従者たちと梁山泊(蘭陵王&小太郎・燕青)

「梁山泊を作る……ですか?」
 カルデアのマスターに召喚された、蘭陵王と風魔小太郎は、キョトンという擬音が似合いそうな声を上げた。
 それは、とある年のハロウィンのこと。
 九紋龍史進とエリザベート・バートリーが悪魔合体して誕生した九紋竜エリザとともにチェイテ梁山泊を作り上げるという、ハロウィンまったく関係なくない? と言いたくなる微小特異点が発生したのである。
 そこで、百八人の好漢を集めなければならない、ということでマスターからの召喚を受け、蘭陵王と小太郎が合流したというわけだ。
「僕はともかく、蘭陵王殿は梁山泊よりも官軍寄りのような気もしますけどね。秩序・善ですし」
 小太郎がそう言うと、蘭陵王は困ったような苦笑いを浮かべる。
「あっ、すみません。お気を悪くしましたか?」
「いえ、大丈夫ですよ。ただ、マスターの敵に回るようなことがなくて良かった」
 聞けば、梁山泊の宣伝に勝手に自分の等身大パネルが使われていたらしいが、それはそれ。
「よぉ、来たか、伝説のイケメン」
 一足先に梁山泊に来ていた燕青は、宴会の席で既に酒を飲んでいた。
「一献どうだい? 俺が注いでやるよ」
「あ、僕はジュースで。忍びが酔っ払って使い物にならないなんて、笑い話にもなりませんからね」
「私もお酒は遠慮しておきます」
 小太郎と蘭陵王は酒を固辞して、オレンジジュースを注いでもらった。
「なんだ、つれないなぁ。梁山泊の連中は、なにかあるたびに酒宴を開いてるもんなんだが」
 戦勝記念に酒宴を開き、仲間が加われば酒宴を開く。梁山泊の好漢たちは、陽気な馬鹿騒ぎが好きだった。
 燕青は酒を飲みながら、生前を思い返しているような、感傷的な表情を浮かべていた。
「それにしても、チェイテ梁山泊ですか……。また妙な特異点が生まれたものですな」
「ああ、しかもかつての俺の仲間が教授によって幻霊と合体させられ、女になったってんだから驚きだ。あの呼延灼がねぇ……」
 首を傾げる蘭陵王に、燕青が応える。
 歴史上、男と伝えられていた英霊が女性の姿で顕現するのはもはやカルデアにおいて珍しいことではないのだが、生前の仲間が性別を変えて顕現するとなると、やはり困惑はするのだろう。
「明日からはまた仲間集めだ。なにせ百八人必要だからな」
 カルデアからも何回かに分けて英霊たちを召喚しつつ、この特異点に引き寄せられて召喚されたはぐれサーヴァントも勧誘しなければならない。
 これから忙しくなるな、と蘭陵王と小太郎は思った。
 そして、これからが大変だというときに、みんなお酒を飲んでいて大丈夫なのだろうか、とも思ったという。
〈了〉
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