09.面影
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
プリムラサイド
私はプリムラ。故郷で農業を営んでいたのだが、いろいろな事情が重なり、今は家庭教師時代の教え子であった希羽の作ったギルド・海市蜃楼で、農家という職を活かして迷宮での採集を担当している。
迷宮での活動は刺激的で、この歳になってもまだまだ知らない事があるのだなと新鮮に驚かされるのだった。とはいえ、海市蜃楼はあまり採集を行う事が無いので、希羽率いるパーティーが迷宮探索へ発った後、海都をお散歩するのが私の日課だった。
今日も青空と潮風の下、自慢の艶のある栗毛を三つ編みにし、真っ白なエプロンをして歩く。海辺の市場で、近郊で獲れた色とりどりの魚達が並べられているのを眺める。威勢の良い店員さんに、お嬢さんだとかお姉さんだとか言われると悪い気はしなくて、つい買ってしまいそうになる。
ニコニコしながら市場をうろついていると、後ろから遠慮がちに声をかけられた。昔、どこかで、聞いた事のある声。
「プリムラ、さん?」
「……まあ!貴女、こんな所で会うなんて!」
振り返るとそこに立っていたのは、私と同じくシワだらけのお婆さん。しかし気品のある目、高い鼻に、小さくぽってりした可愛い唇…確かに面影が有った。彼女はずっと昔、私たちがうんと若かったあの頃。女学校時代の親友だった子だ。
そう、名前は、確か……名前、……な、なんだっけ?ここまで出掛かっているのだけれど、ええと…。
「ねえ、懐かしいわ!貴女、全く変わってないのね!」
彼女が生き生きした目で私を眺める。
「貴女こそ、全然変わっていないわぁ。けど、すこぉしだけ、老けたかしら?」
「あっはは!!そういう軽口をすぐ叩く所も変わっていないわ。ねえ、今時間ある?良かったらどこかでお茶しない?」
ああ、懐かしい。彼女は笑う時に、大きな口を開けて歯を見せて笑うのだ。当時はよく先生に「レディがはしたない」と怒られていたけれど、私はこの笑顔がとても好きだった。…この調子で、名前も思い出せたら嬉しいんだけれど。
「良いわね。行きましょうよぉ!」
2人で、その辺の喫茶店に入る。ウエイターに席を案内してもらって、アイスティーを2つ注文する。窓の外に海を望むその席は居心地が良く、私たちの長居を決定した。
「ふー…ねぇ、プリムラはいつから海都に居るの?確か…ほら、小国の王家に奉公に行ったんじゃなかったっけ」
「ふふ。実はそこのお姫様に連れられて、迷宮探索へ来たのよぉ!」
「ええ!?凄いわね、聞かせて聞かせて!」
「うふふ、待ちなさい。まずは言い出しっぺの貴女のお話が聞きたいわ。確か、学校を卒業した後で海都の武家に奉公に行ったんだったわよねぇ?私、今日は暇なのよ。たっぷり話して」
「そうね、時間ならたっぷりあるわ。実は私も今日はお休みなの。そうそう、あの後からの話ね」
どうにかして彼女の名前を聞き出さなくては。もしくは、思い出さなくては。というわけで、何かヒントになれば、あわよくば話のうちに名前が出ないかしらと身の上話を彼女に譲った。
私はプリムラ。故郷で農業を営んでいたのだが、いろいろな事情が重なり、今は家庭教師時代の教え子であった希羽の作ったギルド・海市蜃楼で、農家という職を活かして迷宮での採集を担当している。
迷宮での活動は刺激的で、この歳になってもまだまだ知らない事があるのだなと新鮮に驚かされるのだった。とはいえ、海市蜃楼はあまり採集を行う事が無いので、希羽率いるパーティーが迷宮探索へ発った後、海都をお散歩するのが私の日課だった。
今日も青空と潮風の下、自慢の艶のある栗毛を三つ編みにし、真っ白なエプロンをして歩く。海辺の市場で、近郊で獲れた色とりどりの魚達が並べられているのを眺める。威勢の良い店員さんに、お嬢さんだとかお姉さんだとか言われると悪い気はしなくて、つい買ってしまいそうになる。
ニコニコしながら市場をうろついていると、後ろから遠慮がちに声をかけられた。昔、どこかで、聞いた事のある声。
「プリムラ、さん?」
「……まあ!貴女、こんな所で会うなんて!」
振り返るとそこに立っていたのは、私と同じくシワだらけのお婆さん。しかし気品のある目、高い鼻に、小さくぽってりした可愛い唇…確かに面影が有った。彼女はずっと昔、私たちがうんと若かったあの頃。女学校時代の親友だった子だ。
そう、名前は、確か……名前、……な、なんだっけ?ここまで出掛かっているのだけれど、ええと…。
「ねえ、懐かしいわ!貴女、全く変わってないのね!」
彼女が生き生きした目で私を眺める。
「貴女こそ、全然変わっていないわぁ。けど、すこぉしだけ、老けたかしら?」
「あっはは!!そういう軽口をすぐ叩く所も変わっていないわ。ねえ、今時間ある?良かったらどこかでお茶しない?」
ああ、懐かしい。彼女は笑う時に、大きな口を開けて歯を見せて笑うのだ。当時はよく先生に「レディがはしたない」と怒られていたけれど、私はこの笑顔がとても好きだった。…この調子で、名前も思い出せたら嬉しいんだけれど。
「良いわね。行きましょうよぉ!」
2人で、その辺の喫茶店に入る。ウエイターに席を案内してもらって、アイスティーを2つ注文する。窓の外に海を望むその席は居心地が良く、私たちの長居を決定した。
「ふー…ねぇ、プリムラはいつから海都に居るの?確か…ほら、小国の王家に奉公に行ったんじゃなかったっけ」
「ふふ。実はそこのお姫様に連れられて、迷宮探索へ来たのよぉ!」
「ええ!?凄いわね、聞かせて聞かせて!」
「うふふ、待ちなさい。まずは言い出しっぺの貴女のお話が聞きたいわ。確か、学校を卒業した後で海都の武家に奉公に行ったんだったわよねぇ?私、今日は暇なのよ。たっぷり話して」
「そうね、時間ならたっぷりあるわ。実は私も今日はお休みなの。そうそう、あの後からの話ね」
どうにかして彼女の名前を聞き出さなくては。もしくは、思い出さなくては。というわけで、何かヒントになれば、あわよくば話のうちに名前が出ないかしらと身の上話を彼女に譲った。