長篇
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「おい、あいつ職探しに行くとか言って、まだ帰ってきてねーんだけど……って、居るし」
「あ、少し前に戻りました」
無遠慮に入ってきた銀時の目にカウンターに座るあかりの姿がすぐ捉えられた。迷子にでもなったか、また変な輩に絡まれてるんじゃないかと、少なからず案じていた相手がスナックのカウンターで悠長にジュースを飲んでいるのだから、行き場を失った杞憂が何だか哀れに思えて不満そうな顔をする銀時。
「んだよ、帰ってきたらちゃんと"ただいま"でしょうが」
自分に帰宅を知らせろという意味も含めあかりに催促をする。なんてこと無い日常の挨拶なのに、面と向かってこうして催促されるとどこか照れ臭いものを感じたあかりは、数回視線を左右に揺らした後、観念したように銀時を見上げた。
「銀さん……、ただいま」
「……おう」
そう言った瞬間にあかりの頭には銀時の手が置かれ、そのままくしゃくしゃと撫でられた。
「……たく、保護者気取りかい、銀時?大体、自分で言わせておいてちょっと照れてるんじゃないよ、気色悪い」
「ババア、最後のは確実にいらねえだろババア!」
「おめーも、そのババアはいらねえだろうが!」などと返しながら店の奥へ消えていったお登勢は布団一式を抱えて戻ってきた。
「ほらよ、どうせお前の所は客人用に予備の布団なんて気の利いたもん無いんだろう、持ってきな」
そう言って一式を銀時に押し付けるお登勢。あかりがその布団に触れるととても柔らかくて、きっと自分の為にシーツを洗濯したり、干したりしてくれたのだろうということが分かった。
「ありがとうございます、お登勢さん」
「けっ、家にだって予備の布団の一組や二組……」
「押入で潰されてカビが生えてるって?」
「んなことねーよっ、……多分」
記憶を辿るようにした後、ばつの悪い顔になった辺りお登勢の言ったことは当たっていたのだろう。少なくとも長い間を日の目を浴びず暗い押入に追いやられていることは想像に難くなかった。
「おら、用が済んだならさっさと帰っぞ」
押し入れの布団事情を言い当てられ返す言葉がなくなったのか、そそくさとその場を後にしようとする銀時。あかりがそれを追いかけようと席を立つとお登勢が、そうそう、と言って銀時の足を止めた。
「あかり、大事な報告はしなくていいのかい?」
一瞬、どういう事かと首を傾げようとしてからすぐに「ああ!」と声を上げたあかりは、布団を抱え足で戸を開けようとする銀時の着物の裾を掴んで引き留めた。
「銀さん。私、お仕事見つかって、明日から真選組で働けることになりました!」
だから、お給料貰ったらちゃんと生活費とか家賃とか入れますね。と満面の笑みのあかり。そして、その言葉を聞きあかりの方へ振り返ると暫し固まった様に見つめる銀時。
「あ、あの、銀さん……?」
あかりとしては多少なりとも喜んでくれたり、「まあ、当てにしないで待ってるわ」という感じの言葉が間を置かずに来るだろうと予想していた所のコレである。
「……ぎ、銀さ」
「はあああぁぁぁっ!?」
「ヒィッ……!」
時が止まっていたかのように動かないと思ったら突然叫び声を上げた銀時。抱えていた布団は、それが女性だったならさぞかし羨ましいスタイルであろうという具合に締め上げられ、くびれが出来ていた。
「はあっ?何でそうなるんだよ。ババアは知ってたのかよ。つーか、よりにもよってなんでチンピラ警察に行き着くんだよ!」
足下に放る訳にもいかないからか布団を抱き締めたままあかりに詰め寄る銀時。
「チンピラ警察?銀さん何か誤解してるんじゃ……」
説明を要求するといった顔で布団ごとぐいぐい迫ってくる銀時に困り果てたあかりは、カウンターでキセルを吹かすお登勢に助けを求めた。今にも瞳に涙を溜めそうなあかりとあからさまに不機嫌な顔の銀時に視線を向けられ、小さく溜め息を吐くお登勢。
「まあ、こうなるだろうとは思っていたがねえ」
「ああっ?」
「お、お登勢さん?」
「こうなるって……アイツら頼るって分かってて、コイツ行かせたのかよ!」
お登勢の言葉に透かさず噛みつく銀時。それを見て、漸くあかりは銀時が来る前に言われた「もう少しここに居な」の意味を理解した。銀時が反対するのを見越してお登勢は引き留めたのだ。
「違うよ。アンタがこうやって反対するだろうってのが分かってたから、ここで待たせてたって話さ」
「いきなり頭ごなしに反対されたって訳分かんないだろう?」と銀時を宥めるお登勢。言われた銀時は布団越しに目の前に居るすっかり驚いた表情のあかりに気付いて、数歩後ろに下がった。
「職探しに行ったってのは知ってたが決まった先が真選組なんてのは、あたしだってついさっき聞いたんだ」
「用事のひとつに真選組へ行くことがあったのは承知してたけどねえ」と続けたお登勢に銀時は、何でわざわざ……、と言いたげにあかりを睨む。これは仕事が決まった経緯だけでなく、そもそも何故屯所に出向いたかという所から話さなければならないようだと観念したあかり。昨日助けてもらったお礼や銀時の元でお世話になることの報告をしに行って、求職中だと相談したら雇ってもらえるようになったと一から説明した。そして、一頻りあかりの話を聞いた銀時は、盛大な溜め息を吐きながら抱えている布団に顔を埋めた。
「そもそも、アイツらに礼とか必要ねーし。まず、その時点から間違ってたわ……。お前、真選組がどんな奴らか知ってんの?」
「え?は、はい。近代史というか、天人が関わってきた辺りからの出来事についてちゃんと教えてもらいましたし、真選組の仕事がテロに対抗するものだって、聞きましたけど……」
そこまで聞くと小首を傾げる銀時。
「え、テロ対策の組織?アイツら自身がテロリストじゃなくて?」
わざとらしい銀時の言葉に乗るようにお登勢も「あたしらにとっちゃあ、どっちも大差無いね」と言って笑った。目的の為なら周囲を省みないであろうテロリストと、それから幕府や市民を守る真選組とでは天と地ほども違うように思える両者。しかし、銀時もお登勢も互いの言葉に納得しているようで、今度はあかりが首を傾げた。
「あの、さっきも言ってましたよね、チンピラ警察って?」
素直な疑問を口にしたあかりに今までの不機嫌さはどこへやら、銀時はにんまり笑みを作って語り出した。
それからあかりが聞いたのは、まあ、良く言えば真選組の武勇伝というやつだった。
「な、なるほど……それでチンピラ警察ですか」
話を聞いただけでどっと疲れを感じたあかりが頭を抱えると、銀時はにんまりからニヤニヤという顔になった。そして、それでも真選組で働くのかと問いかける。
「で、でも、働くのは屯所だから危ない目には遭わないって近藤さんも言ってくれたし、真選組の皆さんも良い人だし!」
仮に銀時のした真選組の話が全て事実であったとしても、こうも諦めさせることを前提にした風に聞かれると反発したいもので、あかりは決定を変える意思が無いことを示した。その後も何をどうしても諦めさせたいのか、テロリストよりよっぽど危ないだの、むさ苦しい所だの、変な病原菌もらってきそうだの、ドSだのマヨだのストーカーだのと途中から働くのとは関係の無いことまで言い出した銀時。そんな様子に呆れたのかお登勢が口を挟む。
「銀時、いい加減諦めな。あかりが自分で考えて、自分で決めたんだ。それに、アンタよりよっぽど安定して稼いできそうだ、邪魔すんじゃないよ」
「ろくに稼ぎもないくせに」と最後に釘も刺され、散々言葉を尽くしていた銀時も稼ぎについて言われるとぐうの音も出ないのか。苦虫をつぶしたような顔で「けっ」と吐き捨て店を後にした。あかりも働く許しをもらうことに後押ししてくれたお登勢にお辞儀を一つして、銀時が閉めないまま出て行った戸から後を追う。
足音強くずんずんと階段を上がっていく銀時。その音を聞きながら視線を足元に下げたままゆっくり続くあかり。先に階段を昇り終えた銀時の足音が消えるも、戸を引く音は続かず「おい」という声があかりの頭上に落とされた。
「開けられねーんだけど。手ぇ塞がってて」
お前の布団で、と付け加えた銀時は顎で戸を指し開けるよう訴えた。早く開けなければと慌てて残りの段数を駆け上がると、肩を竦ませ戸に手をかけるあかり。そんなあかりの後ろで今度は「あのなぁ……」という声が漏れる。呆れた風なその声色に瞬間、緊張で戸にかけた手が動かなくなるあかり。
「こっち向け」
「……はい」
言われた通りに銀時と差し向かうあかり。ただし、視線は布団を抱える銀時の手元を見るようにして。
「言っとくけど、別に怒ってる訳じゃねーからな。まあ、屯所で働くのは嫌だし?アイツら漏れなくムカつくけど?」
それを怒っているとは言わないのだろうか、とは思ったものの余計なことは言わぬが吉だ。一先ずは本気で怒ったりなどはしていないという事実に安心するあかり。
「ババアも言ってたが、お前がちゃんと自分で考えて決めたことなら、もうこれ以上文句は言わねえ。でも……」
「でも?」
条件があるかのような終わり方が気になりあかりが視線を上へと移していくと、布団を少し横にずらした銀時としっかり目が合った。銀時の顔は怒っている訳でも、からかっている訳でもなく至って真剣なもので、それから目線を逸らすことが不実なように感じたあかりは逃げることができなくなった。そして、銀時が途切れた言葉を繋ぐ。
「何かあったら辞めさせる」
「なに、か……?」
何かって……、条件が余りにも漠然とし過ぎてやいません?と拍子抜けして見開いた目で銀時を見てしまうあかり。
「あの、ちなみに、どんな事態が起こったらその“何か”に抵触して辞めることになるんですか?」
「どんなって、そりゃあ……何かアレだよ。良くないことだよ」
「具体的には?」
「あー、……パンツ盗まれたり?」
「どんな想定ですか!」
真選組への印象も、もしもの事態の想定もどこか見当違いな銀時に、漸くあかりはこの人はただ心配してくれているだけなのだという結論に至った。そうなると、お登勢の所での反応も過保護なそれにしか思えなくなり、肩の力が抜けたせいか吹き出してしまう。
「銀さん、ありがとうございます」
「あ?」
「ちゃんと気をつけます。似ている所が多くても、私の居た世界とは違うんだって自覚を持って。それと、パンツも盗まれないように」
「そうだ。いくらガキでもパンツは大事だからな」
「ええ、そうですね。パンツは大事です」
子供扱いだとかセクハラだなんて野暮は何故か湧き上がって来ず、パンツの大事さを繰り返し笑い合う二人。すると、あかりが背にしていた戸がガラッと開いて、神楽が顔を出した。
「銀ちゃん、何してるアル。セクハラ?」
訝しげな顔を崩さず器用に酢昆布をしゃぶる神楽は、戸を開けてすぐの所に立っていたあかりの手を取ると屋内へ招き入れ、戸を閉めようと手をかける。
「か、神楽ちゃん、布団。私の布団!」
咄嗟に発せられたあかりの失礼な言葉を聞くと、神楽は銀時から布団一式を片手でぶんどってピシャッと戸を閉めた。
「ちょっとぉぉぉ、神楽ちゃんっ?あかりも『私の布団』じゃねーよ!銀さん、みんな大好き銀さんは!?」
格子戸をガタガタさせながらその向こうで必死に訴える銀時の名誉回復のため、彼に代わり弁明を図ることおよそ三分。漸く戸を開けてもらうことが叶った。メンタル、フィジカル共にぐったりしたようで玄関に崩れ落ちるように入ってきた銀時をあかりが慰めていると、奥の部屋へ去っていく神楽と入れ替わりに割烹着を着けた新八が現れた。
「さっきからうるさいと思ったら、何してるんですか銀さん。あ、あかりさんおかえりなさい」
「ただいま、新八くん」
そんな所で寝てないでさっさと中に入ってくださいと腕を引いて、うなだれる銀時を事務所兼居間へと連れて行く新八。あかりも新八とは反対の腕を取って銀時を支えた。支えたといってもあかりが腕を取ってみると、うなだれる素振りこそしているが銀時は殆ど自分で歩いておりさっきまでのやりとへの所謂、拗ねるという反応であることが分かった。これなら対して気にかける必要もないなと判断したあかりは、割烹着姿の新八に問いかけた。
「そういえば、新八くんは何故に割烹着姿?」
「ああ、これですか」
銀時をソファへ座らせながら新八が答えようとすると、台所の方から声が上がる。
「新八ぃーっ、鍋がめっちゃブクブクいって今にも何か吐き出しそうネ!」
きっと麺類か何かでも茹でていた途中なのだろうが、言うにこと欠いて嘔吐物的表現をする神楽に「神楽ちゃんがそれ言うか!」というツッコミを入れながら新八はバタバタと台所へ向かった。あかりも素早く後を追って台所に入るとシンクの上にあったコップに水を入れ、「ほらほら」と鍋を指さす神楽の横に立ち火を止めようとする新八に手渡した。
「新八くん、これ、びっくり水!」
「あ、はい!」
受け取った動作のまま手早くコップの中の水を鍋に注ぎ入れると、次の瞬間には縁から溢れ出しそうだった鍋の中身がみるみる七分目程までに落ち着いた。
「ありがとうございます、あかりさん。間一髪でした」
空になったコップを手に安堵して微笑む新八に、どういたしましてとあかりが返すと彼の後ろで目を輝かせている神楽が熱視線を送っていた。新八と二人で差し水について説明してあかりは残りの夕食の準備を手伝うことにした。日頃から担当しているからか最初は断った新八も、これからは自分も分担したいからとあかりに押され、照れ臭そうにしながらも並んで調理をした。
「新八くん手際良いねえ。お家でもやってるの?」
サクサクと流れを止めることなく調理と同時に片付けもしていく新八に感心してあかりが尋ねると、「それほどでもありませんよ」と先に謙遜を添えてから、家でも働く姉に代わって家事を幾らかこなしていることを話した。
「へえ、新八くんお姉さんがいるんだ!いいねえ、優しい?」
「姉上との二人家族なものですから、弟思いといえばそうかもしれませんが……大和撫子、みたいなタイプじゃあないかもしれませんね。近くで見ていると」
途中、姉を思い出してなのか困ったような笑みを浮かべながらも、声や表情から新八が姉を慕っていることが窺える。その後も、作業の手は止めることなくあかりは新八に他愛ない質問を投げ掛け、彼はそれらに人の好さを感じさせる丁寧さで答えてくれた。幼くして両親を亡くし、負債の残る剣術道場を継いだこと。お姉さんが夜の仕事で生活を支えていることなど。 侍が激減したご時世、剣術道場の再興が容易でないことはあかりでも想像に難くない。
「新八くん、私にもできることがあったら何でも言ってね。役に立てることは……あんまり多くないかもだけど」
自分と同い年の少年には過酷と思える現状に在りながらも、腐ることなく誠実な新八の姿にあかりは素直に尊敬の念を抱いて、気付いたらそんなことを口にしていた。
「ありがとうございます。でも、あかりさんこそ大変なんですから、僕にできることがあったら遠慮なく言ってくださいよ」
はにかみながら当然というように返してくれた新八に、今度はあかりの頬が緩む。
「新八くんってさ、何というか……すごいね」
「えっ?」
どちらかというと周りからは極々一般的な規格の人間と認識され地味と評される自分が、突然目の前に空から降って現れた少女にそんなこと言われたら驚くのも無理はない。分からないという顔であかりを見てみるも、彼女は「うん、うん」と自分の考えに納得する様子で頷いている。
その時のあかりの脳内はというと。違う星の人が共存する世界、文明。同じ歳としては自分より色々なことを経験し、背負っていて、周りには内外共に濃い人ばかり。それなのに、自分が元居た世界の価値観そのままに接していても全く問題ない普通さ。それはもう、普通という枠には収まらない普遍という存在であるとさえ言えるのでは……という風なことを考えて、新八にある種の超人的要素を見出していた。
「うん、すごいよ新八くんは」
「そ、そうかな」
何だかよく分からないが彼女の中では考えがあって、それで納得がいっているようなので特に言及する必要はないと、新八もまた納得することにした。何より、普段じゃ言われるようなこともない言葉をこれだけ重ねられたのだから、もうそれだけで良しとしようじゃないかという気持ちにもなってくる。それから、いつの間にか復活した銀時とすっかり腹ペコな神楽の催促に応え、定春も加えた四人と一匹で賑やかというより騒がしく食卓を囲んだ。
一頻り大騒ぎのピークを過ぎ団欒の一時を味わっていた頃、まだ新八と神楽には報告していなかったとあかりが仕事のことを話す。直後、悲鳴とも雄叫びとも取れるような大声をあげた二人によってあかりは再度驚かされることとなった。そして、スナックお登勢での銀時と同様に案ずる言葉から真選組に対する理不尽な偏見までを一通り聞いた後、銀時にしたのと同じようにあかりは説得の言葉を尽くした。
順を追って話を聞いたものの新八と神楽がそれはもう保護者のように心配するものだから、そんなに頼り無いかと参ってしまう気持ちと、それと同じくらい心配してもらっている状況に、存在を肯定してもらっているかのような嬉しさがこみ上げあかりは終始頬の筋肉が緩みっぱなしだった。
「あかり、危険なことはしないって約束するネ!」
「うん!」
「セクハラも全部報告!」
「……ん?うん!」
「ちょっとでも、ちょーっとでも不愉快なことがあっても報告!」
「ちょーっとでも?」
「どうせ連中、叩けばいくらでも埃がでるから乗り込む理由はなんでもいいアル」
「え、神楽ちゃん、今、何か恐ろしいことを……」
どこまでが冗談でどこからが本気なのか分からないやり取りを経て、何とか神楽にも認めてもらえたあかり。その様子を見届けると新八が、そろそろ、と言って席を立つ。「おう」とか「じゃあな」という言葉だけで送り出す銀時と神楽に代わり玄関まで見送るあかり。
「それじゃあ、僕はこれで。おやすみなさい、あかりさん」
「うん、おやすみなさい、新八くん。また明日ね」
会釈をひとつして階段を降りていく新八の後ろ姿を見ながら「普通の感性を持つ者同士、頑張ろうね…!」とあかりは心の中で語りかけるのだった。
*****
その夜。風呂から上がったあかりが和室の襖を開けると、銀時の布団とあかりの布団が部屋の端と端で不自然なほど離されていた。
「いや、いやいや、別に?お前みたいなお子様に、銀さん緊張なんてしてないし?」
と上擦った声で布団を整える銀時。気を遣っているのだろうけどその反応が面白くて、あかりは「はいはい」と言って床の間スレスレに敷かれた布団を真ん中の方へ寄せた。それを受け銀時も「気にしてないし?」と言いながら窓スレスレに敷かれた布団を引いて、離れ過ぎず近過ぎない距離を確かめようと振り返る。すると、そこにはものの数十秒の間に寝入ってしまったあかりの姿があった。
「……くっそ、のび太くんかよ」
銀時は一人そうぼやいて溜め息を吐くとナツメ球を灯したのだった。
終
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