聖杯戦線の思い出
「ウオオオオオオオオ!!!」
マスターは雄叫びにも似た悲鳴を上げながら、全力で逃げていた。
聖杯戦線・最終決戦。
ラスボスと思わしき敵が、ドラゴンブレスを放とうとしている。
「ブレスの範囲広すぎだろおおおお!!!」
なんとかブレスの範囲外に逃れた次の瞬間、戦場に広範囲のビームが放たれ、戦場は焼け野原と化す。
もしこれが直撃していたらと思うと、背すじに寒気を覚えた。
おまけに「不死殺し」とかいうわけわからん能力を持った敵が、ガッツや回避などをする暇もなかった味方のサーヴァントを次々と屠っていく。このエネミーに倒されると、復活ゲージがまだ残っていても復活できず、そのまま消滅してしまう。
プトレマイオスも、杉本も倒れた。
もう味方は半分か、三分の一程度しか残っていない感じだ。
「ドラコーまで倒された……これは非常にまずい……」
味方サーヴァントは敵ボスのコアまではたどり着いたが、なかなか体力ゲージを削りきれずにいる。
まごまごしているとまたブレスが飛んでくる。
ブレスはマスターの命のみならず、さしものサーヴァントにも、直撃すれば大幅に体力を減らされる。
ジリ貧のような状態だった。
そして、マスターの体力ゲージも、敵に二回攻撃され、あとひとつしか残っていない。風前の灯火、というやつだ。
「後輩、無様な姿でもいいから必死に逃げ回りなさい! アンタが落とされたら、この戦いは詰むんだからね!」
召喚していた虞美人が発破をかける。
アサシン枠を誰にしようかと悩んだ末の選択であったが、結果として虞美人で正解であった。
彼女の自動回復スキルは、体力を削られてもギリギリ残ってさえいればすぐ回復する。おかげさまで復活ゲージも未だに削られていない。
「まるで不死鳥のようだ」と言ったら、この先輩はどんな顔をするだろうか。
やがて、虞美人がコアに辿り着き、コアの体力を削っていく。
「――今だ、征け、蘭陵王!」
同じくボスバトルに参戦していた蘭陵王に、虞美人が叫ぶ。
蘭陵王は宝具――『蘭陵王入陣曲』を発動して攻めも守りも十全である。
「ハァァッ!」
蘭陵王は鬨の声を上げて、空中を舞う。
鋭くジャンプしながらの剣技。宝具とスキルをフル活用した攻撃力とクリティカルヒットは、敵のゲージを見事削りきった。
――聖杯戦線終了。
「今まで難易度選べたのに、なんで最後いきなり難しくなるの……二度とやりたくない……」
マスターはその場にへたり込む。
しかし、このときのマスターは気付いていなかった。
選ばれなかったプトレマイオスのほうの聖杯戦線もあることを――。
〈了〉
マスターは雄叫びにも似た悲鳴を上げながら、全力で逃げていた。
聖杯戦線・最終決戦。
ラスボスと思わしき敵が、ドラゴンブレスを放とうとしている。
「ブレスの範囲広すぎだろおおおお!!!」
なんとかブレスの範囲外に逃れた次の瞬間、戦場に広範囲のビームが放たれ、戦場は焼け野原と化す。
もしこれが直撃していたらと思うと、背すじに寒気を覚えた。
おまけに「不死殺し」とかいうわけわからん能力を持った敵が、ガッツや回避などをする暇もなかった味方のサーヴァントを次々と屠っていく。このエネミーに倒されると、復活ゲージがまだ残っていても復活できず、そのまま消滅してしまう。
プトレマイオスも、杉本も倒れた。
もう味方は半分か、三分の一程度しか残っていない感じだ。
「ドラコーまで倒された……これは非常にまずい……」
味方サーヴァントは敵ボスのコアまではたどり着いたが、なかなか体力ゲージを削りきれずにいる。
まごまごしているとまたブレスが飛んでくる。
ブレスはマスターの命のみならず、さしものサーヴァントにも、直撃すれば大幅に体力を減らされる。
ジリ貧のような状態だった。
そして、マスターの体力ゲージも、敵に二回攻撃され、あとひとつしか残っていない。風前の灯火、というやつだ。
「後輩、無様な姿でもいいから必死に逃げ回りなさい! アンタが落とされたら、この戦いは詰むんだからね!」
召喚していた虞美人が発破をかける。
アサシン枠を誰にしようかと悩んだ末の選択であったが、結果として虞美人で正解であった。
彼女の自動回復スキルは、体力を削られてもギリギリ残ってさえいればすぐ回復する。おかげさまで復活ゲージも未だに削られていない。
「まるで不死鳥のようだ」と言ったら、この先輩はどんな顔をするだろうか。
やがて、虞美人がコアに辿り着き、コアの体力を削っていく。
「――今だ、征け、蘭陵王!」
同じくボスバトルに参戦していた蘭陵王に、虞美人が叫ぶ。
蘭陵王は宝具――『蘭陵王入陣曲』を発動して攻めも守りも十全である。
「ハァァッ!」
蘭陵王は鬨の声を上げて、空中を舞う。
鋭くジャンプしながらの剣技。宝具とスキルをフル活用した攻撃力とクリティカルヒットは、敵のゲージを見事削りきった。
――聖杯戦線終了。
「今まで難易度選べたのに、なんで最後いきなり難しくなるの……二度とやりたくない……」
マスターはその場にへたり込む。
しかし、このときのマスターは気付いていなかった。
選ばれなかったプトレマイオスのほうの聖杯戦線もあることを――。
〈了〉
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