10.視線の先
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クジュラさんサイド
「えらいこっちゃ」
アンドリューが濡れた髪をかきあげながらそうごちる。水の中を落ちてしまった為、全身がずぶ濡れになってしまった。
辺りを見回すと、迷宮の中にしては広い空間が広がっていた。上を見ると、植物の様な触手の様な何かが絡み合って作られた天井にはぽっかり穴が開いている。上階には水が溜まっていて、俺たちが落ちる時には一緒に流れ落ちていたはずだが、今はピタリととどまっていた。
穴の周辺には希羽たち3人の姿は見えず、おそらく俺たちが居るこの下階と繋がっている階段の上で待機しているのであろう。
「アンドリュー、あちらを見てみろ」
出来るだけ静かに一方を指差す。先には、羊の様な大型のモンスターがのろのろとした動きで周囲を警戒している姿が見えた。幸いにもまだこちらには気付いていないようだが、のんびりはしていられなさそうだ。アンドリューは目を剥いて、小声で俺に問うた。
「クジュラさん、糸持ってるか?」
「無い」
「やばいな…何とか撒きながら、上の階に戻らなきゃな」
「道は何となく覚えている」
上で希羽の地図を見ていた感じと、落ちた位置、上り階段の位置を思い出して、西南へ向かえば良いだろうと当たりを付ける。方位磁針を確認すると、ここでは使える様だった。
「行くぞ」
「オーケー」
慎重に音を立てない様に、南下する。我々の落下音にも気付いていないのだから、もしかするとあいつはそこまで耳が良くないのかもしれない。
南の壁際まで進む。すると、さっきまで明後日の方向を見ていた羊のモンスターが動き出した。緩慢ではあるが、確実にこちらを視認し、追いかけて来ている。
「やべっ、走ろう!どっち!?」
「向こうだ!」
モンスターは動きが鈍いので追いつかれる事は無さそうだが、目の前に広がる光景を見て小さく息を呑む。先程アネモネがやられていた荊がそこかしこに伸びていたのだ。
「うわ~絶対痛い奴ぅ!」
「出来る限り、切り進む!」
刀を抜いて、なるべく排除する。切り損ねた荊や地を這う棘が体中を裂くが、痛みを気にしている余裕は無く、ひたすら走る。
「クジュラさん!こっち、荊あんま無いぜ!」
「了解した!」
アンドリューの指差す方へ向かって、それでも生い茂っている荊を切り倒す。すぐ後ろから羊の唸り声が聞こえ、刀を構えながら振り向いた。見ると、ぐぐ、と首を引っ込め、脚の筋肉も収縮させている。
「アンドリュー、来るぞ!」
「オーケー!」
アンドリューは迎え打つつもりなのか、羊と同じ様に全身を縮めて力を溜めている。
羊とアンドリューが同時に悪魔の様な雄叫びを上げる。俺たちを目掛け突進して来た羊の片方の前脚を、刀で素早く切り落とす。
もう片方の脚をアンドリューも叩き潰した様だ。前脚を失った羊は顔面から荊へ突っ込み、慟哭した。もう腕はないのに、首を振り後ろ脚をばたつかせ、無理に起きあがろうとしている。必死にこちらを見ようとしている感じに、何か嫌な予感を覚えた。
止めを刺そうと鎚を構えるアンドリューを制する。
「早く希羽たちと合流しよう。こいつにはまだ何か切り札があるのかも知れない」
「…そ、そうだな」
暴れている羊の側を駆け抜ける時、アンドリューが声を上げた。
「クジュラさん、俺、身体うごかねぇかも」
彼を見ると、手足が石になったかの様にその場で留まっている。
「抱えて行くぞ!」
「すんません…」
軽装とは言え筋肉質なアンドリューと鉄製の武器を抱えて走るのはかなり大変だった。後ろからは羊の興奮した声が聞こえる。
からがら上り階段へ辿り着き、何とか登り切ると、驚いた顔の希羽たちに迎えられた。
「えらいこっちゃ」
アンドリューが濡れた髪をかきあげながらそうごちる。水の中を落ちてしまった為、全身がずぶ濡れになってしまった。
辺りを見回すと、迷宮の中にしては広い空間が広がっていた。上を見ると、植物の様な触手の様な何かが絡み合って作られた天井にはぽっかり穴が開いている。上階には水が溜まっていて、俺たちが落ちる時には一緒に流れ落ちていたはずだが、今はピタリととどまっていた。
穴の周辺には希羽たち3人の姿は見えず、おそらく俺たちが居るこの下階と繋がっている階段の上で待機しているのであろう。
「アンドリュー、あちらを見てみろ」
出来るだけ静かに一方を指差す。先には、羊の様な大型のモンスターがのろのろとした動きで周囲を警戒している姿が見えた。幸いにもまだこちらには気付いていないようだが、のんびりはしていられなさそうだ。アンドリューは目を剥いて、小声で俺に問うた。
「クジュラさん、糸持ってるか?」
「無い」
「やばいな…何とか撒きながら、上の階に戻らなきゃな」
「道は何となく覚えている」
上で希羽の地図を見ていた感じと、落ちた位置、上り階段の位置を思い出して、西南へ向かえば良いだろうと当たりを付ける。方位磁針を確認すると、ここでは使える様だった。
「行くぞ」
「オーケー」
慎重に音を立てない様に、南下する。我々の落下音にも気付いていないのだから、もしかするとあいつはそこまで耳が良くないのかもしれない。
南の壁際まで進む。すると、さっきまで明後日の方向を見ていた羊のモンスターが動き出した。緩慢ではあるが、確実にこちらを視認し、追いかけて来ている。
「やべっ、走ろう!どっち!?」
「向こうだ!」
モンスターは動きが鈍いので追いつかれる事は無さそうだが、目の前に広がる光景を見て小さく息を呑む。先程アネモネがやられていた荊がそこかしこに伸びていたのだ。
「うわ~絶対痛い奴ぅ!」
「出来る限り、切り進む!」
刀を抜いて、なるべく排除する。切り損ねた荊や地を這う棘が体中を裂くが、痛みを気にしている余裕は無く、ひたすら走る。
「クジュラさん!こっち、荊あんま無いぜ!」
「了解した!」
アンドリューの指差す方へ向かって、それでも生い茂っている荊を切り倒す。すぐ後ろから羊の唸り声が聞こえ、刀を構えながら振り向いた。見ると、ぐぐ、と首を引っ込め、脚の筋肉も収縮させている。
「アンドリュー、来るぞ!」
「オーケー!」
アンドリューは迎え打つつもりなのか、羊と同じ様に全身を縮めて力を溜めている。
羊とアンドリューが同時に悪魔の様な雄叫びを上げる。俺たちを目掛け突進して来た羊の片方の前脚を、刀で素早く切り落とす。
もう片方の脚をアンドリューも叩き潰した様だ。前脚を失った羊は顔面から荊へ突っ込み、慟哭した。もう腕はないのに、首を振り後ろ脚をばたつかせ、無理に起きあがろうとしている。必死にこちらを見ようとしている感じに、何か嫌な予感を覚えた。
止めを刺そうと鎚を構えるアンドリューを制する。
「早く希羽たちと合流しよう。こいつにはまだ何か切り札があるのかも知れない」
「…そ、そうだな」
暴れている羊の側を駆け抜ける時、アンドリューが声を上げた。
「クジュラさん、俺、身体うごかねぇかも」
彼を見ると、手足が石になったかの様にその場で留まっている。
「抱えて行くぞ!」
「すんません…」
軽装とは言え筋肉質なアンドリューと鉄製の武器を抱えて走るのはかなり大変だった。後ろからは羊の興奮した声が聞こえる。
からがら上り階段へ辿り着き、何とか登り切ると、驚いた顔の希羽たちに迎えられた。