恋のダークマター
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「うっ…………!」
「名字さん……!」
当然ながら、ダークマターは吐きそうになるほどの不味さだった。
名前は一瞬にしてサーッと血の気が引き、顔面蒼白になる。
「ご……ごめんなさい、ごめんなさい!!
わが校の大事な選手の皆さんに、私は……なんてことを……!」
「き、気にするなよ名字さん。
俺たちなら平気だから、な?」
「そ、そうっすよ、腹は痛めてないですし……。」
山王工業の至宝と言っても過言ではない部員たちにとんでもない事をしてしまったと、名前は半泣きで申し訳なさそうにペコペコと謝る。
人情のある部員たちはそれでも、決して悪気はなかった名前の気持ちを汲み、未だ青みの消えない顔のまま何とか慰めてくれようとしていた。
そんな中、しばし沈黙を決めていた深津が顔色を一切変えることなく、ダークマターを食べ進めた。
「ふ、深津……?お前、大丈夫かよ……?」
まだ血色の悪い河田たちが思わず心配そうに見守る中、深津は表情を微動だにせずダークマターをペロリと完食させ、そして名前の前へと立った。
名前はそんな深津を、呆然とした表情で見上げる。
「名字、レシピ間違えたんだな。ピョン。
でも一番大事なもの、気持ちはちゃんと入ってたピョン。
ごちそうさまピョン。」
そのように言うと、深津は名前の頭をポンッ、と軽く撫でた。
「ふかつ、くん……!」
名前は、ほのかに想いを寄せている深津の優しさに、言葉を失い目をうるうるとさせた。
「深津……。」
「キャプテン……。」
「深津さん、かっけえ……。」
部員たちが、思わず畏敬の眼差しで深津を見つめる。
そんな少年少女らの青春ドタバタ劇の一部始終をずっと生暖かい目で見守っていた堂本が、「お前たち、そろそろ再開するからなー。」と声をかけた。
「ウス!」と部員たちは各々の練習へと向かっていった。
「はは、どんまいだったな名字さん。失敗することもあるさ。
また気が向いたら、坊主たちに何でも持ってきてあげてくれよ。喜ぶからさ。」
「た、大変失礼しました……!」
彼からすれば大事な部員が迷惑をかけられたのにも関わらず、堂本は至極紳士な大人の対応をして、未だに頬がほんのり紅潮してポワポワとしている名前を見送っていった。
「深津さん、あれをよく平気で食べれましたね。」
「そうでもなかったピョン。」
滅多なことでは動じない深津とて、何も最凶のダークマターに対して平然としていられるわけではなかった。
あまりにも顔に現れないので、今まで誰にも悟られることが無かったが、深津も名前のことが好きだったのである。
『名字は相変わらず下手だピョン。』
『あ……手伝ってくれてありがとう、深津くん。』
名前は工業高校生にしては壊滅的に手先が不器用だった。
実習科目が苦手で、手には絆創膏が貼ってあることも少なくはない。そんな、危なっかしくて目が離せなくなるような少女だった。
それでも、めげること無くひたむきで純粋だった。深津はそんな名前のドジで鈍臭いところさえ、可愛いと思っていた。
その名前が作ったダークマターだったからこそ、惚れた欲目でなんとかなったのである。
「お前、名字のこと好きだったんだな。」
「そうだピョン。おっちょこちょいで可愛いピョン。」
「本ッ当に顔に出ないよな、お前は……。」
深津は相変わらず表情を変えずに、恥じ入る様子もなくストレートに名前への気持ちを認めた。
それを見た河田は呆れながらも、(おっちょこちょいってレベルか……?まあよかったじゃねえか深津。どう見ても名字もお前のこと好きだろ。)などと、モテ男の沢北に対してよりかは幾分と優しく、心の中で少しだけ盟友を祝福してあげた。
「深津くん、あの、昨日はごめんなさい。そして、ありがとう……。」
「ピョン。」
次の日の名前は深津を意識しすぎるあまり、ほんのりと顔を赤らめて目線が合わせられなかった。
深津は相変わらずの表情の無さだが、そんな名前を見て満足気だった。
名前の作ったダークマターは紛れもなく失敗作だったが、恋のスパイスとしては成功していたのかもしれない。
【完】
「名字さん……!」
当然ながら、ダークマターは吐きそうになるほどの不味さだった。
名前は一瞬にしてサーッと血の気が引き、顔面蒼白になる。
「ご……ごめんなさい、ごめんなさい!!
わが校の大事な選手の皆さんに、私は……なんてことを……!」
「き、気にするなよ名字さん。
俺たちなら平気だから、な?」
「そ、そうっすよ、腹は痛めてないですし……。」
山王工業の至宝と言っても過言ではない部員たちにとんでもない事をしてしまったと、名前は半泣きで申し訳なさそうにペコペコと謝る。
人情のある部員たちはそれでも、決して悪気はなかった名前の気持ちを汲み、未だ青みの消えない顔のまま何とか慰めてくれようとしていた。
そんな中、しばし沈黙を決めていた深津が顔色を一切変えることなく、ダークマターを食べ進めた。
「ふ、深津……?お前、大丈夫かよ……?」
まだ血色の悪い河田たちが思わず心配そうに見守る中、深津は表情を微動だにせずダークマターをペロリと完食させ、そして名前の前へと立った。
名前はそんな深津を、呆然とした表情で見上げる。
「名字、レシピ間違えたんだな。ピョン。
でも一番大事なもの、気持ちはちゃんと入ってたピョン。
ごちそうさまピョン。」
そのように言うと、深津は名前の頭をポンッ、と軽く撫でた。
「ふかつ、くん……!」
名前は、ほのかに想いを寄せている深津の優しさに、言葉を失い目をうるうるとさせた。
「深津……。」
「キャプテン……。」
「深津さん、かっけえ……。」
部員たちが、思わず畏敬の眼差しで深津を見つめる。
そんな少年少女らの青春ドタバタ劇の一部始終をずっと生暖かい目で見守っていた堂本が、「お前たち、そろそろ再開するからなー。」と声をかけた。
「ウス!」と部員たちは各々の練習へと向かっていった。
「はは、どんまいだったな名字さん。失敗することもあるさ。
また気が向いたら、坊主たちに何でも持ってきてあげてくれよ。喜ぶからさ。」
「た、大変失礼しました……!」
彼からすれば大事な部員が迷惑をかけられたのにも関わらず、堂本は至極紳士な大人の対応をして、未だに頬がほんのり紅潮してポワポワとしている名前を見送っていった。
「深津さん、あれをよく平気で食べれましたね。」
「そうでもなかったピョン。」
滅多なことでは動じない深津とて、何も最凶のダークマターに対して平然としていられるわけではなかった。
あまりにも顔に現れないので、今まで誰にも悟られることが無かったが、深津も名前のことが好きだったのである。
『名字は相変わらず下手だピョン。』
『あ……手伝ってくれてありがとう、深津くん。』
名前は工業高校生にしては壊滅的に手先が不器用だった。
実習科目が苦手で、手には絆創膏が貼ってあることも少なくはない。そんな、危なっかしくて目が離せなくなるような少女だった。
それでも、めげること無くひたむきで純粋だった。深津はそんな名前のドジで鈍臭いところさえ、可愛いと思っていた。
その名前が作ったダークマターだったからこそ、惚れた欲目でなんとかなったのである。
「お前、名字のこと好きだったんだな。」
「そうだピョン。おっちょこちょいで可愛いピョン。」
「本ッ当に顔に出ないよな、お前は……。」
深津は相変わらず表情を変えずに、恥じ入る様子もなくストレートに名前への気持ちを認めた。
それを見た河田は呆れながらも、(おっちょこちょいってレベルか……?まあよかったじゃねえか深津。どう見ても名字もお前のこと好きだろ。)などと、モテ男の沢北に対してよりかは幾分と優しく、心の中で少しだけ盟友を祝福してあげた。
「深津くん、あの、昨日はごめんなさい。そして、ありがとう……。」
「ピョン。」
次の日の名前は深津を意識しすぎるあまり、ほんのりと顔を赤らめて目線が合わせられなかった。
深津は相変わらずの表情の無さだが、そんな名前を見て満足気だった。
名前の作ったダークマターは紛れもなく失敗作だったが、恋のスパイスとしては成功していたのかもしれない。
【完】
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