05.迂闊
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治療院に着くと、治療を終えたカスミがベッドに静かに横たわっていた。気付いたクジュラさんがこちらに近づいて来る。
「怪我は酷いが、命に別状はないそうだ。これからもう少し様子を見て特に悪化が無ければ退院して、希羽に回復させる様にと言われている」
ホッと胸を撫で下ろす。
「…希羽は大丈夫なのか?このまま入院させてやるように言っておこうか」
クジュラさんが気遣う視線を私に向ける。2人してあまり眠ってないから、それを言っているのだろうけれど、回復する魔力は溢れているから全く問題ない。
「私は全然大丈夫ですよ〜。じゃあ、もう少ししたら私の部屋に連れて行きましょう」
「わかった」「オーケー」
しばらく待って、治療士が退院の許可を出してくれた。
カスミは眠っているようなので、またクジュラさんに抱き上げてもらい、私の部屋のベッドへ寝かせてもらう。続き部屋の奥の部屋の方、前にクジュラさんを看ていた部屋だ。
今回のカスミみたく入院を断られた者を看る為の部屋である。
「じゃ、あとは私に任せて2人は休んでて下さい」
「いや、一緒に看る。希羽は回復に専念してくれ」
「アタシも居るわ。手伝う」
「…じゃあ。交代にしましょう。レナーテは探索で疲れてるでしょうし休んでて。後でまた呼びに行くよ」
「アンタそんなこと言ってイチャつくつもりじゃ」
「もう、バカ。おやすみ」
別に1人ずつでも良いか?と思ったけどそれはやめた。いや別にクジュラさんと一緒に居たいからじゃなくて。
カスミとクジュラさんの間には確執があったことを今更思い出したのだ。クジュラさんの父親が過去、カスミとスミレの故郷を壊滅させた事で、2人は復讐に燃えていたのだった。とあるきっかけで2人はクジュラさんの父親を赦したけれど、それでも積年の感情が消える訳も無く、クジュラさんに対するカスミの胸中は複雑だろう。
そういう訳で、さっきは緊急事態だったけど、長い時間2人きりにはさせられない。
そもそもクジュラさんを信頼しているとはいえ、彼は我々のギルドに復讐するつもりで留まっていらっしゃるしね。それも忘れていたけど。
カスミへ回復術を掛ける。
「カスミの着替えと、タオルを預かった」
「ありがとうございます」
レナーテに部屋に戻るついでに持ってきてもらった物だ。
沸かしていたお湯を水で薄めて、タオルをつける。
渡したきりじっと佇んでいるクジュラさんと目が合った。
「あの、着替えさせたいので…」
「ああ、すまない。失念していた」
クジュラさんに一旦部屋を出てもらってら間に体を拭き、着替えさせた。
傷口からは血が滲むので、包帯を何度も換える。
ようやく傷が塞がってきた頃今度は熱を出したので毛布を掛けてやって、熱があがり切った頃にクジュラさんに氷を持って来てもらうと、それでカスミの体を冷やしてあげて。
都度回復術を掛けつつ、看病をする。
「あ…」
「どうした?」
「あ、いえ。今ので魔力が尽きました」
日が登って久しい頃、私の魔力が尽きた。交代のためにレナーテを起こしに行く。
「はーい、おはよ…あーあー、2人お揃いで今からデートでも行くのかしら?」
「カスミとクジュラさんを2人きりには出来ないから一緒に来てもらっただけだよ」
「ふーん、2人にさせたくないんだ?ヤキモチ?」
「違うって!」
「違うのか?」
「いや違いますよ、あーこの違うは違くて」
私がしどろもどろになっているのを2人してくすくすと笑う。
全くもう!カスミの一大事だってのに。まあ辛気臭くしていたって彼女がすぐ回復する訳でもないけど。
レナーテはあまり眠れなかったらしく、採ってきた品物を整理していた所らしかった。
やっぱりアイテムで魔力の回復をするから希羽は寝てて良いよと提案すると、無駄遣いせずに寝なさいと言われた。