記憶と記録

とある聖杯戦争に喚ばれた。
当世風の服装で、護衛としてマスターと一緒に商店街を歩く。
顔はサングラスとマスクで隠した。
ふと、商店の軒先に、チョコレートがワゴンに入れて売られているのを見た。
その瞬間、頭の中になにかの記憶がフラッシュバックする。
橙色の髪、蜂蜜色の瞳の少女が、私に何かを賜ったような。
ああ、しかし、その少女のことは、何も思い出せないのです。
「どうした、セイバー?」
マスターが、チョコレートを見たまま固まっていた私に声をかける。
あの少女とは似ても似つかない、大人の男性だった。
「いえ……なんでもありません」
私は、首を振ってワゴンの前を通り去った。
1/1ページ
    スキ