4章 エバーネバーエンバーエデン
振り向くとそこには、魔力炉がある胸の中心から円錐状の物質で貫かれたキュシスタの姿。
部屋の中は鮮血で真っ赤に染め上げられ、ぼたぼたと滴り落ちていく。
どしゃりと重たい音を立てながら倒れ込む肉体。肉片を纏いながら引き抜かれた三角錐の石柱の奥にいたのは、この国へ来る前に教会で会った12神のうち再生の神ルイジュだった。
真っ白な片翼を仰いで宙に浮き、それを見下ろしていた。
「どうして、何を、してるんですか…!?」
「どうして?シオン、君への見せしめだよ。」
「見せしめって、何でそんな事!」
「一番の化物が誰なのかを見せる為だよ。これでも死なないんだから、本当にどうかしてるよね。」
「死なない…?こんな、魔力炉を破壊して死んでいないなんて。」
「この道化、自分自身が不老不死の癖に、他人が不老不死を施そうとしたのを黙って見ていたんだよ。全部自分が仕掛けたことなのに、平気な顔で利用してさ。いい加減、被害者面して倒れたままなのやめてくれないかな。」
「不老不死って、それはスィノルやヘルクロッカで術式として疑似的にかけていた魔法であって、本当に存在するなんてことは。」
「普通ならこれで生きてるなんてあり得ない、そうだろう?普通なら、さ!」
語尾を強めてそういうと地に足をつけ、倒れ込んでいた彼の体を思いきり足蹴りする。
背を向けていた彼の体が横向きに倒され、クスクスと笑い声が聞こえてくる。
笑い声の主は、先ほど肉体を魔力炉ごと貫かれた本人のもの。
「不意打ちで酷いことをする。」
真っ赤な液体を吸った髪や服に鬱陶しそうな表情をしながら、笑って立ち上がった。大した事ではない、とでもいった様子で。
開けられた体の大穴は何事もなかったようにふさがっており、元通りになっている。
「君たち神ってやつは忘れているかもしれないが、痛覚はそのままなのだけれどね。」
「こちらが近付くのを探知できていて、こうなるのわかってたクセに、あえて気づかなかったフリするのは嫌味のつもり?」
「待ってください!間違いなく死ぬほどの傷だったはずなのに、なんで生きてるんですか。不老不死なんて伝説上でしか存在しない筈じゃ…。」
「それは――。」
今度は複数の光の槍に貫かれ、言葉となる前にそれはルイジュの手によって落とされる。
「神に下された呪いで本物の不老不死になったんだよソレは。生涯の苦しみや悲しみを死で解放する事も、周りと同じく歳を取る事も許されない。このエターナルがまだ一つの広大な大地続きの大陸で繋がっていた遠い昔の存在、原初の悪魔。」
「原初の悪魔…?」
「シオン、キミも本当に学ばないね。無知を利用して裏切られるのはこれで何度目?しかも今度は悪魔族に裏切られるなんてさ。」
「どういう、ことですか。」
「最初にキミがいた村での出来事も、カームの件も、レファウルの件も、ヘルクロッカの件も、今回のことも。諸悪の根源の存在も全てコイツが関係してる。つまり、わかる?シュウレは優しいから教えてあげられなかった。」
「まさか、そんなこと。」
思い当たる事がないわけではない。むしろ、彼の口からちしの名前が上がったその時によぎらなかったはずもなく。
「あり得ないと本気で思ってる?これだから人間ってやつはどの時代でも愚かで大嫌いだ。それで、最後には決まって神様のせいだって口にするんだから。」
「ユリアを、死に追いやったのは目の前の彼のせいだと…?」
「彼が行動しなければ彼女の魂は救われていただろうね。再生できないほど穢れる事もなかった。」
「魂が再生できないほどって、どうしてそんなに。」
「罪を重ねて歴史を改変させたからだよ。」
「キリシスがあんな思いをしたのも、ゼファオが禁術を使って兄を失う事になったのも、憂夜や朝華やスィノルがこうなってしまったのも、諸悪の根源が無意識に振りまいているのも?」
「すべての事象に深く関連した人物であると、12神の名のもとに宣言してもいいよ。」
全て、仕組まれていた。
まさか、ユリアが死ぬ原因になったのも彼のせいだと、そうだというのか?
それぞれが平和に過ごせていたはずの時間が、突如消えてしまったのも彼の仕組んだ事だと。
自分が行く先には必ずちしがいた。必ず仲間がいて阻害してきた。
点と点が繋がっていく。
呼吸が浅くなる。
床に広がる血液はまだ温かい。血なまぐささが鼻につく。
心臓は脈打ち、脳が酸欠になるような錯覚。
―――この現実を、現実だと認めたくない。
意識は遠退いていきそうなのに、自分自身がそれを許さない。
血液が、心臓が、沸騰して爆発しそうだ。
「はは、は、は、ハ、ハ。」
獣のように荒くなっていく息と、混乱から朦朧としていく思考回路。
脳みそが焼き切れそうだ。
一番の諸悪の根源は目の前にいるこの人ではないか。
これは、怒りの感情だ。
今までに感じたことがないほどの怒りと憎しみ。
部屋の中は鮮血で真っ赤に染め上げられ、ぼたぼたと滴り落ちていく。
どしゃりと重たい音を立てながら倒れ込む肉体。肉片を纏いながら引き抜かれた三角錐の石柱の奥にいたのは、この国へ来る前に教会で会った12神のうち再生の神ルイジュだった。
真っ白な片翼を仰いで宙に浮き、それを見下ろしていた。
「どうして、何を、してるんですか…!?」
「どうして?シオン、君への見せしめだよ。」
「見せしめって、何でそんな事!」
「一番の化物が誰なのかを見せる為だよ。これでも死なないんだから、本当にどうかしてるよね。」
「死なない…?こんな、魔力炉を破壊して死んでいないなんて。」
「この道化、自分自身が不老不死の癖に、他人が不老不死を施そうとしたのを黙って見ていたんだよ。全部自分が仕掛けたことなのに、平気な顔で利用してさ。いい加減、被害者面して倒れたままなのやめてくれないかな。」
「不老不死って、それはスィノルやヘルクロッカで術式として疑似的にかけていた魔法であって、本当に存在するなんてことは。」
「普通ならこれで生きてるなんてあり得ない、そうだろう?普通なら、さ!」
語尾を強めてそういうと地に足をつけ、倒れ込んでいた彼の体を思いきり足蹴りする。
背を向けていた彼の体が横向きに倒され、クスクスと笑い声が聞こえてくる。
笑い声の主は、先ほど肉体を魔力炉ごと貫かれた本人のもの。
「不意打ちで酷いことをする。」
真っ赤な液体を吸った髪や服に鬱陶しそうな表情をしながら、笑って立ち上がった。大した事ではない、とでもいった様子で。
開けられた体の大穴は何事もなかったようにふさがっており、元通りになっている。
「君たち神ってやつは忘れているかもしれないが、痛覚はそのままなのだけれどね。」
「こちらが近付くのを探知できていて、こうなるのわかってたクセに、あえて気づかなかったフリするのは嫌味のつもり?」
「待ってください!間違いなく死ぬほどの傷だったはずなのに、なんで生きてるんですか。不老不死なんて伝説上でしか存在しない筈じゃ…。」
「それは――。」
今度は複数の光の槍に貫かれ、言葉となる前にそれはルイジュの手によって落とされる。
「神に下された呪いで本物の不老不死になったんだよソレは。生涯の苦しみや悲しみを死で解放する事も、周りと同じく歳を取る事も許されない。このエターナルがまだ一つの広大な大地続きの大陸で繋がっていた遠い昔の存在、原初の悪魔。」
「原初の悪魔…?」
「シオン、キミも本当に学ばないね。無知を利用して裏切られるのはこれで何度目?しかも今度は悪魔族に裏切られるなんてさ。」
「どういう、ことですか。」
「最初にキミがいた村での出来事も、カームの件も、レファウルの件も、ヘルクロッカの件も、今回のことも。諸悪の根源の存在も全てコイツが関係してる。つまり、わかる?シュウレは優しいから教えてあげられなかった。」
「まさか、そんなこと。」
思い当たる事がないわけではない。むしろ、彼の口からちしの名前が上がったその時によぎらなかったはずもなく。
「あり得ないと本気で思ってる?これだから人間ってやつはどの時代でも愚かで大嫌いだ。それで、最後には決まって神様のせいだって口にするんだから。」
「ユリアを、死に追いやったのは目の前の彼のせいだと…?」
「彼が行動しなければ彼女の魂は救われていただろうね。再生できないほど穢れる事もなかった。」
「魂が再生できないほどって、どうしてそんなに。」
「罪を重ねて歴史を改変させたからだよ。」
「キリシスがあんな思いをしたのも、ゼファオが禁術を使って兄を失う事になったのも、憂夜や朝華やスィノルがこうなってしまったのも、諸悪の根源が無意識に振りまいているのも?」
「すべての事象に深く関連した人物であると、12神の名のもとに宣言してもいいよ。」
全て、仕組まれていた。
まさか、ユリアが死ぬ原因になったのも彼のせいだと、そうだというのか?
それぞれが平和に過ごせていたはずの時間が、突如消えてしまったのも彼の仕組んだ事だと。
自分が行く先には必ずちしがいた。必ず仲間がいて阻害してきた。
点と点が繋がっていく。
呼吸が浅くなる。
床に広がる血液はまだ温かい。血なまぐささが鼻につく。
心臓は脈打ち、脳が酸欠になるような錯覚。
―――この現実を、現実だと認めたくない。
意識は遠退いていきそうなのに、自分自身がそれを許さない。
血液が、心臓が、沸騰して爆発しそうだ。
「はは、は、は、ハ、ハ。」
獣のように荒くなっていく息と、混乱から朦朧としていく思考回路。
脳みそが焼き切れそうだ。
一番の諸悪の根源は目の前にいるこの人ではないか。
これは、怒りの感情だ。
今までに感じたことがないほどの怒りと憎しみ。
