短編集
「ね、ノーア」
「ん?」
後ろから自身の名を呼ぶ声がして、ノーアは足を止める。そこには赤髪の少女がいた。
「イリアじゃねーか。どうした?」
「ちょーっとお願いがあるんだけどさ……」
「なんだ、改まって」
「まぁ、大したことじゃないんだけど……あんたのその銃、ちょっとだけ見せてくんない?」
「銃?」
腰のホルスターに携えた銃を一瞥し、そのまま手に取ってイリアの掌に載せてやる。それをそのまま斜めにしたりのぞきこんだりと眺めるイリアに、何がしたいのかが分からずに首を傾げるノーア。
「やっぱり似てるのよねぇ」
「似てるって?」
「あたしの銃とノーアの銃よ。ルカに言われて初めて気づいたんだけど」
「そういえばそうだな。気にしたことなかったわ」
よくよく思えばイリアも水属性の術技を得意としており、気づかなかっただけで以外と共通点があるものだなぁ、とノーアは銃を眺めてるイリアを見やる。普段隣に居る少年を弄ってるときより真剣なその表情に少しばかり笑ってしまう。
「な、なによ」
「いやぁ、若い奴らと同じように会話出来るのが楽しいな、と」
「なにそれ、ジジくさ…」
呆れたように笑顔を引っ込め、肩を竦めた相手に、すっと手を出す。ありがと、一言と共に帰ってきた銃をホルスターに戻した。
「今度、一緒に武器屋でもいくか? 同じもの扱う同士で話せることもあるだろ」
「あ、それいいわね」
せっかくだからルカにも銃持たせてみようかしら、面白そうだし、などと楽しそうに零すイリアに、仲がいいなぁ、なんてぼんやり思いながら、その横顔を眺めていた。