short
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「クジュラさん、チョコ食べますか?」
ベッドで隣に腰掛けるクジュラさんに問いかけながら、街で買ってきた少しだけ高級なチョコレートの箱の蓋を開ける。薄い四角形をしていて、整然と並んだ色とりどりのそれをひとつ取り、少し齧る。ナッツのペーストが入っていて、香ばしい。
「なら、ひとつ貰おうか」
「はーい、じゃ、ちょっと失礼します」
ふた口目を咥えてそのままクジュラさんの口元へ押し付けた。彼は視線を泳がせて、呟く。
「な、なんの真似だ?」
「たへてくらはい、はやく、とけしゃいまふ」
うまく発音できないけれど言わんとする事は理解してくれた様で、律儀にチョコレートだけを唇で受け取った彼に、そのまま口付ける。
「だから、なんの真似だ」
「えへへ。今日、街へ行った時に教えてもらったんですけど、最近は恋人同士でチョコを口移しにするのが流行ってるんですって。チョコみたいに甘い時を過ごしましょう、とかなんとか」
「とんでもなく安直な流行だな。というか、誰に教わっているんだ…いつもの商会の店主か…?」
「今回は冒険者酒場のママさんが情報源ですよ。…ふふ、私にもください」
今度はクジュラさんにひとつ咥えて貰って、私の方からそれを食べた。
「…親鳥の気分なのだが?」
「え〜?」
クジュラさんがあんまり嬉しくなさそうなので、ちょっと残念である。
「そんなに悲しそうな顔をするな。チョコレート自体は、なかなか美味いと思うぞ」
「むぅ……。チョコも美味しいですけど…私はキスできて嬉しいのに、クジュラさんはそんなにって感じでつまんないです」
「ああ。そう言う意味か」
クジュラさんは数回瞬いて、ふっと笑うと、キスをしてくれた。
「チョコレートが無くともいくらでもする…というのでは、駄目なのか?」
「それも嬉しいですけど…甘いのが、良いというか…新鮮で気持ちいいと言いますか…あの…」
私が話しているというのに、お構いなしで何度も触れるだけのキスをしてくれるので、良い加減焦れてきた。
「もうっ、わかっててしてますよね!」
クジュラさんは今度は悪戯っぽく笑うと、チョコレートをひとつ取り出して自分で食べ、そのまま私に深く口付けた。
押し込まれたチョコレートを、2人で舐め合って溶かす。彼が選んだそれは、中からとろりとしたお酒が流れ出てきて、喉を鳴らして飲み込むと体が熱くなる。
そのままベッドへ押し倒され、小さく悲鳴を上げる。箱のチョコレートがバラバラになっちゃう、と若干焦って手元を見るといつの間にか蓋がされている。
「希羽」
クジュラさんが私の耳元に唇を寄せ、名前を呼ぶ。
吐息も、降り掛かる彼の長い髪もくすぐったくて、手で首辺りを庇う。けれど、すぐに解かれた。クジュラさんは、恥ずかしがる私の耳朶にキスをしながら、また名前を呼んだ。
「希羽、愛してる」
今度はストレートな愛の言葉付きだ。感極まって、ぎゅ、と抱きついて、同じように耳元で囁いた。
「私も、愛してます」
クジュラさんが小さく息を呑んで、少し体を離した。彼の青い瞳に、ぼやけた私が映っている。離れないでと懇願する気持ちで彼の頬を撫でる。
「クジュラさん、キスは?いくらでもしてくれるんでしょ?」
「…ああ。いくらでも」
クジュラさんはいつもより糖度の高い笑顔を浮かべると、強く抱き返して、今度はおでこにキスをくれた。
チョコレートをあげるから
あなたの手でリボンを解いて
あなたの熱い瞳で私を溶かして
あなたの甘い声に酔いしれさせて
END/250214
1/2ページ