07.迷宮最強王者決定戦
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次の日、迷宮の5階層にて。
「じゃあ頑張ってください」
クジュラさんとアンドリューの背中に声を掛ける。2人は振り向かずに各々歩いて行った。
「鬼だ」
「またとんでもない事させるわね」
2人の後ろを着いていくカスミとレナーテが呟いた。
勝負方法は簡単で。少し前にお金持ちのおじさんがギルド対抗狩猟大会を催していたのだけれど、あれを個人でやってもらう事にしたのだった。場所は5階層、強いモンスターには点数を多く振って、日付が変わるまでに点を稼いだ方の勝ち。2人にはそれぞれ不正と万が一が無いようにアンドリューにはカスミ、クジュラさんにはレナーテを後方支援に付けて、挑んでもらう。…ついでに私も武器の試し斬りがしたくて参加する。いや、ひとりだし、無理はしないけどね?
早速ネズミのモンスターが現れたので、自分に攻撃の号令を掛けて、顔面に剣を叩き込んだ。前歯が折れ、逃げようと背中を向けた所を追撃する。この武器、切れ味が良い。気分上がるなぁ。
ニッコニコで行軍していたらクジュラさんと遭遇した。めちゃくちゃ眉を顰めて私を見ている。何も言わないけど、無理はするなと釘を刺しているのだろう。
大丈夫です、と声を掛けるとため息を吐いて迷宮の奥へ進んで行った。せっかくだから彼の戦いぶりを見たくて少し着いて行くことにする。クジュラさんの後ろを行くレナーテも、私を睨んでいた。彼女にも大丈夫の意で手を振ると、これまたため息を吐かれた。
少ししたら開けた場所に出て、大きなカマキリのモンスターが彼を襲った。いやそれ貴方が召喚したやつじゃないですか?というツッコミを飲み込み、影響のなさそうな所で見学をする。と言っても一瞬で決着は着いて。彼は流石の立ち回りでカマキリの大鎌をいなし、胴体を切り離した。
「かっこいい…」
「希羽、アンタしっかり油断してるわね…」
「だってクジュラさん、カッコ良すぎない!?」
「…行くぞ」
汗ひとつかかないで、さっさと奥の部屋へ進もうとする彼をレナーテと2人で追いかける。と、今度は花びらのモンスターとフルーツのモンスターが出てきたが、ひと太刀で薙いで屠った。
「なんでそんなにお強いんですか?」
「別に。…強いて言うなら希羽が後ろに居るから、護らねば、と思ってな」
「ぅ、すきっ…」
「ちょっとぉアタシも居るんだから2人の世界に浸るのはやめなさいよ」
その後も次々と現れるモンスターをあっという間に斬り伏せるクジュラさんに見惚れていたのだが、いい加減カッコよすぎて心臓がどうにかなりそうだったので早めにアンドリューの方へ向かうことにした。
と言ってもアンドリューがどこに居るのかわからないし当てもなくモンスターを倒しながら進んでいると、アンドリューに同行しているカスミの後ろ姿が見えた。
しかし、立ち止まっていたので、なるべく気配を消して近づいてみると、案の定アンドリューは交戦中みたいだ。彼はうさぎのモンスター3体に囲まれていたが、鎚を力いっぱい振るって衝撃波で薙ぎ倒した。その倒れた腹に素早く柄を叩き込んで次々と息の根を止めていく。うーん、さすが海都イチの膂力の名をほしいままにしているだけある。やっぱり引退してヒモになるなんて勿体ないと思うんだけどなぁ。
「カスミ、どんな感じ?」
驚かせないようにわざと気配を出してカスミに話しかける。
「ん、ボチボチじゃない?」
「そっかぁ」
「希羽、見に来たのか」
「うん。クジュラさんがカッコ良すぎて心臓がもたなくて」
「俺なら平気なんかい」
「ときめいたこともないよ」
「それはそう」
「カスミまで…海都イチの美男と言われた俺を」
「聞いたことないし」
「クジュラさんの方がかっこいいもん」
「冗談で流せよ」
しばらく着いて行って、ワープゾーンにまで来た。鳥居を潜ると何かの力で別の場所に飛ばされるという嫌な仕掛けだ。ここはずっと何かに見られている気配がして気分も落ち着かない。
どうやらアンドリューはこの辺りに出現する、銀狐とやり合うつもりらしかった。3メートル程の巨躯を持ち銀色の毛皮を纏う狐のモンスターだ。正直、パーティーで挑んでもギリギリ倒せるかどうかの強敵なんだけど、いつもアンドリューが止めを刺す感じだし、彼なら1人でも倒せるかもしれない。
何度かワープしながら道なりに進んで行くと、目的の銀狐が徘徊している回廊に出た。アンドリューはまず雄叫びをあげて銀狐を威嚇し、更に自分を鼓舞して鎚を構えた。
「だぁぁぁぁ!!」
銀狐の体を素早く駆け上り、頭を目掛けて滅多やたらに鎚を振り下ろす。何発かはがっつり命中したように見える。銀狐の方はアンドリューを振り落とそうと体を震わせたが、希羽は毛に掴まったままで、また鎚を持つ手に力を込めた。今度は顎を目掛けて鎚を打ち付ける。その時、赤く滲む銀色の体毛が輝いた。カスミと2人で慌ててその辺の木の上に登ると、大きな音を立てて周囲に雷が落ちる。地面の水伝いにこちらが感電させられそうでヒヤヒヤした。
アンドリューは銀狐にくっ付いたままなので雷を受けなかったようで、今度は銀狐の耳元で雄叫びをあげた。ああ、あれはうるさいだろうな…銀狐が一瞬固まった隙にまたもや鎚を頭に振り下ろした。ゴツンと言う大きく鈍い音が響き、銀狐がブルッと痙攣したかと思うと、そのままバランスを崩して地面へ倒れ込んでしまった。周辺の水面が赤く染まって行く。
「…よし、倒したぞ」
アンドリューが嘆息したのと同時に、おそらく同じ階層の遠くの方から地響きが聞こえた。雷の音の様にも聞こえたが、その一度きり、迷宮は静まり返っている。
3人で顔を見合わせる。
「クジュラさんかな?」
「あの人も同じ考えかよ」
「どんどん狩らなきゃ負けるね?」
「うるさい、そう何頭も倒してられるか」
クジュラさんとレナーテにも回復薬を持たせているから大丈夫かとは思うけど、私ひとりで様子を見に行ってみる。地図と音の方角を見比べ、当たりをつけてワープして行く。
途中出遭うモンスターを切り倒しながら、目星をつけた辺りへ到着した。