一睡茶
「色くん、おはよ〜…」
「真夜中だ、姉さん…寝てくれ」
「もう充分寝たわよ…色くんが連れて帰ってくれたのね?この部屋で寝るの久しぶり」
「…言われてみればそうかもな」
「ね、こっち来て同じベッドで寝ましょうよ」
「何をされるか分からないから却下だ。隣の部屋には涼宮もいるしな」
「ひどーい…ま、良いけど…夢で散々遊んだし」
「…何の夢を…?」
「色くんと可愛い男の子とステキな女の子をたくさん侍らせる夢」
「…………」
「その目やめてよ、嘘よ」
「またしょうもない嘘を…」
「実はあまり覚えてないのよね。良い夢だったとは思うんだけど」
「…見れたのか?思い通りの夢」
「うーん、思い通りっていうか…」
「…何だ?」
「…よく覚えてないわ」
「そうか」
「…もうひと眠りしたら、続きが見られるかしら」
「見られるといいな」
「そうね、でもどっちでも良いかな。良い夢は、目が覚めた時辛いでしょ」
「…ココアでも作るか」
「いいわね、それ。ありがと」
***
「あらら」
棒読みで呟く。
4階のドアの前で倒れているのは二人。
下敷きにされているのは敬慈なのに、何故かうなされているのは左崎さんの方だ。
(このお茶、大丈夫なの?)
お茶を飲んですぐ毛布を届けに行って、戻ってこなかった。
これほど強い効果なら、ほぼ睡眠薬だ。
(…っていうか、明日までこのままね、これ)
私は涼宮ではないので、どちらも到底運べそうにない。
しばらく悩んで、とりあえずそっと毛布をかけて去ることにした。