01.騎士と姫
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さて、パーティーを組み直し迷宮に入った私たち5人は、まずは採取クエスト用の素材を取り漁ってから、討伐依頼の対象を探すことにした。
討伐対象のモンスターは、ひと月前から迷宮の悩みの種だった奴だ。
ちなみに隊列はクジュラさん、モンクが前衛を、私、ゾディアック、ファーマーが後衛を務めている。
「ひえ~、本当に、深部のモンスターがうじゃうじゃですね…」
進むにつれ、どうも我々を阻む様な動きをしている個体がいることに気づく。
我々を近づけさせたくない理由があるのだろうと、敵の層が厚い所を倒しながら進んでいく。
1階層の最深部、大きな部屋に出たところで、花の様なモンスターに囲まれた。対象を眠らせている間に大きな一撃をくれる厄介なモンスターだ。
しかし、眠らされさえしなければそれほど強くはない相手たちだ。予防の号令を掛け、迎え撃つ。次から次へと何匹も出てくるが、全員の力でなんなくなぎ倒して行く。
これなら押し切れる。
と思っていたのが甘かった。後ろから、今まで相手をしてきたのと比べて数倍は大きな花びらが、その蔓を私の首に伸ばしてきたのだ。
前にばかり気を取られていた私はあっさり締め上げられ、予防の号令を掛け直す事に失敗した。
さらに間の悪いことに、回復術を使えるモンクが眠りの花粉をもろに受けて気絶してしまった。
「ぅ…」
剣で蔓を斬っても、別の蔓が何本も伸びてくる。首を捉えられたままで宙吊りにされて、苦しくなって手に力も入らなくなってきた。
私がもたついている間にもゾディアックが大きな一撃を喰らって膝をついていて、ファーマーはもはや何も出来ない。
まずい、このままだと!
そういえば、クジュラさんは!?そう思った時、急な落下感を覚えた。巻き付いていた蔓が斬られたのだ。地面に叩きつけられる、と思うより速く、クジュラさんにフワッと抱き抱えられた。
彼は私を降ろすと、すぐさま大きな花びらへ一閃を浴びせた。
花びらは散って、蔓が枯れ出した。
周りの普通サイズの花のモンスター達も、それに釣られる様に枯れて色を失っていく。他のモンスターも、彼らの香りに誘われてやってきていた様で、辺りはすっかり静かになった。
「希羽、無事か!?」
モンスターの気配が無くなったことを確認したのち、クジュラさんにまた抱き抱えられた。
「は、はい…みんな、回復しなきゃ」
「わかった。モンクはあそこだ」
唯一、蘇生術が使えるモンクのところへそのまま連れて行ってもらう。
彼女も虫の息だったので、鞄から蘇生薬を出して飲ませてあげた。その後は彼女に任せて、私とクジュラさんは座り込んだ。
「は…や、やばかったですね」
「首は、大丈夫なのか?ひどく痕が残っている」
遠慮がちに首筋を撫でられて、くすぐったい。
「あは…少しなら私も回復術が使えますから、すぐ治せますし平気です。それより、クジュラさんは?どこも、なんともありませんか?」
「俺も平気だ」
「よかった…って頬、傷が」
小さな切り傷がついていたので、頬に手を当てて治療した。
「ああ、ありがとう」
その時、他の2人の治療を終えたモンクがやってきて。
私からキスをするところだったと勘違いされたので、思いっきり否定しておいた。
「今日は本当に、色々助けていただいてありがとうございます」
「いや。当然の事をしたまでだ」
「ふふ…。あの、どうでしたか?うちのギルド。これからも一緒に冒険していただけますか?」
「もちろん。俺から願った事だからな」
宿に戻り、クジュラさんの部屋で彼の義手の手入れをしている。彼が自分でできる様になるまでは、私が手伝うのだ。
「手の方は、いかがでした?動きとか…」
「そう、だな。新しい刀もだが、まだ馴染んではいない。そのせいで、お前たちを危険に晒してしまったな…」
「そ、そんな事ありません!クジュラさん、本当に、強くて、凄くて、かっこよかったです!」
少し朦朧としてはいたが、彼が巨大なモンスターを一閃で倒したあの場面は強く記憶に残っている。
思い返してはうっとりしてしまう。ああ、かっこいい…。
そういえば、お姫様抱っこなんかしてもらっちゃったりして。鋭い目つきが堪らなかった…。
そうだ!それでそれで、頬の傷を治した時とか凄く近くて…
「希羽?」
「はっ!すみませんぼーっとしちゃって」
「疲れているんだろう?もう、部屋に戻るといい。後は自分で出来る」
名残惜しい!もっと一緒に居たいです!帰りたくありません!などと言えないので渋々部屋の外へ出た。
「じゃあ、あの。おやすみなさいませ」
「ああ……いや、待て」
「は、はい?」
彼も立ち上がって、私の方へズカズカと歩み寄ってくる。
え、なに?てかどんどん近づいてきて、え??頬に手を掛けられた。うそ、これじゃ、キスするみたい、なんて。
「…っ」
「…やはり、首の痕が消えてない。治るのか?」
「あ!?あ、はい、あの、内出血してるだけで明日には全然治ってます!」
「よかった」
ナンダ、怪我の心配かぁ!?平常心を必死に取り繕おうとしていると不意に彼の顔が近付いて。
唇に唇が触れた。
「…おやすみ」
ニヤッと不敵に微笑む彼に何も返せないまま、ドアは閉まった。
「おっ、ヨクキタナ。クエストの報告か?あれ、希羽とクジュラはどうシマシタカ~?
…ふふ~ん?希羽が熱を出した?クジュラがカイホーしている??仲良ししちゃってる訳デスカ!イチャイチャしよって!けしからん!!
てゆーかサァ、クジュラとか絶対に脈しか無いヨ。さっさと爆発スレバいいのにナ。リア充爆発シロ!!」
/END 24.05.09