07.迷宮最強王者決定戦
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「…で、アンドリュー。これ、どう言う事?」
先ほど商会で買い戻した鎚を、テーブルの上に置いてもらう。アンドリューは素知らぬ顔で言った。
「ああ。俺、ギルド抜けるから」
「…なんで?」
「なんでって、別にもう俺がいる必要ないだろ?」
「必要かどうかは私が決める。はい決めた。必要です」
「あのなぁ」
アンドリューが空のグラスを呷ったので、氷がカラ…と音を立てた。彼は大きなため息を吐いて、追加でお酒を注文するためにお姉さんを呼ぶ。
「お前らはなんか飲む?奢るけど」
「飲む」
「希羽は止めた方がいいんじゃないか…?」
私が即答するとクジュラさんが若干引き気味で言った。その様子にアンドリューが笑う。
「はは、こいつ酒飲むと頭悪くなるもんなぁ」
「悪くならない、飲む」
「あーはいはい。あ、こっち、さっきのやつ3杯追加で」
アンドリューはオーダーすると、鎚を見て苦笑いした。
「わざわざ買い戻したのか?金、払うよ。いくらだった?」
「…何でそんな感じなの!」
「そんな感じって何だよ。もうお前も俺も何にも縛られるこたぁねぇんだ。好きに生きようぜ」
「それは、そうだけど」
「それにしてもお前ら、お似合いじゃねぇか。希羽のそう言う格好久々に見たけど、鎧より断然似合ってて可愛いしさ。クジュラさんもさすがにかっこいいじゃん」
「それもそうだけど」
「いや、認めるんかい」
「ふふ、思ってたより仲が良いな」
「そんなことありません!」
「…はぁ。何でそんなに俺に執着するんだよ」
執着?私がアンドリューに?違う、と思って口を開くも、返す言葉は見つからなくてパクパクするだけだった。全員が沈黙した。ちょうどその時、お酒が届いたので一気にそれを呷る。
「ば、馬鹿!一気飲みって、お前…」
「馬鹿じゃない!!」
カーッと喉が熱くなって、頭に血が上る感覚がした。アルコールが入ると確かに頭はフワフワする。普段より。
「馬鹿じゃないし!何よ、執着って。だってお兄ちゃんが勝手に居なくなろうとするからじゃん!!理由教えてって言ってんのに!」
「『お兄ちゃん』…?」
「ああ、従兄弟だからさ、昔は俺のことお兄ちゃんて呼んでたわけ。可愛いだろ?」
「可愛くない!理由をいいなさい!」
「あー、理由ねぇ、理由、かぁ」
「俺を目の敵にしていたと聞いたが?」
「ああ、それはあれだ。可愛い妹分をどこの馬の骨とも知れない奴に渡すわけにはいかないだろ?わかるだろ、アンタなら」
「…まあ、わからないでも、無いが」
「ずっと希羽に相応しいか見定めてた訳だ。勝手で悪いけどな。結局、こんな男前でしかも強い、俺の上位互換みたいな男だってわかって、しかも相思相愛だってんなら。俺はもう必要ないかなーってさ」
「はぁ?何それ。クジュラさんに嫉妬して、居場所無くしたって勝手に拗ねてんの?馬鹿はお兄ちゃんじゃない」
「うぐぅ、おっしゃる通りでぐうの音も出ねぇわ」
「出てるじゃん」
「ふっ、ははっ」
管を巻いていると、クジュラさんがめちゃくちゃ笑い出した。珍しくて可愛くて、ついじっと見つめてしまう。
「いや、悪い。もっととんでもない理由があるのかと思って身構えていたが、そんな理由とは。お前たちの仲が良すぎて少し妬けるな」
「むぅ…」
「別にわざわざ籍を抜く必要もないのでは無いか?そもそもギルドを辞めてどうやって暮らす気なんだ?」
「そりゃあ女の子のとこにお邪魔して」
「だぁから、それをやめなさいっての。そんな生き方じゃいつか女の子に刺されるよ?その時に私が近くにいなきゃ、治せないじゃん。私が知らない所で勝手に死なないでよぉ…」
「ば、馬鹿、泣くな泣くな。死なねぇって、俺は世界一強いんだぜ?」
「クジュラさんの方が強いもん」
「こ、こいつ…。はー、わかった。俺が世界一だって証明すれば良いんだな?なら勝負をしよう。俺が勝てば、俺はギルドを抜ける。クジュラさんが勝てば、俺はギルドを抜けない」
「良いぞ」
「いや良いんかい。ノリ良いなおい」
「やっぱりお兄ちゃんの方が馬鹿じゃん。絶対クジュラさんの方が強いのに」
「うるせぇ」
「どうやって勝負するんだ?タイマンか?」
「だ、ダメですよ、クジュラさんとお兄ちゃんが直接戦ったら、お兄ちゃんボロ負けしますから」
「馬鹿やろう、その通りだクソッ」
勝負かぁ、2人が戦わずにできる勝負。あ、と思いついて顔がニヤける。
「じゃあさ、こうしようよ」