犬系王子と尾行演習
「…敬慈?」
エレクトリカルパレードが始まったと思ったら、やっと別れた連れを見つけた。
「左崎さんたちは見つけたの?」
「ああ、一応」
ぶらぶら、というか心なしかふらふら歩いてきた彼は、そのままパレードを素通りして歩き続ける。
「…見ないで帰るの?というか、2人はどうだったの」
「ずっと仲良く話してたよ。やっぱり2人でお似合いなんじゃないか?」
「…敬慈…何?」
「別に。大したことじゃない」
こちらを向かない彼はいつも通りのつもりなんだろうが明らかに挙動がおかしい。
原因は多分あの2人にあるはず、だけど。
(…面倒くさそう。やめとこ)
そこまで深くつっこむ義理はない。
彼の後ろを黙って歩くことにした。
***
「なんか尾行されてましたけど、普通にデートして普通に帰ってきました」
「お前…彼女に手を出すのはやめとけと…」
「デートせずにどうやって情報抜くっていうんですか!…まあ無理でしたけど」
「無理だったのか…」
「《どういう経緯で彼女が探偵社にいるのか》ですよね?なんだか、話したくなさそうだったので…そういう時に無理に聞くと、かえって難易度が高くなるんですよ?」
「知ってるよ。何となく分かったこととか、あるか?」
「愛里さんが来たくてきたわけじゃないのは確かみたいですね。辞められるなら辞めたいって話してましたし…その話をしてる時に、追いついた所長さんが一部始終聞いちゃってて、あちゃーって感じでしたけど」
「笑いながら言うなよ…」
「ライバルが減ったので僕的には万々歳です」
「…仕事なのは聞き出すまでだからな?」
「分かってますって。でもそんな情報、何の役に立つんでしょ…」
「…それは、説明できなくて悪いが」
「いいですよ。マスターの命は絶対!です!」