02.姫と騎士と姫
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クジュラさんサイド
希羽と初めて会ったのはどこでだったか。
他の初心者と同様に煌めきを宿した瞳で俺を見つめていた事は覚えている。
しかし、他の有象無象の者とは違って、どれだけ迷宮を探索しても、敵対している今でさえも俺を見つめる双眸は相変わらず美しく輝いていた。
「生きて!」
彼女が魔力を込めて言葉を紡ぐ。俺に庇護の号令が掛かった。
敵に塩を送るなんて、さすが、噂通りの人間性だ。
希羽の瞳の煌めきが涙で揺らぐのを確かめて、俺は意識を手放した。
いつだったか。いつもの様に海市蜃楼の情報を集めている時に、商会の店主に言われたことがあった。
「そういえばお主は希羽のことをどう思っとるんじゃ?」
「どう?そこらの冒険者よりは気概が有ると思っている」
「そうじゃのうて、こう…女としてどう見ておる」
「女として?どういう意味だ?」
「鈍いやつじゃの。希羽はお前さんの事が恋愛対象、異性として、好きなんだとよ」
そう言われても何と答えれば良いのかわからなかったし、そもそもそういった事を本人に教える様な人間には何を言っても面白がられるだけだろうし、確か何も言わずに店を出た気がする。
いつか謀略に使えるかも知れないなどと考えたが、希羽は無条件に俺の甘言に乗る様な人間では無かった。
海市蜃楼が深都側に付いたと聞いた時は耳を疑った。
所詮は外の人間が、敵王に誘惑されてしまったのだと残念に思った。なのに、迷宮内で対峙した彼女たちは前と変わらないあまりにも毒気の無い瞳をしており、自らの意思であちらに付いたのだと俄かに理解できた。
どうして、姫様でも海都でも俺でもなく、あちらを選んだのだろうか。迷宮で出会う度に邪魔し合い、互いを出し抜き合う。
俺たちに付いていれば、こんな面倒なことにはならなかったのに、それがわからないほど馬鹿だったとは。
しかし突っかかってくる海市蜃楼の、特に希羽はやたらと目を輝かせて嬉しそうだった。
裏切ったくせに、どうしてそんな何の後ろめたさも無い様な目で俺を見れる。理由が知りたくて、海市蜃楼に詳しそうな人物に聞き込みをするのがもはや日課になっていた。
「ふーむ、気持ちを知った途端、希羽が気になるか。そうかお主、意外と愛い奴なのだな」
「お前と話していると頭が痛くなるな」
「いやいや。だってそこまで気になるなんて事あるかの?絶対恋じゃ」
「違う。もういい」
「待て待て、とっておきの情報があるぞ」
「…なんだ?」
「ふふ、耳を貸せ…希羽の防具のサイズじゃが」
「帰る」
「ちょちょちょ、男なら気にせい!!おーい…聞かずに帰るか!?なんちゅう奴じゃ」
「ああ、海市蜃楼の皆さんですか?第4層の遺跡の仕掛けが面白いとか言って目を輝かせてましたよ。僕にもお土産に、綺麗な鉱石とかくれて…ほらこんな。文通相手に贈ると良いって仰って…喜んでくれるかなぁ」
「そうか。他には、例えば元老院の事や深都について何か言っていなかったか?」
「そう言えば、リーダーの希羽さんが、4層ではクジュラさんに会えないって嘆いてましたよ」
「…そうか」
「あ、ごめんなさい今の言っちゃダメだって。でも大体いつもクジュラさんか迷宮の話しかなさりません!」
「なるほどな…わかった。話してくれてありがとう」
「海市蜃楼にはいつも助けられているよ。この間は遂に北の海までの航路を開いてくれてね。こちらが散々手を焼いていた海賊なんかもあっという間に制圧して、ようやく安心して航海出来る様になって来たんだよ」
「さすがに強いな。海に出る時もフル装備で行っているのか?」
「いやぁ、道なき海路を進んでいるからなぁ。街で見かけるよりは軽装の少数精鋭で行っているね。それでも武器くらいは携えているから、簡単にはやられないだろうがね」
「そういうものか。ふむ、うちの兵達の参考にと思ったがなかなか難しそうだな」
「ふふ…そう言えばクジュラくん。希羽さんが君を航海に連れて行きたいと言っていたよ」
「俺を?」
「どうにも強すぎる魔物が居て君を頼りたいとか、休暇が無さそうだから無理にでも連れ出して綺麗な景色を見せてあげたいとかね」
「そこまで仲が良いわけではないのだが?」
「そうだろうね。だからいつも、もう少し段階を踏んでから誘う様にしなさいとは言っているんだけれど。今度、逆に君の方から誘ってみてはくれないかい?彼女、良い子だよ」
「…考えてはおく」
希羽と初めて会ったのはどこでだったか。
他の初心者と同様に煌めきを宿した瞳で俺を見つめていた事は覚えている。
しかし、他の有象無象の者とは違って、どれだけ迷宮を探索しても、敵対している今でさえも俺を見つめる双眸は相変わらず美しく輝いていた。
「生きて!」
彼女が魔力を込めて言葉を紡ぐ。俺に庇護の号令が掛かった。
敵に塩を送るなんて、さすが、噂通りの人間性だ。
希羽の瞳の煌めきが涙で揺らぐのを確かめて、俺は意識を手放した。
いつだったか。いつもの様に海市蜃楼の情報を集めている時に、商会の店主に言われたことがあった。
「そういえばお主は希羽のことをどう思っとるんじゃ?」
「どう?そこらの冒険者よりは気概が有ると思っている」
「そうじゃのうて、こう…女としてどう見ておる」
「女として?どういう意味だ?」
「鈍いやつじゃの。希羽はお前さんの事が恋愛対象、異性として、好きなんだとよ」
そう言われても何と答えれば良いのかわからなかったし、そもそもそういった事を本人に教える様な人間には何を言っても面白がられるだけだろうし、確か何も言わずに店を出た気がする。
いつか謀略に使えるかも知れないなどと考えたが、希羽は無条件に俺の甘言に乗る様な人間では無かった。
海市蜃楼が深都側に付いたと聞いた時は耳を疑った。
所詮は外の人間が、敵王に誘惑されてしまったのだと残念に思った。なのに、迷宮内で対峙した彼女たちは前と変わらないあまりにも毒気の無い瞳をしており、自らの意思であちらに付いたのだと俄かに理解できた。
どうして、姫様でも海都でも俺でもなく、あちらを選んだのだろうか。迷宮で出会う度に邪魔し合い、互いを出し抜き合う。
俺たちに付いていれば、こんな面倒なことにはならなかったのに、それがわからないほど馬鹿だったとは。
しかし突っかかってくる海市蜃楼の、特に希羽はやたらと目を輝かせて嬉しそうだった。
裏切ったくせに、どうしてそんな何の後ろめたさも無い様な目で俺を見れる。理由が知りたくて、海市蜃楼に詳しそうな人物に聞き込みをするのがもはや日課になっていた。
「ふーむ、気持ちを知った途端、希羽が気になるか。そうかお主、意外と愛い奴なのだな」
「お前と話していると頭が痛くなるな」
「いやいや。だってそこまで気になるなんて事あるかの?絶対恋じゃ」
「違う。もういい」
「待て待て、とっておきの情報があるぞ」
「…なんだ?」
「ふふ、耳を貸せ…希羽の防具のサイズじゃが」
「帰る」
「ちょちょちょ、男なら気にせい!!おーい…聞かずに帰るか!?なんちゅう奴じゃ」
「ああ、海市蜃楼の皆さんですか?第4層の遺跡の仕掛けが面白いとか言って目を輝かせてましたよ。僕にもお土産に、綺麗な鉱石とかくれて…ほらこんな。文通相手に贈ると良いって仰って…喜んでくれるかなぁ」
「そうか。他には、例えば元老院の事や深都について何か言っていなかったか?」
「そう言えば、リーダーの希羽さんが、4層ではクジュラさんに会えないって嘆いてましたよ」
「…そうか」
「あ、ごめんなさい今の言っちゃダメだって。でも大体いつもクジュラさんか迷宮の話しかなさりません!」
「なるほどな…わかった。話してくれてありがとう」
「海市蜃楼にはいつも助けられているよ。この間は遂に北の海までの航路を開いてくれてね。こちらが散々手を焼いていた海賊なんかもあっという間に制圧して、ようやく安心して航海出来る様になって来たんだよ」
「さすがに強いな。海に出る時もフル装備で行っているのか?」
「いやぁ、道なき海路を進んでいるからなぁ。街で見かけるよりは軽装の少数精鋭で行っているね。それでも武器くらいは携えているから、簡単にはやられないだろうがね」
「そういうものか。ふむ、うちの兵達の参考にと思ったがなかなか難しそうだな」
「ふふ…そう言えばクジュラくん。希羽さんが君を航海に連れて行きたいと言っていたよ」
「俺を?」
「どうにも強すぎる魔物が居て君を頼りたいとか、休暇が無さそうだから無理にでも連れ出して綺麗な景色を見せてあげたいとかね」
「そこまで仲が良いわけではないのだが?」
「そうだろうね。だからいつも、もう少し段階を踏んでから誘う様にしなさいとは言っているんだけれど。今度、逆に君の方から誘ってみてはくれないかい?彼女、良い子だよ」
「…考えてはおく」