小さな恋の物語
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どこまでも澄み渡る青空が窓から顔をのぞかせる昼下がり。
私はクリスタリウムへと足を運んでいた。
こんなに天気のいい日でも、きっと君はそこにいるから。
巨大な扉をくぐる。
たくさんの本が詰め込まれた、私の背を優に超す棚の間を少し駆け足で抜けて。
階段を一弾飛ばしで降りながら下の階にある自習室へと向かう。
司書に見つかったらどやされる、なんて考えがこめかみの内側をよぎり、はた、と辺りを見回した。…良かった、セーフみたいだ。
テスト前でないからか、いくぶん候補生の数は少なく感じた。
紙とインクの香りが立ち込める空間を少し奥へと行くと。
やっぱりここにいた。
いつもの席に、見慣れた金髪の彼の姿をみつけた。
彼は難しい顔でなにやら分厚い本を読んでいた。
「…トレイ」
「ん?」
すっと本から離された彼の目線が私の目線とぶつかり合う。
「あ、ナマエでしたか」
少しだけ驚いたあと、微笑みながら彼は言った。
そして、ぱたん、と開いていた本を閉じる。
古ぼけたその本の表紙にはなんとなくタイトルの跡のようなものがあったが、かすれていて読めなかった。
「何読んでたの?…かなり古くて分厚いね」
「これですか?まぁ一言で言えば哲学書ですね」
「哲学書?」
「えぇ。昔の人の人生観や世界観が書いてある本です。もっと言うと…幸せになる方法とか、どう生きたら正しいのか、などが書いてあります」
なんだかとても難しい本を読んでいるようだ。
私がむむむ、と小首を傾げている様子に小さく笑みを落としたあと、彼は哲学書を本棚へと返した。
「へぇ…。あ、読書続けてて?私、隣に座っているから」
一緒に出かけられないのは残念だけど、トレイの読書の邪魔をしてはいけない。
そう思い、椅子に腰掛ける。椅子はふかふかだった。
なんといっても彼は本の虫なのだ。
暇さえあれば読書をしているし、その甲斐あって知識量も半端ではない。
本から得た知識を披露し出すと止まらないところは彼の悪癖だけれど、話題には事欠かない。そんなところも好きだった。
椅子の座り心地の良さに思わず感動している私を見て、彼は口元に手を当て微笑んだ。
そして、私のそばまで歩いてくると、ぽんっと右手を私の頭の上に置いた。
そのままくしゃくしゃと頭を撫でられる。大きな手から優しさが伝わってくるようだった。
なあに、と隣の彼を見上げる。
「難しい哲学書を読むより、大好きな人の1秒の笑顔を見るだけで私は幸せになれるのです。ナマエ…あなたが笑ってくれたら」
そう言って彼は右手で私の左手を握って、どこに行きますか?、と私に優しく問いかけた。
思いがけないその言葉に顔が熱くなる。
それをなんとなく悟られたくなくて。
「…トレイがそんなこと言ってくれるなんてびっくり」
ぼそぼそと俯きながら口にしたら。
「ナマエにしか言いませんよ」
と言われてしまい耳まで熱くなった。
なんだかいたたまれなくなった私は勢いよく立ち上がり、黙って彼の手を引き出口へと歩き出す。
「……わかって言ってるでしょ」
その途中でポツリと漏らした一言は、
「えぇ、もちろん」
ばっちり彼に拾われて笑顔で返された。
I with You
(幸せの探し方)
私はクリスタリウムへと足を運んでいた。
こんなに天気のいい日でも、きっと君はそこにいるから。
巨大な扉をくぐる。
たくさんの本が詰め込まれた、私の背を優に超す棚の間を少し駆け足で抜けて。
階段を一弾飛ばしで降りながら下の階にある自習室へと向かう。
司書に見つかったらどやされる、なんて考えがこめかみの内側をよぎり、はた、と辺りを見回した。…良かった、セーフみたいだ。
テスト前でないからか、いくぶん候補生の数は少なく感じた。
紙とインクの香りが立ち込める空間を少し奥へと行くと。
やっぱりここにいた。
いつもの席に、見慣れた金髪の彼の姿をみつけた。
彼は難しい顔でなにやら分厚い本を読んでいた。
「…トレイ」
「ん?」
すっと本から離された彼の目線が私の目線とぶつかり合う。
「あ、ナマエでしたか」
少しだけ驚いたあと、微笑みながら彼は言った。
そして、ぱたん、と開いていた本を閉じる。
古ぼけたその本の表紙にはなんとなくタイトルの跡のようなものがあったが、かすれていて読めなかった。
「何読んでたの?…かなり古くて分厚いね」
「これですか?まぁ一言で言えば哲学書ですね」
「哲学書?」
「えぇ。昔の人の人生観や世界観が書いてある本です。もっと言うと…幸せになる方法とか、どう生きたら正しいのか、などが書いてあります」
なんだかとても難しい本を読んでいるようだ。
私がむむむ、と小首を傾げている様子に小さく笑みを落としたあと、彼は哲学書を本棚へと返した。
「へぇ…。あ、読書続けてて?私、隣に座っているから」
一緒に出かけられないのは残念だけど、トレイの読書の邪魔をしてはいけない。
そう思い、椅子に腰掛ける。椅子はふかふかだった。
なんといっても彼は本の虫なのだ。
暇さえあれば読書をしているし、その甲斐あって知識量も半端ではない。
本から得た知識を披露し出すと止まらないところは彼の悪癖だけれど、話題には事欠かない。そんなところも好きだった。
椅子の座り心地の良さに思わず感動している私を見て、彼は口元に手を当て微笑んだ。
そして、私のそばまで歩いてくると、ぽんっと右手を私の頭の上に置いた。
そのままくしゃくしゃと頭を撫でられる。大きな手から優しさが伝わってくるようだった。
なあに、と隣の彼を見上げる。
「難しい哲学書を読むより、大好きな人の1秒の笑顔を見るだけで私は幸せになれるのです。ナマエ…あなたが笑ってくれたら」
そう言って彼は右手で私の左手を握って、どこに行きますか?、と私に優しく問いかけた。
思いがけないその言葉に顔が熱くなる。
それをなんとなく悟られたくなくて。
「…トレイがそんなこと言ってくれるなんてびっくり」
ぼそぼそと俯きながら口にしたら。
「ナマエにしか言いませんよ」
と言われてしまい耳まで熱くなった。
なんだかいたたまれなくなった私は勢いよく立ち上がり、黙って彼の手を引き出口へと歩き出す。
「……わかって言ってるでしょ」
その途中でポツリと漏らした一言は、
「えぇ、もちろん」
ばっちり彼に拾われて笑顔で返された。
I with You
(幸せの探し方)
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