07.迷宮最強王者決定戦
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案の定銀狐の死骸と血溜まりはあったものの、クジュラさんとレナーテは移動した様だった。
死骸は首がスッパリと綺麗に落とされている。それ以外に目立った傷も無く、クジュラさんがこの巨大モンスターの首をひと太刀で落とした事がわかる。改めて、彼の強さを認識した。
切り口も少しもガタガタしておらず、どうすればこんなに綺麗に斬れるのかと考える。クジュラさんの得物は薄い刀なのに、どうして折らずに断つことが出来るんだろう。
じっと観察していると、向こうの通路からモンスターの気配を感じた。剣に手を掛けながら、自分に防御の号令を掛ける。…銀色の体毛が水面に映る。
目の前の死骸と同様の銀狐の強個体だった。逃げるか迷ってる暇はなかった。いきなり先制の雷を落とされ、脚をやられてしまった。防御はしていたのでダメージはさほど無いが痺れて動けない。
慌てず、まずは痺れを術で回復して、今度は攻撃の号令を掛ける。
銀狐は死骸を目にした途端に全身の毛を逆立てて、慟哭した。…つがいだったのかもしれない。しかし、モンスターはモンスター。今こちらが手を出さずとも、いずれ別の人間を襲うだろう。だったら、今私が倒す。
アンドリューがやったみたいに体を登って斬りつけたいところだけれど、身軽では無い私にはあれは無理だ。かと言って銀狐の首の位置は高く、刃が届かない。銀狐を跪かせるしか無い。一気に駆け抜けて、銀狐の懐に入る。そしてまずは前脚の腱を断つ。
耳をつんざく叫び声を上げながら銀狐はバランスを崩した。私はすかさずもう片脚の方へ駆け、そちらの腱も断つ。銀狐は立ってられないのか、ちょうど、犬の伏せの様な体勢になった。
そして、体を淡く光らせる。それはどうやら回復効果がある光らしく、みるみるうちに前脚の傷が塞がって行く。立ち上がられるとまずいので、打ち消しの術で対抗しながら、急いで側面へ回る。狐の周りの回復の光が途絶えたところで、もう一度自らに攻撃の号令を掛ける。そして短く息を吐き、狐の首へ剣を振り下ろした。しかし、ダメだ、ガツっと骨に弾き返されてしまった。
次は角度を変えて、また振り下ろすと、今度はスッと剣が通った。切り離された首が、前へ落ちる。バシャっと水音がしたきり、辺りは静かになった。
肩で息をしながら、剣に着いた血糊を振るい落とし、布で拭ってから鞘に納める。
その時、銀狐が現れたのとは別の通路から気配がした。新手かと思ってまた剣を抜き号令を掛け直していると、現れたのは驚いた様な顔のクジュラさんと##NAME5#だった。カスミとレナーテも後ろに居る。
「あれ、みんな合流してたんですか」
「…希羽がひとりでやったのか?」
「え?こっちのはクジュラさんがやったんですよね?」
クジュラさんが倒した方と私の倒した方では、斬り口の美しさが違う。私のもいい武器だけれど、やっぱり持ち主がもっと力を付けないとこうは斬れないのかな。
「…ま、まあドン引きする気持ちはわかるけど、時間だし一旦帰りましょうよ」
レナーテが震えた声で言った。もう時間なのか。時計を見ると日付が変わる寸前だった。
「じゃあ、宿屋で報告会ですね」
私がアリアドネの糸を出しながら言うと全員が頷いた。