短編集
「毎回言うが俺はこう言うの得意じゃねぇんだって」
「ノーアはお子様だねぇ。こういうのが楽しいんじゃねーの」
卓上に置かれたグラスに注がれた酒を見つつ、ノーアは1人ため息を吐く。定期的に行っている情報交換。今回はザビーダの元にノーアが出向く形となり、今に至る。
「俺の方が年上だぞ。労れー」
「たかだか200年くらいだろ。んな変わんねぇっての」
「たかだか200年、されど200年。200年あったら世界がどんだけ変わると思ってんだ」
「相も変わらず人の世情が好きなこった」
「見てて飽きねぇからなぁ」
逸れた話を戻すのも面倒だ、と何回かグラスを揺らして、諦めたように中の液体を口に運ぶノーアを見てザビーダもグラスを傾けた。
「で? そっちは何が進展あったのか?」
「あったらもっといい顔してら」
「ちげぇねぇ」
「いつまで待たせんだよなぁ……ほんと」
「なんだ? 弱音か?」
揶揄うような声色。だがどこか真面目さも含んでいて。ノーアは自嘲する。
「酒のせいってことにしといてくれ」
「はっはっはっ、じゃあ今日はとことん付き合ってもらうぜ」
まだそこまで減っていないグラスにザビーダが笑いながら波々と酒を注いでいくのを苦笑いで眺めながら、今日は付き合うしかないようだ、とそのグラスを口に運んだ。