05.迂闊
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「それで、昨日はお腹の痣そのままでやったの?あの人、気付かなかったワケ?」
めちゃくちゃ遅い朝食--なんなら夕方に差し掛かっている--を摂りながら、レナーテが訊いてきた。
びっくりしてフォークを落っことすところだった、危ない。
「何の話!?」
「希羽がクジュラのこと訊いてきたんだから、アタシだって聞き返すわよ」
「なんかベクトルが違う!というか、その…や、やった、って何の話ですかね?」
「だから今更良いわよそういうの」
レナーテが香草入りソーセージにかぶりつく。
「…むしろ気付いた上でめちゃくちゃ…あ、いや何でも無い」
「なによ、殴られたの?そういう趣味?」
「ちがう!優しくしてくれたの!っ、もうやめようよ、この話」
「具体的にどう優しく」
「良いから!!早く食べなよ!」
こんな夕方にレナーテと2人で朝食、もとい夕食を摂っているのには理由があった。
時は早朝、採集パーティーが帰還した時間まで遡る。
結局明け方近くまで起きてた私とクジュラさんだったが、何やら宿の外が騒がしい事に気付いた。
パーティーメンバーが帰還したのだろうと思ったのだが、窓の下を覗くとやけに切迫した様子である。
「ど、どうしたの!?」
早朝だという事も忘れて大きな声を上げる。
薄暗くてわかり辛いが、よく見ると、全員怪我をしていたのだ。回復役であるカスミが特に酷そうに見える。
すぐにクジュラさんと駆け付けると、レナーテが途切れ途切れの言葉で言った。
「やられた。カスミを治療院に、連れてって」
「クジュラさん、お願いします!」
「ああ」
クジュラさんがカスミを抱き上げ、宿併設の治療院へ向かった。
私はというと、全員に庇護の号令と、少しだけ使える回復術も重ねて掛ける。
ちなみに今の状態のカスミには効き目がない。私が使う回復術というのは、詠唱で対象に言葉を届け、対象自身の治癒力を高める術だった。
だから戦闘不能や、意識混濁に陥っている人には効かない。
蘇生薬みたいな気付け薬や、カスミや治療院が使う気功術みたく直接力を送る類の術なら、そういう人にも効果はあるんだけどね。
少し落ち着いたみんなを、部屋まで送る。
またもや回復術を掛けてやり、何があったかをレナーテに訊ねた。
「蛇の木と、かぼちゃ頭が出たのよ。かぼちゃ頭に脚を取られて、逃げられない内にアネモネが狙われて。助けようとしたカスミが…」
レナーテが唇を噛んで、眉を顰める。
「私が忍術で、何とか、みんなと逃げてっ…でもお姉ちゃん、が…」
思い出して恐怖に支配されてしまったのか、スミレが再び取り乱した。小さく震える背中をさする。
「スミレ、大丈夫だよ。落ち着いて。カスミはクジュラさんが治療院に連れてったから、大丈夫」
「ぅ、ぅ」
すすり泣く彼女から視線をプリムラとアネモネへ移して、彼女たちの様子も尋ねた。
「プリムラとアネモネは、特に痛む所ある?」
「わたしは、カスミが庇ってくれたから、へいき」
「私も平気よ。それより、カスミが心配ねぇ…」
全員、気分は悪そうだが体はもう問題が無さそうだ。
私がカスミの様子を見に行くから、みんなはお風呂に入って、すぐ眠るようにと言い付けて立ち上がる。
「でもお姉ちゃんが」
「でもカスミが」
食い下がるアネモネとスミレに、レナーテが声を掛けた。
「アタシも一緒に行って様子教えてあげるから、アンタたちは休んでなさい。心配なのはわかるけど、スミレもアネモネももう、魔力がないでしょ。プリムラは疲れてるでしょうし」
レナーテの説得に渋々でも頷く彼女達を見て、やはりレナーテはリーダー気質なんだなぁと感心した。