第二章:一人の家族として
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親父さんがフリーデンの仕事に復帰して1週間近くたった。私はその間、戦闘技術を身に付ける為エースから指導を受けていた。運動音痴と言う程では無かったが苦手だった私はどうやら戦闘には向いていないらしく1週間経った今もまだ何も出来ずにいた。
「ハァハァ、エースもう無理!!!!」
「お前…本当に体力ねぇな」
私の体力がないのでは無い、この世界の人達が体力ありすぎなのだ。あと少しで出航だと言うのに未だに何の戦闘技術も身に付けていない自分に嫌気がさす。
「ルカ!!」
甲板から下を見下ろすと、ブレダと車椅子に乗った壮年男性が居た。きっとあの男性はブレダのお父さんだろう。
「ブレダ、今そっちに行くね!エース、ちょっと行っても大丈夫?」
「あぁ、行ってこい。今のうちにちゃんと挨拶しとけよ」
エースは私の頭をひとなでして、自分の隊のクルー達と訓練を再開する。私は直ぐに船から降り2人の前に行く。
「ルカ、私アナタと出会えて良かったわ。辛くなったらいつでも帰ってきなさい」
「ありがとう、ブレダ。私もアナタの事忘れない」
ブレダは瞳に涙を溜め嬉しそうに微笑んだ。それを見たブレダのお父さんは私の手を握る。その手は少し皺があり、父の手を連想させた。暖かく優しく握る手に私は涙が溢れそうになった。すぐに膝をつきブレダのお父さんと目線を合うように座る。
「君には感謝しかない。娘はね、あの日以来本当の笑顔を見せてくれなくなってしまった。だが君が来た日から嬉しそうに笑うようになったんだ」
「パパ…」
「ありがとう、ルカちゃん」
私は、お父さんの手を包み込むように握り、この人たちが幸せに暮らせますように、そしていつかお父さんの足が治りますようにと願った。
「ルカ、そろそろ出航だ」
ユーマに声をかけられ私はその手を名残惜しいが離した。
「親父さんや女将さん、レイスとゴーントによろしく伝えてね」
「えぇ、伝えておくわ。またね、ルカ」
「うん。またね、ブレダ」
私はその場を離れ、船に乗り込む。出航の合図と共に港からどんどん遠ざかっていく。お見送りする村の人たちが小さくなっていく中、ブレダのお父さんが車椅子からよろよろと立ちあがったのが見えた。もう二度と歩くことは出来ないと言われていたのに。
「ユーマ!ブレダのお父さんが!!!」
「足が治った…?まさか…」
ユーマは私を見る。どうかしたのだろうか。私が問おうと口を開いた時だった。ユーマは複雑そうな、少しばかり儚い顔をしながら私の頭を撫でた。
「ルカ、俺は何があってもお前を守るから…」
「ユーマ…?」
ユーマはそれ以上何も言わずただ、広がっていく地平線を見ていた。
私はこの時何も知らなかった。ユーマという人間と私自身の事を。