なく、孤独な日々を送っていた。
ビジネスの最先端を突っ走り、役員となってからも老体に鞭打って全国を飛び回った。引退した後は、もうビジネスのしがらみは断ち切って悠々自適の生活をゆっくり過ごそう、と思っていたのだが…。いざこういう生活が続くと、なにか人生にぽっかりと穴が開いてしまったような居心地の悪さを感じていた。
検査にでも病院に行けば、同年代の人々と交流が持てるだろうか。
しかし…今の時代は病院に行くにも「資格」がいるのだ。重症でない限り、この「メディアセンター」と呼ばれる家庭用端末装置を使っての診断と投薬、そして体内チップに内蔵されたナノマシンによる治療が行われるだけである。
難しいことは佐治にはわからないが、この「ナノマシン」がなんとも気味が悪くて嫌いだった。