「おまえッ！」
殴りかかる勢いで神谷のパジャマの胸倉を掴む蘭丸。
同室の患者たちが何事かとざわつく。

蘭丸はこみ上げる怒りをなんとか押さえ、ベッドに突き放すようにして手を離した。

「もうええわ」
イスを乱暴に蹴って病室を飛び出した。
エレベータに向かう廊下の向こうから美咲と莉奈がこちらに手を振ってくる。

「プリン買ってきたよ～。蘭丸さんも一緒に食べよ～」
プリンの入ったレジ袋を高く掲げて莉奈が無邪気に笑う。

「いや、ええわ。俺、帰るし」

無表情のまま二人に軽く手をあげ、蘭丸はそのままエレベータの扉の中に消えた。



わかっている。蘭丸たちが必死で動いてくれてるのは、わかっている。俺を励まそうとしてくれていることも。
それでもやはり、どうなってしまうのか分からない自分の体への不安に、押し潰されそうになるのだ。

自分への苛立ちを諌めるように、神谷はベッドのマットレスに拳を力いっぱい叩きつけた。