仗露
「仗助、どうしたい?」
珍しく露伴が俺の希望を聞いてくれた。こんなシチュエーションじゃなきゃ嬉しかったのになァ。
俺達のどっちかが記憶を失わないと、この部屋からは出れないらしい。
新手のスタンド能力だと思って調べてみたが、出口などは見つからず、飲まず食わずでもう丸一日が過ぎた。
外の様子も分からないから今が朝なんだか昼なんだか分からない。
クレイジーダイヤモンドでもヘブンズ・ドアでも全く歯が立たない。スタンド能力かどうかすら怪しい。
最初こそ色々な手を尽くして脱出を試みたが、何も無い部屋に閉じ込められると思考が停止していくのがわかる。
壁に書かれている「どちらか1人の記憶を失えば出られる」という文字を2人でただただ眺め、露伴が先程の言葉を呟いた。
「俺は…」
記憶か。今までの記憶が全て無くなるのか。
1番古い記憶はなんだろう。やっぱり俺を助けてくれたあの人の、あの時の記憶かな。
億泰のことも、康一のことも、みんな忘れんのかな。
露伴のことも。
声には出さなかったけど、嫌だなァ、と思ったのが顔に出てしまっていたようで。
「じゃあ、俺がやろうか」
露伴が小さく言った。
「漫画が書けなくなるわけじゃあない。逆に新鮮かもしれないと思ったんだよ。今から見るのは、全て新しい世界ってことだろ?良いネタになるんじゃあないか」
俺は何も言ってないのに、露伴はよく喋る。
自分の気持ちを隠したいんだろうか。本当は露伴だって嫌なんじゃあないのか。
俺が何か言わなくてはと思い口を開こうとしたら、露伴はそれを見透かしたように言った。
「お前は、大事なものがあるだろう?家族や友人や、僕が知らないだけで恋人もいるかもしれない。僕は…記憶くらい失くしたって失うものは何も無いさ」
そう言うと、露伴は壁の前に立った。
露伴、言ったことはないけれどさ。俺はお前が好きだったんだぜ。
高校生のガキなんて。ましてや男の俺なんて相手にされないと思って、黙ってたんだ。
記憶が失くなったら、どうなるんだろう。
また喧嘩してくれんのかな。
お前の減らねぇ口とか、すげェわがままなところとか、でもなんだかんだ人が良いところとか、好きだったんだよ。
どうせ忘れちまうなら、最後に言ったっていいかな。
「なァ」
壁に立った露伴が、こちらを振り向きながら言った。
「記憶が失くなる前に、クソッタレ仗助に一つだけ教えてやろう」
なんだよ、俺だってお前に言いたいことがあるんだ。
「僕はさ」
露伴の唇がゆっくりと言葉を紡ぐ。
「お前のこと、好きだったんだよ」
そう言うと露伴は、珍しく笑って、壁にそっと触れた。
壁の文字が光って、その光に吸い込まれていくような感覚になった。
なんだよそれ。露伴。なんで今言うんだよ。
あぁ、こんなシチュエーションじゃなきゃ嬉しかったのになァ。
珍しく露伴が俺の希望を聞いてくれた。こんなシチュエーションじゃなきゃ嬉しかったのになァ。
俺達のどっちかが記憶を失わないと、この部屋からは出れないらしい。
新手のスタンド能力だと思って調べてみたが、出口などは見つからず、飲まず食わずでもう丸一日が過ぎた。
外の様子も分からないから今が朝なんだか昼なんだか分からない。
クレイジーダイヤモンドでもヘブンズ・ドアでも全く歯が立たない。スタンド能力かどうかすら怪しい。
最初こそ色々な手を尽くして脱出を試みたが、何も無い部屋に閉じ込められると思考が停止していくのがわかる。
壁に書かれている「どちらか1人の記憶を失えば出られる」という文字を2人でただただ眺め、露伴が先程の言葉を呟いた。
「俺は…」
記憶か。今までの記憶が全て無くなるのか。
1番古い記憶はなんだろう。やっぱり俺を助けてくれたあの人の、あの時の記憶かな。
億泰のことも、康一のことも、みんな忘れんのかな。
露伴のことも。
声には出さなかったけど、嫌だなァ、と思ったのが顔に出てしまっていたようで。
「じゃあ、俺がやろうか」
露伴が小さく言った。
「漫画が書けなくなるわけじゃあない。逆に新鮮かもしれないと思ったんだよ。今から見るのは、全て新しい世界ってことだろ?良いネタになるんじゃあないか」
俺は何も言ってないのに、露伴はよく喋る。
自分の気持ちを隠したいんだろうか。本当は露伴だって嫌なんじゃあないのか。
俺が何か言わなくてはと思い口を開こうとしたら、露伴はそれを見透かしたように言った。
「お前は、大事なものがあるだろう?家族や友人や、僕が知らないだけで恋人もいるかもしれない。僕は…記憶くらい失くしたって失うものは何も無いさ」
そう言うと、露伴は壁の前に立った。
露伴、言ったことはないけれどさ。俺はお前が好きだったんだぜ。
高校生のガキなんて。ましてや男の俺なんて相手にされないと思って、黙ってたんだ。
記憶が失くなったら、どうなるんだろう。
また喧嘩してくれんのかな。
お前の減らねぇ口とか、すげェわがままなところとか、でもなんだかんだ人が良いところとか、好きだったんだよ。
どうせ忘れちまうなら、最後に言ったっていいかな。
「なァ」
壁に立った露伴が、こちらを振り向きながら言った。
「記憶が失くなる前に、クソッタレ仗助に一つだけ教えてやろう」
なんだよ、俺だってお前に言いたいことがあるんだ。
「僕はさ」
露伴の唇がゆっくりと言葉を紡ぐ。
「お前のこと、好きだったんだよ」
そう言うと露伴は、珍しく笑って、壁にそっと触れた。
壁の文字が光って、その光に吸い込まれていくような感覚になった。
なんだよそれ。露伴。なんで今言うんだよ。
あぁ、こんなシチュエーションじゃなきゃ嬉しかったのになァ。