小さな恋の物語
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私が泣いていると。
いつのまにか、決まって隣にいるピエロがいる。
ぽつ、ぽつ、と。
四角くかたどられた外の景色が泣いている。
その真正面に座っている私もまた、はらはらと泣いていた。
世界が、いやだった。
戦争だらけのこの世界が。
昨日話していた人の名前を、今朝思い出せなかった。
楽しかった思い出が確かに記憶に残っている。
一緒に遊んだことを覚えている。
辛い試験を前にして支えあったことを覚えている。
おばあちゃんになっても友達だよ、と笑いあったことを覚えている。
なのに、どうして?
誰と一緒にいたのかだけが、どうしてもどうしても思い出せない。
また心に穴が空く。
怖かった。
クラスメイト達は、明日世界や仲間の記憶から消えることを厭わずに粛々と出撃していく。
私には止めることができなくて。
消えにいかないで、とたった一言が言えなくて。
それが、情けなかった。
私だけ。一人だけ。
そんなことで涙を流している。
そんな自分が、嫌いだった。
「私…もういっそひとりきりでいたいよ…」
そんな呟きが唇からこぼれた。
こんなにひとり切ない思いをするくらいなら、はじめから誰とも一緒じゃない方がいい。
雨が強くなってきた。
私と外の世界を隔てているガラスを、雨粒が壊さんばかりに打ちつける。
怖い。
私を外へ連れ出さないで?
お願い、助けて…この残酷な世界から。
「助けて…」
誰にも拾われない音は虚空に吸い込まれて、
「いいよ」
「え…ジャック?」
吸い込まれるその前に、彼に捕まった。
「ナマエを助けにきたよ」
私が泣いていると。
いつのまにか決まって隣にいるピエロが、今日もまた私の隣で笑っていた。
「…なんでここに?」
あぁ、ダメだ。
「うんっとね、まず勝手に部屋に入っちゃってごめんね」
きみだって同じ残酷な世界にいるのに。
「それと、気の利いたこと言えなくってごめん」
きみだって辛い思いをいっぱいいっぱいしてるのに。
「だけど、ナマエがきっと泣いてるだろうなって思ったら…いてもたってもいられなくなってさぁ」
どうしてそんなに笑っているの?
どうしてそんなに強いの?
どうして何回も、
私を助けにきてくれるの?
涙があとからあとからでてきて止まらない。
きみはそれから、私をぎゅっと抱きしめた。
辛かったねぇ、と優しい言葉が鼓膜を揺らす。
私の疑問を溶かすように。私の涙を受け止めるように。
「ねぇ、ナマエ…僕、きみのことがずっと好きだったんだぁ」
きみの声は少し照れくさそうだった。
「だからさ、僕はきみのことを守りたいんだ」
見上げると。
涙でぼやけた視界の先で、きみの笑顔が私を見つめていた。
その身にまとう極彩色のせいで、きみの悲しみは私には見えない。
そのことを分かっていながらピエロのように笑うきみは、やっぱりズルいと思う。
思うけれども、私の救世主は、
極彩色ピエロ
(あなたのようだ)
いつのまにか、決まって隣にいるピエロがいる。
ぽつ、ぽつ、と。
四角くかたどられた外の景色が泣いている。
その真正面に座っている私もまた、はらはらと泣いていた。
世界が、いやだった。
戦争だらけのこの世界が。
昨日話していた人の名前を、今朝思い出せなかった。
楽しかった思い出が確かに記憶に残っている。
一緒に遊んだことを覚えている。
辛い試験を前にして支えあったことを覚えている。
おばあちゃんになっても友達だよ、と笑いあったことを覚えている。
なのに、どうして?
誰と一緒にいたのかだけが、どうしてもどうしても思い出せない。
また心に穴が空く。
怖かった。
クラスメイト達は、明日世界や仲間の記憶から消えることを厭わずに粛々と出撃していく。
私には止めることができなくて。
消えにいかないで、とたった一言が言えなくて。
それが、情けなかった。
私だけ。一人だけ。
そんなことで涙を流している。
そんな自分が、嫌いだった。
「私…もういっそひとりきりでいたいよ…」
そんな呟きが唇からこぼれた。
こんなにひとり切ない思いをするくらいなら、はじめから誰とも一緒じゃない方がいい。
雨が強くなってきた。
私と外の世界を隔てているガラスを、雨粒が壊さんばかりに打ちつける。
怖い。
私を外へ連れ出さないで?
お願い、助けて…この残酷な世界から。
「助けて…」
誰にも拾われない音は虚空に吸い込まれて、
「いいよ」
「え…ジャック?」
吸い込まれるその前に、彼に捕まった。
「ナマエを助けにきたよ」
私が泣いていると。
いつのまにか決まって隣にいるピエロが、今日もまた私の隣で笑っていた。
「…なんでここに?」
あぁ、ダメだ。
「うんっとね、まず勝手に部屋に入っちゃってごめんね」
きみだって同じ残酷な世界にいるのに。
「それと、気の利いたこと言えなくってごめん」
きみだって辛い思いをいっぱいいっぱいしてるのに。
「だけど、ナマエがきっと泣いてるだろうなって思ったら…いてもたってもいられなくなってさぁ」
どうしてそんなに笑っているの?
どうしてそんなに強いの?
どうして何回も、
私を助けにきてくれるの?
涙があとからあとからでてきて止まらない。
きみはそれから、私をぎゅっと抱きしめた。
辛かったねぇ、と優しい言葉が鼓膜を揺らす。
私の疑問を溶かすように。私の涙を受け止めるように。
「ねぇ、ナマエ…僕、きみのことがずっと好きだったんだぁ」
きみの声は少し照れくさそうだった。
「だからさ、僕はきみのことを守りたいんだ」
見上げると。
涙でぼやけた視界の先で、きみの笑顔が私を見つめていた。
その身にまとう極彩色のせいで、きみの悲しみは私には見えない。
そのことを分かっていながらピエロのように笑うきみは、やっぱりズルいと思う。
思うけれども、私の救世主は、
極彩色ピエロ
(あなたのようだ)
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