恋のダークマター
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「みんな、来週の調理実習はオレンジゼリーを作りますよ。
オレンジゼリーは、栄養補給と疲労回復効果がバツグンなんです。
実はレモンのはちみつ漬けと並んで、運動部の間食に向いているんですよ。」
(へえ……オレンジゼリーって、そうなんだ。)
山王工業の数少ない女生徒の1人である名前は、クラスメイトでバスケ部キャプテンの深津に淡い気持ちを抱く少女である。
そして深津への気持ちをいったん置いたとしても、山王工業の至宝とも言えるバスケ部には憧憬があった。
名前はついに3年生になり、せめて最後の儚い思い出として、生徒であるうちに一度くらいは、バスケ部に何か心のこもった差し入れがしてみたい。そう思っていた。
そして大変タイムリーなことにその日、家庭科教師はオレンジゼリーについて、部活動に向いているおやつであると説明をしたのである。
……名前はこれだ、と確信した。
次の週の調理実習で、名前はいつも以上に燃えて真剣に取り組み、不器用な彼女ではあったが、上手いことオレンジゼリーを完成させた。
「よかったあ~。これなら私でも何とかなる。」
「名字、何ひとりごと言ってるピョン。」
「深津くん!な、なんでもないよ。」
不器用な自分でも何とか作れることを確信し、安心した名前は早速、来週に差し入れ作りをすることに決めた。
調理室は事前に許可を取れば放課後にも使える。
材料はもちろん持ち込みだが、器具と調味料は申告すれば常備されているものを使うことが許されているのだ。
淡く期待を胸に抱いて名前はその日を待った。
ーーそしてこれは、名前が調理室を借りる前日の話である。
2人の男子生徒が、調理室の扉をキィ、と開いた。
机の上には、空の瓶が置かれている。
「なあ、さっき先生コレに何詰めろって言ってたっけ?たしか砂糖だったよな?」
「あれ、塩じゃなかったかあ?」
「そうだったっけ?あ~でも、言われてみれば塩だったかも。そうだわ。」
「さっさと補充して部活行こうぜ~。」
「だな~。」
こうしておバカで間抜けは少年たちは、大胆にも砂糖の瓶に、塩をドカドカと大量に入れて去っていった。
これが後にトンチンカンな悲劇を生み出してしまうのだが、そんなことはもちろん、この少年たちが知るわけもなく……。
そしていよいよ名前の差し入れ作戦・決行日になった。
放課後すぐに調理室へ来た名前は、朝に冷蔵庫へ保管した材料を揃え、レシピをよく見ながらややぎこちない手つきで調理を進めていく。
「深津くん……。
迷惑にならなければいいけど……。」
照れ屋で感情がすぐ顔に出やすい名前にとって、感情に左右されない冷静沈着な深津は憧れだった。
どこかホヤホヤとしている名前は、深津の謎の語尾をつけるというエキセントリックな所も可愛くて素敵だと思っていた。
そうして淡い恋心を抱きながら、彼女なりに一生懸命作り進めていく。
……もちろん、まさかアクシデントが起きているなどとはつゆも思わずに。
「できたあ~!」
その上、名前はどこか抜けていてツメの甘い少女であった。
材料にもアクシデントがあったが、実はちょくちょくとミスをしていた。
しかし、全くどういうことなのか、何故か奇跡的に見た目だけは美しく仕上がってしまったのである。
見た目「は」綺麗に仕上がった大量のオレンジゼリー(もどき)たちにすっかり騙されて、調理実習の時と全く同じように出来たと満足してしまった名前は、油断しきって味見することが無かった。
オレンジゼリー(もどき)たちを使い捨てのスプーンと一緒に、大きなクーラーボックスへと大量に仕舞いこんだ。
……こうして、むなしくも最凶のダークマターは大量生産されてしまったのである。
オレンジゼリーは、栄養補給と疲労回復効果がバツグンなんです。
実はレモンのはちみつ漬けと並んで、運動部の間食に向いているんですよ。」
(へえ……オレンジゼリーって、そうなんだ。)
山王工業の数少ない女生徒の1人である名前は、クラスメイトでバスケ部キャプテンの深津に淡い気持ちを抱く少女である。
そして深津への気持ちをいったん置いたとしても、山王工業の至宝とも言えるバスケ部には憧憬があった。
名前はついに3年生になり、せめて最後の儚い思い出として、生徒であるうちに一度くらいは、バスケ部に何か心のこもった差し入れがしてみたい。そう思っていた。
そして大変タイムリーなことにその日、家庭科教師はオレンジゼリーについて、部活動に向いているおやつであると説明をしたのである。
……名前はこれだ、と確信した。
次の週の調理実習で、名前はいつも以上に燃えて真剣に取り組み、不器用な彼女ではあったが、上手いことオレンジゼリーを完成させた。
「よかったあ~。これなら私でも何とかなる。」
「名字、何ひとりごと言ってるピョン。」
「深津くん!な、なんでもないよ。」
不器用な自分でも何とか作れることを確信し、安心した名前は早速、来週に差し入れ作りをすることに決めた。
調理室は事前に許可を取れば放課後にも使える。
材料はもちろん持ち込みだが、器具と調味料は申告すれば常備されているものを使うことが許されているのだ。
淡く期待を胸に抱いて名前はその日を待った。
ーーそしてこれは、名前が調理室を借りる前日の話である。
2人の男子生徒が、調理室の扉をキィ、と開いた。
机の上には、空の瓶が置かれている。
「なあ、さっき先生コレに何詰めろって言ってたっけ?たしか砂糖だったよな?」
「あれ、塩じゃなかったかあ?」
「そうだったっけ?あ~でも、言われてみれば塩だったかも。そうだわ。」
「さっさと補充して部活行こうぜ~。」
「だな~。」
こうしておバカで間抜けは少年たちは、大胆にも砂糖の瓶に、塩をドカドカと大量に入れて去っていった。
これが後にトンチンカンな悲劇を生み出してしまうのだが、そんなことはもちろん、この少年たちが知るわけもなく……。
そしていよいよ名前の差し入れ作戦・決行日になった。
放課後すぐに調理室へ来た名前は、朝に冷蔵庫へ保管した材料を揃え、レシピをよく見ながらややぎこちない手つきで調理を進めていく。
「深津くん……。
迷惑にならなければいいけど……。」
照れ屋で感情がすぐ顔に出やすい名前にとって、感情に左右されない冷静沈着な深津は憧れだった。
どこかホヤホヤとしている名前は、深津の謎の語尾をつけるというエキセントリックな所も可愛くて素敵だと思っていた。
そうして淡い恋心を抱きながら、彼女なりに一生懸命作り進めていく。
……もちろん、まさかアクシデントが起きているなどとはつゆも思わずに。
「できたあ~!」
その上、名前はどこか抜けていてツメの甘い少女であった。
材料にもアクシデントがあったが、実はちょくちょくとミスをしていた。
しかし、全くどういうことなのか、何故か奇跡的に見た目だけは美しく仕上がってしまったのである。
見た目「は」綺麗に仕上がった大量のオレンジゼリー(もどき)たちにすっかり騙されて、調理実習の時と全く同じように出来たと満足してしまった名前は、油断しきって味見することが無かった。
オレンジゼリー(もどき)たちを使い捨てのスプーンと一緒に、大きなクーラーボックスへと大量に仕舞いこんだ。
……こうして、むなしくも最凶のダークマターは大量生産されてしまったのである。
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