このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

万至詰め

「好きだよ、至さん。」


たった一言。それを聞いて絶望した。

(オレはなんてことを……)

だめだ、それは都合のいい夏のまぼろし。

暑さにやられたんだよ、万里。

どうか、嘘だと言ってくれ。

オレはズルい男だから、見せるのは表だけ。

裏なんて見せたら欲の塊だ。

「……至さん?」

(……くそっ)

「……そっか。」

いつだって嘘がステータスのオレは、ある意味得してるんだろうな。

笑顔の仮面を被って、苦しさは分からない。

他人の心なんて、平気で傷つけてしまう、自分が憎い。

「オレは、嫌いだよ、万里。」

そう言って、驚いた。

頬に伝う温かい嘘。今までにないくらい自然に、ポロポロと落ちていったこの嘘は、俺のわがままと、馬鹿なプライド。

それも全部、夏のまぼろし。
1/1ページ
    スキ