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紅き魔女と呪われし男


「いただきます!」


パン屋の店主との話を終えた母がイスに座るのを待ち、リリアは夕食を待ちきれない様子で元気な挨拶と共に食事を開始した。


「ゆっくり食べないと喉を詰まらせるわよ」


熱いと言いながらも急いでシチューを口に運ぶリリアに母が注意すると、だって美味しいからと満面の笑みで答えるリリア。注意しながらも、美味しそうに食べるリリアを見て穏やかな笑みを浮かべる母と祖母。


「ねぇお母さん、パン屋のおじさんと何のお話してたの?」


何の気なしにそう質問すると、母は一瞬顔を歪める。しかしそれには気がつかず答えを待っていると、

「えっと……今度パンの特売セールがあるって教えに来てくれたのよ」


少しの間を置いてから母はそう答えた。パンの特売と聞き目を輝かせるリリアとは裏腹に、苦い顔をする母。


「さぁリリちゃん、早く食べないと美味しいシチューが冷めてしまうよ」


「そうだった!美味しいシチューが冷めちゃう!!」


祖母が助け船を出し、再度食事に集中し始める。少ししてしまえば先程の話題など気にならなかったかのように違う話に花を咲かせる。

食事を終えて眠そうにうとうとし始めるリリアは、歯を磨いてベッドに行くよう声を掛けられ、重い瞼を擦りながら洗面所へと向かった。


「……お母様、リリアが眠った後少しお時間宜しいですか?先程の話をしなくては。」

「ええ、大丈夫よ。」


リリアが部屋を出たことを確認した母は洗い物をしながら祖母に声を掛けた後、リリアの居る寝室に向かった。


「……お母さん、来るのが遅くて寝ちゃうとこだったよ。眠る前にあのお話しして!」


既にベッドに潜っていたリリアは、いつものおとぎ話が聞きたいと言いベッドに深く潜り直した。


「ええ、いいわよ。ーー昔々、ある森に紅いキレイな瞳をした可愛い女の子が住んでいました。その女の子は、紅い瞳が怖いと街の人々から嫌われていました。けれどその子は嫌われている事を気にせず、お花を摘み果実を食べて毎日楽しく動物達と暮らしていました。楽しく暮らしていたある日、女の子のおうちを訪ねてくる人がいました。………あら、今日はいつもより眠かったのかしら。おやすみなさい、リリア」


話が始まってすぐに健やかな寝息をたて始めるリリア。そんな愛しい娘の額にキスをして、母はその場を離れた。
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