05.迂闊
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私がカスミの治療術を受けている間、レナーテとクジュラさんに、私の軽率な行動をたっぷり絞られる。
「軽率すぎる!何故ひとりで行ったんだ!」
「アンタ、自分ひとりで考えて、答えが出たらそのまま突っ込むのやめなさいって、何度も言ってるわよね!?」
「お前ひとりの行動で全員が被害を被るのだぞ!」
「何が起こるかわからないのが迷宮だって、アンタがいつも言ってんでしょーに!」
「ご、ごめんなさい…」
「心配したんだからな!」
「心配したんだからね!」
あ、声が被った。クジュラさんとレナーテは顔を見合わせると、少し気まずそうにして、これからどうするか話し合い始めた。
なんというか、この2人って似てるのかもしれない。
周りの状況を正しく把握して、的確な指示を出してくれる所とか。
そう言えばクジュラさんは将軍で、レナーテは元海賊船の船長だったなぁ。リーダーになる人間というのは、こういう人なんだろうね。
…じゃなくて、私は反省をしなければ。我ながら猪突猛進がすぎるのが、本当に致命的だと思っている。思ってはいるんだけどどうも目の前の事に集中しすぎてしまう癖が…。
「まだお昼前だけど、魔力切れが痛いわね」
「磁軸からの近道も開通した訳だから、一度海都へ戻って体制を整えても良いのではないか」
「そうねぇ、アイテム使って進んでも良いとは思うんだけれど。そうすると大した収穫も無いから赤字だしねぇ」
「わたし、帰りたい」
アネモネがげっそりとした顔で意見した。
「体中ヌメヌメで、無理」
「アネモネは精神的ショックが大きい様だな…」
クジュラさんの言葉に、全員が労わる様な視線をアネモネへ向ける。
確かに、私も全身が何と言うか…磯臭いし、ヌメヌメでかなり気持ち悪い。アネモネはその上、かなり魔力を吸われていたから、余計にしんどいんだろう。
話し合っていたクジュラさんとレナーテが、同時に私を見る。一応海市蜃楼のリーダーである私に、どうするのかの判断を仰いでいるのだろう。
「帰りましょう!お風呂に入りたいです!」
「あーーー…生き返った」
宿屋の大浴場にアネモネの声がこだました。
「お風呂出たら、みんなで美味しいもの食べに行こ~…」
私が言うとみんなが頷く。
「それにしても希羽、モンスターにやられたお腹、痣になってるね?内出血まで綺麗に治せなくてごめんね…」
「いーえ、これは今日の戒めとして残しとくべきなのよ。むしろ治らなくていいの」
心配してくれてたカスミに、レナーテが口を尖らせながら言った。
でも、とカスミが声を顰める。
「体に傷があったらクジュラが…その、いろいろ気にしない?」
クジュラさんが何をどう気にすると言うのか、その言葉の意味に気付いて、一気にのぼせた。
「ちょ、もう!一旦出る…」
「まったく、やることはやってるんだから」
「明言はやめてくれる!?」
「やること…?」
「アネモネは気にしなくて良いよ!」
手足に水を打ち、火照りを鎮めていると、お腹の痣が目に入る。
…クジュラさん、気にするかな?きっと、すごく気遣ってくれそう。
考えただけで申し訳なくなるから、もう2度と心配を掛けないように、単独行動はしないぞ。
「それにしても、今日のは危なかったわね。いつもはアンドリューが止めてくれるものね…」
アンドリューというのはウォリアーの男性で、私の幼馴染でありお目付け役である。
私の猪突猛進を事前に察知して止めてくれるのがパーティー内での彼の役目になっていた。
「代わりにクジュラさんがパーティーに入ったんだからしょうがないよ」
「しょうがなくないわよ、アンタが自分で気をつけるの」
「はい…」
お風呂から出ると、同じくお風呂上がりのクジュラさんが窓辺で涼んでいらっしゃった。
なんとまあ絵になるんだろう。髪も湯上がりで無造作に纏めてる、覗く首筋が白く美しい。
「…ちょっと。希羽、アタシはそう言う所を注意してるんだからね」
完全に固まって見惚れている私の横腹を、レナーテが肘で突く。
確かにまたもや周りを無視して自分の世界に浸ってしまっていた。レナーテに小さく謝ってから、クジュラさんに声を掛ける。
「遅くなりました、お昼行きましょう!」
「…、ああ」
クジュラさんは私を見て驚いたような表情を浮かべて、小さく頷いた。
なんか間があったし、その後思いっきり目を逸らされたので、どうかしたのかと不思議に思っているとカスミが小声で「クジュラも希羽に見惚れたんだよ」と耳打ちして来た。
え、そんなバカな、とクジュラさんを見つめるとさっきより顔を赤くしている気がした。
愛おしくてたまらなくなってクジュラさんの腕に抱きつくと、
「アタシはアンタらの交際を許してないかんね!?」
そうレナーテが叫んだ。