10.視線の先
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「おーい、こっちに階段があるぞ」
アンドリューが声を上げた。以前初めて22階へ到達した時には気付かなかったが、22階へ降りた所から直進した所に更に下の階への階段があった。不気味に思いつつ、その階段を更に降りてみる。
「…うーん、広そうだね」
少しだけ辺りを探索してみるも、広い通路が続いているだけ…のようだ。
「もしかしたら22階に他に降りてくる階段があるのかな」
「階段同士が近いのがまるで罠の様だしな」
クジュラさんが私の言葉に頷く。その時、アネモネが短い悲鳴をあげた。
「ここ、棘…」
見ると、アネモネが立つ足元に、脈動する荊が広がっていて、それに脚を傷付けられたらしい。カスミがアネモネの脚を回復してやって、一旦上の階を探索する事にした。
「じゃあ、やっぱりあの部屋を探索するしか無いんだね」
あの部屋というのは以前来た時にチラッと見た、水浸しの部屋だった。水浸しで何とも距離感が測れず方位磁針も効かず、マッピングに苦労しそうな部屋だ。ペンと方眼紙を握る手に力が入る。扉に手をかざすとにゅっと生物的に開いた。
部屋の中は通路になっていて、先頭をアンドリュー、真ん中にマッピングする私とクジュラさん、カスミとアネモネは余程嫌なのかほとんど泣きそうになりながら後ろを歩いている。
この通路がまた分岐まみれのグネグネで今自分がどこにいるのか分かりづらくて、ゆっくり進むから全く進んでる気がしない。加えて…
「敵だ!」
アンドリューが短く叫び、臨戦体制を取る。そう、モンスターがやたら多いのも、マッピングの進まない要因となっていた。
昆虫の様な見た目のモンスターとその卵のモンスターの取り合わせだ。女性陣はその見た目に明らかに士気が下がってしまっているので、号令を出して何とか戦ってもらう。私とカスミで補助をし、アンドリューとアネモネとで削って、クジュラさんが止めを刺す。敵がさほど強くないのと連携がうまくいっているので戦闘自体はすぐ終わる。しかし地図上の現在地を見失ってしまって確認のために一旦戻る…みたいな作業が発生する。
「どっち向いてたんだっけ?」
「えっと、多分あっち」
「あっちじゃなかったっけ」
今回の戦闘でも位置がわからなくなったので、地図と照らし合わせて戻る事にした。
再びマッピングに戻った時、前を行っていたアンドリューとクジュラさんが突然姿を消した。
「っえ?」
ゆっくりと2人が消えた地点まで近づいて、辺りを探る。足元、水たまりの奥の地面に穴が開いていた。
「落とし穴!?」
アネモネが呟く声に被せて、自分に防御と予防の号令を掛けてに顔を突っ込んだ。下の階にあった脈動する荊と、移動するアンドリューとクジュラさんが見えて、顔を上げる。
「大丈夫!?」
「平気!下の階に繋がってるみたい!2人は無事っぽい」
捲し立てるとアネモネが水筒の水を含ませたハンカチを差し出してきた。
「目、真っ赤。それ海水?」
「え、うわ、しょっぱ苦い!!」
「わぁ…回復するよ」
カスミが回復術で目を癒してくれた。
「2人ともありがとう…ねぇ、クジュラさん達って、糸持ってたっけ」
糸というのはアリアドネの糸というアイテムの事で、引きちぎって使うと拠点へとワープ出来る。迷宮探索には必須なので、毎回の探索につき2、3個は持って来てるのだが。
「ひとつはわたしが持ってる」
「あ、ダメだ。もう1個は私、2人は持ってないと思う」
ということは、2人が自力で戻って来るのを待つか、探すかしかないか…。いや、探すのは戦力的に難しいな。
「待つしか、無いかぁ…」
「あの階段の所に戻って来るかな」
うーむ、地図的にも全く進められてないから、あの下り階段と、この落とし穴が対応しているとは思うけど…。私たち3人は下り階段の方へ戻って、そこで2人を待つ事にした。