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──な部屋

「つまんないの。あと1時間だったのに」
「仕方ないでしょう、ルールはルールなんですから」
「そうね…そこを破っちゃ面白くないわ」
盗聴器との接続を次々切り、別荘を引き払う準備を始めながら美女がぼやいている。
俺はそんな美女の行いについて散々ぼやきたい気持ちなのだが、まあそれは置いておいて。
「…何をする気だったんですか?」
「室温を0度から、もっと下まで下げるのよ。彼らは必要以上の服は持ってないから…人間の一番効率のいい温め方って知ってる?」
「……裸で、抱き合う…」
「その通り」
語尾にはハートマークが付きそうだ。吐き気がする。
ほとぼりが冷めたら、真っ先に先輩に土下座しに行かなくては。

「…今回は働き易かったですね」
「そうね。邪魔者がまとめて別のことに一生懸命で…面白かったわ、アマガクレがもうちょっと粘れば彼の指輪も狙えたかしら」
「…それは分からないですけど…」
「ふふ、欲張りすぎず実行可能な計画を練るのが大事だものね…今回は上出来。もう一つ、反省も大事なんだけど、マコくん、わかる?」
「もちろん」
「じゃあ、彼らの会話をまとめておいて。面白く書いてね、楽しく読み返したいの」

続いた台詞に思わず絶句した。
先輩と気の毒な彼女の盗み聞きした会話を、記録に残せと。

「聞こえなかったところは、適当に補完して良いからね。よろしく♡」
「…分かりました…」

それでも俺にはこの言葉しか残されていなかった。
だから今、録音を聴きながら必死に打っている。


ここまで読んでいるなら分かると思うけど、このページは彼女には公開していない、懺悔…のような隠しページだ。
僕なりに聞こえた箇所はなるべく忠実に、聞こえなかった箇所は前後と繋がるように必死に書いたけど、辻褄がおかしいところがあったら許してほしい。
本当は危ないところはぼかして書きたかったんだけど、彼女は録音のデータを持っていたからそういうわけにはいかなかったのが残念だ。
これでも、聞こえないところは結構平易になるよう頑張った。
実は最後のシーン、空白が1時間くらいあって、あれだけのやり取りじゃどう考えても済まないんだけど…それは彼女も知ってても、どうにもできないだろうし。
俺だって書きようもないから切り上げさせてもらったのは、承知しておいてほしい。

…誰に向けて書いてるんだか。
当たり前ながら、このページや、話自体を誰かが読むってこと自体あり得ないんだけど。
先輩と彼女、どうするんだろうな、この先。
まあ、それこそ僕には関係ないけどね。
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