短編集
暗雲立ち込めた世界を救ったあいつは、今、俺の目の前で最愛の妹と対峙していた。
どうしようもないことはわかっていた。わかっていたはずだった。あの子の堪えきれない程の悲しみの表情を見るまでは。
あの兄妹の絆を、歪ながらに確かに繋がっていた絆を、誰よりも知っていたのは俺のはずなのに。それをどうしようもないの一言で済ますには、あまりにあの子達と関わりすぎた。
あの子を傷つけまいと離れたあいつが、こうしてここに帰ってきたのは、あいつ自身がまだここに思いを残していたからだろう。それがあいつの1番の願いを壊してしまうなんて。そんなことはあってはならない。だからこうして、あいつをここまで追ってきた。
「…妹を頼む、ね。勝手な事いいやがって」
あいつはいつも終わりを見据えていた。見据えた上で、俺に何度も同じ言葉を残した。きっとあいつにはこうなる未来が見えていたのだろう。だがそれでも尚、あいつは自分の道を貫いた。それはあの子からしたらなんて自分勝手で、なんて残酷なことか。だがそれをも飲み込み、最期まで歩みを止めなかった。
そしてその歩みの先には、確かに俺への信頼があった。ならばどうするかはもう決まっている。
腰に携えた己が武器を手に、踏み出した1歩は酷く重い。それでも、果たすべき誓いがその足を促す。託された信頼がその背を押す。
「ここまで振り回されたんだ。最期まで付き合ってやるさ」
届かぬと知りながらも、そう零して俺は