07.迷宮最強王者決定戦
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遅めの朝食を取って一旦部屋に戻る。手持ちの中で最も可愛いワンピースを着て、髪も編み込んだりなんかしちゃって、化粧もして、めかし込んで宿を出る。先にクジュラさんが迷宮の素材やらを抱えて玄関で待っていた。
そう、食堂にだいぶ遅れてやってきた私たちを見て、ギルドメンバーがペナルティだとかなんとか言いながら昨日集めた素材と古い装備の売却を申し付けてきたのだ。別に自由行動の日だし遅れたことを咎められる義理はないので、なんのペナルティか聞いたら目に障るからだと。2人でどっか行けと言われた。
わざわざ2人きりにさせてくれてるのかただの嫌がらせかわからない微妙なラインのおつかいを任されて若干不服ではあるけど、待ってるクジュラさんを見たらそんな気持ちも吹き飛んだ。
私服だ!いや、何のことはないただの白シャツに黒いパンツで長い髪を無造作に纏めてるだけなんだけど、素材(クジュラさん)が良すぎるので眩しく感じる。あと年相応に見える、と言うと怒られそうだけど。
「お待たせしました…!」
「…いや、別に待ってない」
私を見て一瞬固まったように思うけど、変かな?着替えてきた方がいいだろうか。
「あの、どこか変でしょうか?」
「いや、可愛すぎて驚いてしまった。そう言う格好もよく似合うな」
「かわっ…」
やばい、ほっぺたが燃えるように熱い。意外とサラッと褒めるんだよねこの人。
「行くか」
顔を冷まそうとパタパタと手であおいでいると、クジュラさんが横に並び立って腕を差し出してきた。そっと腕を絡ませ、エスコートされながら商会へ向かう。
きっとあのお姫様とも同じ様に歩いた事があるんだろう。妙に慣れているその動作に複雑な気分になる。
潮風にスカートをふわふわと膨らませて歩く。クジュラさんの髪もサラサラとなびいている。街行く人たちが、すれ違うたびにこちらを振り返って見ている気がする。いや、気がするというか、完全に見ているしクジュラさんは何人かの女性に声を掛けられて、その度に追い返していた。
「あの人たち勇気ありますね」
私なら絶対声を掛けられない。遠巻きに見るだけで終わっていただろう。クジュラさんはため息を吐きながら言う。
「男どもの方は勇気も意気地も無いがな」
「クジュラさんはモテますね」
「そうじゃなく…いや、気付いてないなら良い」
馴染みの商会へ入ると、店主が例の調子で声を掛けてきた。
「んん?なんじゃ主ら、どこぞのお姫様と騎士様かと思ったら、希羽とクジュラか。というかそもそも2人ともそれぞれ本当に姫と騎士じゃったか?」
ちょっと振れて欲しく無い背景もこの店主に掛かれば恰好の会話のネタなのである。クジュラさんは流石のポーカーフェイスで、持っていた素材をカウンターに置いた。
「これを売りに来た」
「ほう、どれどれ」
店の奥で鑑定してもらっている間、店の物を物色する。と言ってもこの間来たばかりだし、入り浸っているからそうそうめぼしい物は無いので、ぼけっと眺めているだけだけど。
「そういえば海市蜃楼の色男が、こないだこんな物を売りに来てたぞよ」
色男、と言われて一瞬クジュラさんを見たが、彼は困った様にこちらを見つめ返すだけだった。店主が言うのは私の幼馴染のアンドリューの事かと思い直す。店主が幾らかのお金と一緒に持ってきた鎚を見て一瞬言葉を失った。お金の方は持ち込んだ物の対価で、見覚えのあるこの鎚は。
「これってアンドリューの武器…」
「必要ないからと言っていたが、そんなわけあるまいなぁ?」
「あるまいです!」
高速で頷くと、店主は今度はクジュラさんへ笑い掛けた。
「ククク、お主がチヤホヤされてる裏に、それをよく思わない男も居ると言う事じゃ」
「アンドリューが迷宮探索に非協力的なのはクジュラさんのせいじゃ有りません」
「そうかの?元々希羽がクジュラを好きになってしまったから『お姫様が自由恋愛をしない様に』と言う事で、監視目的でアンドリューが探索を手伝う様になったのじゃろ〜?で、国の亡き後、自分が必要無くなったから迷宮探索から身を引いたと」
「アンドリューから聞いたんですか?」
「我は何でも知っておるからの」
「それを訳知り顔で他人に話すのは良くないと思うが」
「ふふん、お主も当事者だろうに。知らぬ存ぜぬはいかんな?」
「…クジュラさんは関係有りません。あと、この鎚は買い戻します」
「毎度〜♪」
少しモヤモヤした気持ちを抱えて、商会を出た。風はどこまでも爽やかに私の頬を撫でる。
「…クジュラさん、ちょっとアンドリューが居そうな所に行っても良いですか?」
「構わない」
「ありがとうございます」
鎚はクジュラさんに持ってもらって、またエスコートしてもらって歩く。アンドリューが居そうな場所といえば…彼は遊び人なので大概女の子が沢山いる様な酒場とか治安が悪そうなバーとかで、そう言う所へクジュラさんを連れて行くのは気が引けるが、どうにも腹の虫が治らない。