06.灯台
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レナーテサイド
今夜もため息しか出ない。全くもって悲恋である。いや、そうなるのは初めから分かり切っていたけれど。だって、彼女…希羽は男性を好きなんだって知ってたもの。
「不毛な恋だわ」
「ちょっとレナーテ、周りちゃんと警戒しててよ~」
何度目かわからないため息を吐いたところで採集中のスミレに注意される。
我らがギルド・海市蜃楼は今夜、採集の為に迷宮へ潜りに来ていた。メンバーはいつもの探索メンバーとは異なって、ファーマーのプリムラ、その孫娘で何かあった時の火力砲のアネモネ、モンクのカスミに彼女の妹で緊急逃走要員のスミレとアタシと言う編成だ。アタシの出番は無いとは言え、モンスターに強襲されないかの警戒は必要である。けど、集中できない。
だって今頃希羽は、彼女の想い人…クジュラさんとよろしくやっているだろうから。
「はぁ~全く希羽も、なんであんな男なんか好きになるのかしら」
好きな人の好きな人を下げてもしょうがないのはわかっているけれど、ムカつくもんはムカつく。
「まあね~私も希羽の趣味はよくわかんないけど」
隣でカスミも同意してくれる。カスミは希羽が好きと言うわけでは無く、クジュラさんが嫌いらしくて彼の話題になると結構塩である。
「けど、希羽のこと見てる時のクジュラってバカっぽくない?あれは結構見てていい気分」
「アンタ、褒めてんのそれ。言い方悪いわよ」
「だってさぁ、めっちゃ好きなんだろうね。普段何考えてんのかわかんないのに。希羽の事になるとその辺の若い男と同じような目するし」
「わかる!アレがムカつくの!!アタシの希羽をその辺の俗物と同じ目で見ないで欲しいのよ!」
「ふふ、どいつもこいつも、恋って大変だね?」
「本当に苦しいの~助けてよぉ~」
「ええ~、新しい人探すとか?」
「希羽じゃなきゃ嫌なの!」
「じゃ、略奪かぁ」
「クジュラさんからは奪えないでしょ」
「負け、認めるんだ?」
ニヤッと笑い掛けるカスミに文句を垂れようと口を開いた時、アタシたちが警戒している方とは逆の方向の通路から爆発音が聞こえた。そういえば、アネモネは?姿が見えない。
慌てて音の方へ駆け寄ると、案の定アネモネがモンスターと対峙していた。…あの、蛇のような木の化け物だ!アネモネはすでに魔力を吸われてしまった様で、占星術の威力がいつもより小さく見えた。アタシも腰から銃を抜き、蛇の木の顎へ数発撃ち込む。
「こいつ、他の魔物に釣られて出てくると思ってたのに!」
「単体で出てきたの!?」
アネモネはコクリ、と頷いて詠唱を始めた。油断した。蛇の木はこの階で最も警戒すべき相手ではあるが、他のモンスターとの戦闘の音を嗅ぎつけて現れる為に、戦闘さえなければ大丈夫だと思い込んでいたのだ。
アタシがある程度攻撃を引き付け、何とか翻弄する。逃げなくては。なんにせよ今のパーティーでは万に一つも勝てない相手だ。カスミとスミレがプリムラを連れて遅れてやってきた。
「スミレ!逃げるわよ!!」
スミレに遁走の術の準備をしてもらう。次々と伸びる触手の様な枝を撃ち落とす。リロードをして、また撃ち落として。リロード、そのタイミングで蛇の木は詠唱中のアネモネへ狙いをつけた。しまった、と思った時にはカスミがアネモネの前へ立ち塞がって、思い切り薙ぎ飛ばされた。
「みんなこっち!!!!」
スミレが叫ぶ。術の用意が出来たらしく、全員急いでそちらを目指す。倒れたカスミの肩をアネモネとアタシで支えて、何とか術式の陣へ滑り込んで……。
明け方頃、拠点にしている宿屋へ着くと、希羽とクジュラさんが飛んで来てくれた。ありがたく希羽の回復術を受け、重症のカスミをクジュラさんに治療院まで運んでもらう。ああ、クジュラさんって意外と力あるのね。カスミ、嫌いな相手にお姫様抱っことかされちゃって。思わずクスッと笑ってしまった。
治療院から戻されたカスミは、希羽の部屋へ寝かされる事になった。今は安らかな寝息を立てていて、容体も悪くなさそうだ。
ほぅっと息を吐いて、続き部屋の主部屋の方へ移動するとクジュラさんに声をかけられる。
「なにか必要なものがあるか?それとも、ここで仮眠をとるのか?…申し訳ないが、俺も、一緒に過ごす事になるが」
「違うわよ。カスミも落ち着いてるみたいだから、ちょっと休憩」
「そうか」
部屋の中心、大きなテーブルと4脚ある椅子のひとつに腕を組んで座っている彼の元へつかつかと歩みより、見下ろしながらずっと聞きたかった事を訊いてみる。
「ねえ、クジュラさんって希羽のどこが好きなの」
「お前に言う義理はない」
銃を抜いて額に擦り付ける。彼もまた、懐刀をアタシの喉へ突き付けていた。速い。
「どこが好きなの」
「…海市蜃楼の面子は希羽を愛しているだろう?…なら彼女を奪えば全員に対して復讐になると思った。好きだとか、そう言うわけじゃない。それだけだ」
とことんまで冷たい瞳をする彼の言葉に、思わず笑ってしまう。確かに希羽がクジュラさんを好きになってしまったら、それは最も復讐になる。少なくともアタシには効いた。
「…はぁ〜、下手な嘘ね」
「そうか?」
クジュラさんも少し目を細めると、懐刀を引っ込めた。ああ、アタシの銃に弾が入っていない事に気付いていたのか。チッと舌打ちをし、彼の端向かい側の椅子に座った。クルクルっと手の中で銃を回す。
「ふう。全くもう、なんで好きなのよ。気になるじゃない?」
「お前だって希羽を好きなんだろう?大体理由は同じだと思うが」
「それでも聞き出したいのよ。それが恋バナってものじゃない?」
「……彼女の瞳が眩しかったんだ。追ってるうちに惚れていた」
「あら。ほんとに同じ。厳密に言えば、アタシは一目惚れだったんだけど」
今夜もため息しか出ない。全くもって悲恋である。いや、そうなるのは初めから分かり切っていたけれど。だって、彼女…希羽は男性を好きなんだって知ってたもの。
「不毛な恋だわ」
「ちょっとレナーテ、周りちゃんと警戒しててよ~」
何度目かわからないため息を吐いたところで採集中のスミレに注意される。
我らがギルド・海市蜃楼は今夜、採集の為に迷宮へ潜りに来ていた。メンバーはいつもの探索メンバーとは異なって、ファーマーのプリムラ、その孫娘で何かあった時の火力砲のアネモネ、モンクのカスミに彼女の妹で緊急逃走要員のスミレとアタシと言う編成だ。アタシの出番は無いとは言え、モンスターに強襲されないかの警戒は必要である。けど、集中できない。
だって今頃希羽は、彼女の想い人…クジュラさんとよろしくやっているだろうから。
「はぁ~全く希羽も、なんであんな男なんか好きになるのかしら」
好きな人の好きな人を下げてもしょうがないのはわかっているけれど、ムカつくもんはムカつく。
「まあね~私も希羽の趣味はよくわかんないけど」
隣でカスミも同意してくれる。カスミは希羽が好きと言うわけでは無く、クジュラさんが嫌いらしくて彼の話題になると結構塩である。
「けど、希羽のこと見てる時のクジュラってバカっぽくない?あれは結構見てていい気分」
「アンタ、褒めてんのそれ。言い方悪いわよ」
「だってさぁ、めっちゃ好きなんだろうね。普段何考えてんのかわかんないのに。希羽の事になるとその辺の若い男と同じような目するし」
「わかる!アレがムカつくの!!アタシの希羽をその辺の俗物と同じ目で見ないで欲しいのよ!」
「ふふ、どいつもこいつも、恋って大変だね?」
「本当に苦しいの~助けてよぉ~」
「ええ~、新しい人探すとか?」
「希羽じゃなきゃ嫌なの!」
「じゃ、略奪かぁ」
「クジュラさんからは奪えないでしょ」
「負け、認めるんだ?」
ニヤッと笑い掛けるカスミに文句を垂れようと口を開いた時、アタシたちが警戒している方とは逆の方向の通路から爆発音が聞こえた。そういえば、アネモネは?姿が見えない。
慌てて音の方へ駆け寄ると、案の定アネモネがモンスターと対峙していた。…あの、蛇のような木の化け物だ!アネモネはすでに魔力を吸われてしまった様で、占星術の威力がいつもより小さく見えた。アタシも腰から銃を抜き、蛇の木の顎へ数発撃ち込む。
「こいつ、他の魔物に釣られて出てくると思ってたのに!」
「単体で出てきたの!?」
アネモネはコクリ、と頷いて詠唱を始めた。油断した。蛇の木はこの階で最も警戒すべき相手ではあるが、他のモンスターとの戦闘の音を嗅ぎつけて現れる為に、戦闘さえなければ大丈夫だと思い込んでいたのだ。
アタシがある程度攻撃を引き付け、何とか翻弄する。逃げなくては。なんにせよ今のパーティーでは万に一つも勝てない相手だ。カスミとスミレがプリムラを連れて遅れてやってきた。
「スミレ!逃げるわよ!!」
スミレに遁走の術の準備をしてもらう。次々と伸びる触手の様な枝を撃ち落とす。リロードをして、また撃ち落として。リロード、そのタイミングで蛇の木は詠唱中のアネモネへ狙いをつけた。しまった、と思った時にはカスミがアネモネの前へ立ち塞がって、思い切り薙ぎ飛ばされた。
「みんなこっち!!!!」
スミレが叫ぶ。術の用意が出来たらしく、全員急いでそちらを目指す。倒れたカスミの肩をアネモネとアタシで支えて、何とか術式の陣へ滑り込んで……。
明け方頃、拠点にしている宿屋へ着くと、希羽とクジュラさんが飛んで来てくれた。ありがたく希羽の回復術を受け、重症のカスミをクジュラさんに治療院まで運んでもらう。ああ、クジュラさんって意外と力あるのね。カスミ、嫌いな相手にお姫様抱っことかされちゃって。思わずクスッと笑ってしまった。
治療院から戻されたカスミは、希羽の部屋へ寝かされる事になった。今は安らかな寝息を立てていて、容体も悪くなさそうだ。
ほぅっと息を吐いて、続き部屋の主部屋の方へ移動するとクジュラさんに声をかけられる。
「なにか必要なものがあるか?それとも、ここで仮眠をとるのか?…申し訳ないが、俺も、一緒に過ごす事になるが」
「違うわよ。カスミも落ち着いてるみたいだから、ちょっと休憩」
「そうか」
部屋の中心、大きなテーブルと4脚ある椅子のひとつに腕を組んで座っている彼の元へつかつかと歩みより、見下ろしながらずっと聞きたかった事を訊いてみる。
「ねえ、クジュラさんって希羽のどこが好きなの」
「お前に言う義理はない」
銃を抜いて額に擦り付ける。彼もまた、懐刀をアタシの喉へ突き付けていた。速い。
「どこが好きなの」
「…海市蜃楼の面子は希羽を愛しているだろう?…なら彼女を奪えば全員に対して復讐になると思った。好きだとか、そう言うわけじゃない。それだけだ」
とことんまで冷たい瞳をする彼の言葉に、思わず笑ってしまう。確かに希羽がクジュラさんを好きになってしまったら、それは最も復讐になる。少なくともアタシには効いた。
「…はぁ〜、下手な嘘ね」
「そうか?」
クジュラさんも少し目を細めると、懐刀を引っ込めた。ああ、アタシの銃に弾が入っていない事に気付いていたのか。チッと舌打ちをし、彼の端向かい側の椅子に座った。クルクルっと手の中で銃を回す。
「ふう。全くもう、なんで好きなのよ。気になるじゃない?」
「お前だって希羽を好きなんだろう?大体理由は同じだと思うが」
「それでも聞き出したいのよ。それが恋バナってものじゃない?」
「……彼女の瞳が眩しかったんだ。追ってるうちに惚れていた」
「あら。ほんとに同じ。厳密に言えば、アタシは一目惚れだったんだけど」