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短編集



 午後の昼下がり。天気も晴れやか、涼やかな風が髪をゆらす。そんな穏やかな日々は今日も変わらず。

「よっ」

 前言撤回。今日はちょっと違うらしい。

「また来たの」
「つれないな。せっかく来たのに随分な挨拶だ」

 水の天族特有の髪を揺らした男――ノーアに、エドナは呆れたようなそんな視線を投げた。それを受けて尚、ノーアは呆気からんと笑う。
 
「これ、いつものな。今回は一段と意味わからんぞ」
「どうしてそう思いながら普通に受け取ってくるのよ」
「そりゃお前、あいつが頑固で融通の聞かないやつだからだろうよ」

 つまり、苦言は呈した、ということらしい。それでも聞かないのがこの大きな包みの送り主だ。それは双方一致の意見であるので顔を見合わせて苦笑い。

「ねぇ、これは?」

 大きな包みの上に、ちょこんと可愛らしく置かれた小包。手のひらに収まるようなそれに、エドナは目を引かれた。

「これは俺からな」
「……珍しいわね、あなたが何か持ってくるなんて」
「毎回あいつの土産ばっか運ぶのも味気ねぇなと思ってさ」

 ちょいちょい、と手招きされて歩み寄れば、掌に乗せられるその小包。あけてみな、と促されてそれを開ければ小さな小瓶に入った茶葉。中には茶葉と共に小さな色とりどりの金平糖が可愛らしく詰まっていた。

「それ、俺のお気に入り」
「随分可愛らしい趣味をしてるのね」
「そうか? お嬢も気に入ると思うんだけど」

 意外と趣味のいい時土産に、少しばかりの悔しさを隠すように皮肉を込めてもノーアは楽しそうに笑うだけ。この男にはいつも勝てない。

「お兄ちゃんの事だから、パルミエも持ってきてるんでしょう? 淹れてちょうだい」
「はは、よろこんで」

 そうしてまた、話を聞かせて。
 この時間が、少しばかり特別になるように。

 
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